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夜の王ヴァンパイア

前回のあらすじ:睡眠薬を盛られたアレスたちはモレラの魔の手に……かかることはなく、睡眠薬で眠っていた振りをしていたことにより逆に事件の犯人であったモレラを制圧することに成功したのだ。アレスがモレラを押さえている間にティナが人狼を倒し事件は解決……したかに思われたが、この事件を裏で操っていた真犯人がティナに牙をむいたのだった。

「さてと、早速で悪いがお前の他の仲間のことを吐いてもらおうか」


睡眠薬を盛られてぐっすり眠っている……と見せかけてすでにべリアのスキルを活用して薬を無力化していたアレスは枕元に置いてあった剣を手に取るとモレラを脅すように鞘から刃をのぞかせた。


「2か月で100人の犠牲者が出てるんだ。単独なわけねえだろ。答えなければ徐々に体を刻んでいく」

「ひ、ひぃいい!!まって、やめて、殺さないで!」

「人狼は見つけ次第処分。ただでさえ何十人と人を食ってんだ、生かすわけがねえ」

「ち、違う!私は人狼じゃない!私はただ脅されていただけなんだ!」

「なんだと?」


いつ自分の首が宙に待っていても不思議じゃない。

そう強く感じさせるアレスの絶対零度の視線に耐えかねたのか、モレラは目に涙を浮かべながら自分は人狼じゃないとアピールを始めたのだ。


「従わないと殺すと言われ、仕方なく……」

「嘘つくんじゃねえぞ。さっき俺を殺そうとした時はずいぶんノリノリだったじゃねえか」

「あれは……そうでもしないと罪悪感でおかしくなりそうで……」

「適当なこと言いやがって」

「アレス様!」

「わかってる。全部が真実じゃないがこいつが人狼じゃないのは本当だろう。それならこいつを裁くのは俺じゃない」


両手を上げ必死に命乞いをするモレラに、アレスは警戒こそ解かないものの剣を鞘にそっと納めた。

被害者数から考えれば人狼は3、4匹いても不思議じゃない。

いつまでもモレラに構っていては肝心の人狼に逃げられるリスクが大きくなるため、アレスたちは迅速に人狼を確保する必要性に追われていたのだ。


「彼が人を殺しその肉を提供していたとすれば人狼はこの屋敷に居る可能性が高いです」

「じゃあ手分けして探しましょう。人狼くらいなら不意打ちさえ気を付ければ私たちでもなんとかなります」

「はい……そういえば、ティナはまだ戻ってきてないんですか?」

「っ!そういえば……ウラ様と合流したらすぐに私たちの所に戻ってくるという話でしたが……」

「まさか……ティナの身になにかあったんじゃ!?べリアさんジェーンさん!そいつのことは任せます!!」

「アレス様!!」


屋敷に潜んでいる人狼を探し出そうとしたその時、アレスはウラの元に向かったティナがいまだに自分たちの元に戻ってきていないことに強い違和感を覚えたのだった。

ここからウラの寝室まではそう離れていない。

多少のトラブルがあったとしても戻ってこられないなんてことはありえないと考えたアレスは、ティナが危険にさらされている可能性に思い至り即座に部屋を飛び出したのだ。




「な……これは!」


そしてウラの寝室の前までやってきたアレスはそこで氷漬けにされた2匹の人狼と、廊下の隅に転がっていたティナの刀を発見したのだった。


「人狼が2体……これをやったのはティナで間違いないだろう。その後何者かに不意を突かれて攫われた……?」

「アレス様!ティナ様はご無事でしたか!?」

「こ、これは……人狼!?」

「くっ!!おい貴様!!ティナをどこへやったぁ!!」


少し前まで間違いなくここにいたはずのティナの姿がどこにも見当たらず、アレスは一瞬その場に立ち尽くしてしまう。

しかし少し遅れてアレスを追いかけてきたべリアとジェーンが連れて来たモレラに対し、とてつもない剣幕でティナの居場所を問いただしたのだ。


「し、知るわけないでしょう!?私はさっきまであなた達と一緒に居たんですから!」

