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忠実なる野心家

「さあ剣を抜きなさい!!私がその破廉恥な思考ごと叩き斬って差し上げますわ!!」

「生徒会長様落ち着いてください~!!」


生徒会室での話し合いを平和に終えられたと考えたのも束の間。

アレスはヴィオラを押し倒すような形で転んでしまい、それにより興奮状態となったヴィオラがアレスに斬りかかろうと暴れ出してしまったのだ。


「マズいよアレス君。ヴィオラ様、そういうことは1番許せないって質だから」

「違いますよ!本当にわざとじゃなくて……というか急に足を誰かに引っ張られたんです!!」

「ふむ、君が転んだ時には近くにヴィオラ様しかいなかったが……」

「オズワルド会計!!!つまりあなたの仕業ですか!!??」

「ちょいちょい!!俺がそんなことする訳ないでしょう!?」

「じゃあやっぱりあなたが事故を装って私に破廉恥なことをしたのですわね!!許しませんわ!!」


アレスが転んだ時にその近くに居たのはヴィオラ以外には誰もない。

魔法が発動された気配もなかったためスキルが原因だとすればオズワルドが容疑者になるとヴィオラが言ったものの、オズワルドも何もしていないと自らの潔白を主張する。


「先程は気を許しかけましたがもう容赦しません!!決闘ですわ!!そこであなたを細切れにします!!」

「アレス君!!生徒会長様は私たちで落ち着かせますから、今日はもう帰っていてください!」

「ルシーナ書記。邪魔するつもりですかおらぁ!!」

「ひぃ!!ごめんなさい!」

「早く行ってくれアレス君!このままじゃヴィオラ様を抑えきれない!」

「わ、わかりました!」


これ以上アレスが留まってもヴィオラの怒りが増すだけだと、ルシーナとオズワルドの判断でアレスは生徒会室を後にすることになったのだ。


「こえぇ~。まさかあそこまで怒るとは……」

(だが転んだ時に感じたあの足の感覚……何者かのスキルによって転ばされたに違いない)


ヴィオラの怒りっぷりを思い出して恐れおののくアレスであったが、すぐに自分が転ぶことになった原因について考察を始めたのだ。


『オズワルド会計!!!つまりあなたの仕業ですか!!??』

(ヴィオラ様のあの言葉からオズワルドさんがあの状況で俺を転ばせられるようなスキルを持ってるのは間違いない。でも……オズワルドさんから俺を転ばせようって気配は感じなかった。あんな至近距離で狙われたなら俺が気づかない訳がない)


詳しいスキルは知らないが、アレスは自身の感覚を信じオズワルドが犯人ではないと考える。

同様にルシーナやレオンハルトも自分を狙った気配を感じなかったため犯人候補から外す……


(そういえば、レオンハルト様……あの人から妙な気配を感じたような)


するとアレスは先程生徒会室でレオンハルトと握手をした際に彼から不穏な気配を感じたことを思い出したのだ。

何か彼の目に特殊な秘密が隠されている様な、普通の人間の視線とは違う感覚。

そして彼がヴィオラに向けた感情。

それは生徒会副会長として、また貴族の格差からヴィオラを敬う気持ち。

そしてその裏に秘められた野心のような、静かに小さく……それでも熱い熱意のようなもの。


(あの人が犯人である可能性は十分ある……と言いたいが、俺に何かをした気配は感じられなかったんだよな。それなら一体誰が犯人なんだ……)