「んなこたぁわかってんだよ!!俺が聞きたいのは、お前ならティナが連れてかれた場所に心当たりがあるだろってことだ!」

「ふ、ふふ……知りませんねぇ。私を逃がしてくれると約束してくだされば何か思い出すかも?」


余裕がないアレスの態度にモレラは先程のお返しと言わんばかりにアレスを馬鹿にしたような態度をとった。


「くそっ!こいつティナ様の居場所を話すつもりはないらしいな!」

「アレス様、まだこの近くにいるかもしれません。手分けしてティナ様を探しに……ひっ!」

「っ!!」


今のモレラの態度を見て彼がティナの居場所を素直に吐く気がないと悟ったべリアとジェーンはまだそう遠くには行っていないとすぐにティナを探そうとした。

しかしその時、2人はモレラの胸ぐらをつかんでいたアレスの放ったドス黒い殺気に全身が凍り付くような恐怖を感じたのだ。

傍から見ていた2人が言葉を失うほどの底知れない殺意。

それを間近で向けられたモレラが平常心を保っていられないのは必然だった。


「あ、がが……ああ……」

「もう一度だけ聞くぞ。ティナはどこにいる」

「ち、ちち……地下、地下にいると思います!」

「……」

「ほ、本当です!!」


アレスに詰め寄られたモレラはまさに蛇に睨まれた蛙のよう。

瞳の奥のわずかな心の揺らぎを見逃さぬよう超至近距離でモレラに圧をかけるアレスは、今にもモレラの喉元を喰いちぎらんばかりの迫力だった。


「わかった。今すぐに案内しろ」

「は、はい!!」

「べリアさん、ジェーンさん!急ぎましょう。たぶんその地下室にティナと他の18歳の女の人たちがいると思います」

「っ!それはつまり……」

「はい。おそらく18歳の女性に固執していたのはティナを襲った奴で……今回の失踪事件の黒幕です」


モレラからティナを連れ去った犯人の行き先を聞き出したアレスはモレラの胸ぐらをつかみながら2人にそう告げた。

一見先程の凄まじい圧が消えたように見えたアレスだが、その内側にはティナを連れ去った犯人を絶対に許さないという強い怒りが秘められていた。

それを感じ取った2人はアレスの圧に少し気圧されながらもティナを救うため地下室へ乗り込む覚悟を固めたのだった。




「うぅ……く、ここは……?」


そんなアレスたちのいる廊下から少し離れたジョルウェール邸の地下室へと続く薄暗い階段。

この家の娘であるウラに化けていたカブラバに気絶させられていたティナは階段を下る振動で目を覚ましたのだった。


「あら、もう目が覚めたの。しばらく意識が戻らないと思っていたのに凄いじゃない」

「貴様は……うっ……」

「無理はしないほうが良いわ。さっきあなたが気を失っている間にかなり血を頂いたから。まともに動くことも出来ないでしょう?」


カブラバに抱えられていたティナだったのだが、全身の寒気と脱力感でほとんど身動きが取れない状態となっていたのだ。

ティナが苦痛の表情を浮かべるのとは対照的に、カブラバはとても恍惚をした表情をしている。


「それにしてもあなたの血、ものすっごく美味しかったわ。危うく血の吸いすぎであなたが死んでしまう所だったもの」

「はぁ……はぁ……」

「でもそれじゃもったいないものね。一度に飲み切ってしまうよりも、しばらく飼いならして長く楽しんだ方がずっと合理的じゃない?」

「っ!」


地下へと続く階段を降り切ったカブラバは、目の前に現れた重厚な扉を腕一本の力で容易く開けてしまった。

およそ人が1人で動かせるような重さではない金属の扉が開く音があたりに響く。

そしてその部屋の中に広がっていたのは監獄をおこわせる冷たい鉄の檻がずらりと並んでおり、その中には数十人ほどの若い女性の姿があったのだ。


「こ、こんな……今回の失踪事件で、18歳の女性が多く攫われていたのは、お前のせいだったのか……」

「ええ、そうよ。人間の血は個人によって味が異なるけれど、18歳の美しい見た目の人間の女が1番私好みなの。それ以外は手下の人狼共の餌よ。あいつらは味の違いが分からない低俗な獣だから肉を与えておけば満足するもの」

「彼女たちは……この後どうなる……」

「決まっているでしょ?品質が劣化してきたら処分よ。私はグルメだから19になった人間の女に興味はないの。でも……あなたは特別よ」


ティナを抱えたまま空の檻の前までやってきたカブラバは上機嫌にそう言った。


「あなたの血は今まで飲んできたどの人間の血よりも美味だったわ。あなたなら数年は生かしてあげてもいいわよ」

「ふざ……けるな……うぅ!」

「無理はしないほうが良いと言ったでしょ。そんなコンディションでスキルや魔法を使おうとすれば最悪の場合は死ぬわよ?」

「くそ……」

「それじゃあ、あなたはこの中で大人しくしておいてね。私はすぐに上に戻ってお前の仲間を始末しに行かなければならないから……っ!?」


ガキィイイイン!!


カブラバが動けないティナを檻の中に入れようとしたその時、驚異的な踏み込みで一瞬の間にカブラバの目の前に現れたアレスがすさまじい突きでカブラバを大きく吹き飛ばしたのだ。

地下室に鋭い金属音が大きく響き渡り、カブラバは両の脚で踏ん張りながらもその勢いを殺しきれず地面を大きく滑っていく。

そうして支えを失い地面へと落下していったティナの体をギリギリでアレスが受け止めた。


「大丈夫かティナ!?」

「アレス……すまない。少し油断をしてしまった……」

「気にするな!ジェーンさん!早くティナの回復を……うっ!?」


バチィイイイン!!


生気を失ったように真っ白なティナの顔色に、アレスはすぐにティナを地面に降ろしジェーンに回復をして貰えるようにお願いをする。

しかしその時空気を引き裂くような真紅のレーザーがアレスめがけ一直線で襲い掛かってきたのだ。

アレスはそれを間一髪剣で防ぎ事なきを得る。

そうして防がれたレーザーはその後アレスの足元にびちゃびちゃと散らばった。


(なんだこれは……血?)

「あらあら。あなたと後ろの女をまとめて貫いたつもりだったけれど、よく防いだじゃない」

「あ、あいつは!?まさかヴァンパイア!?」

「ヴァンパイア!?べリアさんそれって……まさか伝説に伝わるあの!?」

「ふふっ、その通りよ。私はお前たち低俗な人間とは格が違う。高貴で誇り高いヴァンパイアの末裔よ!」


羽を大きく広げて自身の偉大さを誇示するようなポーズをとるカブラバに、べリアとジェーンは驚きを隠しきれないと言ったような表情をしていた。

しかし2人が驚くのも無理はない。

ヴァンパイアとは古い文献にのみ記される伝説の種族。

人間の血を飲み、赤い月の下に現れ霧が深い夜の闇を好むと言い伝えられるヴァンパイアは、その戦闘能力が異次元に高くその脅威は今もなお語り継がれているのだ。


「頭が高いのよ、下等な人間ども。私に恐れ、敬い、命乞いをしなさい!」

「黙れよ。伝説のヴァンパイアだからってあまり調子に乗ってるんじゃないぞ」

「ふふっ、まさか私と戦うつもりなのかしら?」

「俺の大事な友達に手を出したんだ。お前はどうやっても許してやらねえ」


伝説に語り継がれるヴァンパイアが実在し今自分たちの目の前にいるという事実に驚愕するべリアとジェーンだったが、アレスは一切怯むことなくカブラバに鋭い視線を向けた。

そんなアレスに対しカブラバも鮮やかな赤色の瞳を鋭く光らせる。

目の前の男の行動は勇気からくるものか……はたまた無知ゆえのものか。

カブラバは自分には向かってくるアレスに対し興味をそそられたように笑みを浮かべたのだった。

ポケポケのクレセリアイベントの最高難易度が倒せないっぴ

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