結局アレスは自分を転ばせた犯人を特定することが出来ず、そのまま教室へ戻ることにしたのだった。




「やあ、ご苦労だったね2人とも」


それはアレスが生徒会室から立ち去った数時間後。

興奮状態だったヴィオラを何とかなだめた副会長のレオンハルトは、生徒会室がある旧校舎を離れて新校舎のとある空き教室にやって来ていた。


「遅かったですねレオンハルト様」

「仕方ないだろう。ヴィオラ様がなかなか落ち着いてくれなかったんだ。あの状況で抜け出したら怪しまれかねない」

「バレるわけないですよ。レオンハルト様の視界を通じて、俺らがあの男を転ばせたなんて」


そこに居たのはレオンハルトと同じクラスの男子生徒……べスター家の従属関係にある貴族家の生徒だ。

なんとレオンハルトは自身に忠実な生徒を使い、アレスを転ばせてヴィオラの怒りを刺激させていた。


『かぁー……くぅー……かぁー……くぅー……』

『おいおい、これマジで寝てるのかよ。まあとりあえず……これでコピー完了っと』


生徒会室で眠っていたオズワルド。

アレスが来る前に生徒会室に侵入した1人の生徒が自身のスキルである”触れた相手のスキルをコピーできるスキル”を使ってオズワルドの念動術のスキルをコピー。

そしてもう1人の生徒のスキルでレオンハルトの視界を生徒会室から離れた新校舎からリアルタイムで映し出し、アレスのズボンの裾を引っ張ったのだ。


「にしてもレオンハルト様、なんでこんなことするんです?生徒会長のことは尊敬してるって言ってたじゃないですか」

「してるさ。そして副会長として全力でサポートしている……けれどそれはそれとして、てっぺんを欲しがるのは人として自然な考えでしょう?」


レオンハルトは学園でも真面目な副会長として知られており、ヴィオラを支える良き部下という印象を持たれている。

しかし彼も全くの野心がない訳ではない。

むしろ生徒会副会長の仕事を完璧にこなしながら、そのうえで全力でヴィオラの寝首をかこうと機会を窺っている。


「私の上に立つならあの程度のトラブルで心を乱してほしくないのですけどね」


彼の目はどこか遠くを見つめるような鋭さを持ちながらも、その表情に余裕が漂っている。


「私にもべスター家の人間としてのプライドがある。副会長としての役割はきっちりとこなしますが……油断はしないほうが良いですよ?」


どこかヴィオラとの駆け引きを楽しむような表情を浮かべたレオンハルトはその空き教室を後にし歩き出したのだった。




翌日。

昨日自分を転ばせた犯人を見つけることが出来なかったアレスは釈然としない様子で教室にやって来ていた。


「おはようございますアレスさん」

「アレス君どうしたの?そんな浮かない顔をして」

「ん、ああジョージ、ソシア。おはよう。いやちょっと昨日いろいろあってな」


ジョージとソシアにそう聞かれたアレスは軽く微笑みながら答えるものの、その表情はどこか釈然としないものだった。

それによりヴィオラの怒りを買ってしまい、平和的に解決できそうな雰囲気が台無しにされてしまった。


「やはりヴィオラ様との話し合いがうまくいかなかったんですか?」

「……結果的にそうなっちゃったな。ここからどうなるのかわからなくて……」

「アレス、今日はもう教室に来ていたのね」

「噂をすれば……」


そうしてアレスがジョージとソシアと話してると、そこへヴィオラがアレスを訪ねて7組に姿を現したのだ。

その表情からは昨日の興奮はとっくに収まったものだと感じられたが、それでもアレスへの好感度は最悪なようでその目つきはとても鋭いものとなっていた。


「ヴィオラ様……今日は一体何の御用ですか?」

「決まっているでしょう。あなたが本当に私よりも優れた成績を収められる器なのか、それを確かめるための試練を伝えに来たんです」

(うっわ、めんどくさそ。この感じじゃ単純に決闘ってだけじゃすまなさそうな……)

「試練って……もう初めの時と同じで決闘で決めればいいんじゃないですか?俺が勝ってももう何も望まないので」

「黙りなさい!!そう言って決闘に乗じて私に破廉恥なことをするつもりなのでしょう!?昨日私を押し倒して覆いかぶさったみたいに!!」

「ッ!?」

「アレス君///!?」

「違う誤解だ!!あれは事故で、誰かに足を引っ張られたんだ!俺が意図的にやったみたいに言わんでくださいよ!!」

「ふんッ!!それに単純な決闘では戦闘能力は測れてもそれ以外の力は推し測れませんからね」

「じゃあ……試練って何をするつもりですか?」


完全にアレスに心を閉ざしてしまったヴィオラ。

彼女は鋭くアレスを睨んだまま彼の机の前までやってくると、アレスにある地図を見せてきた。


「ここ。学園北西部にあるダンジョン”ブラルトルイン”。そこへ行きあなたの冒険者としての素質を確認します」

「ブラルトルイン……なんでそこに?」

「別にどこでもいいのです。ただそこへは私とあなたと副会長のレオンハルトの3人で行きます。私とレオンハルトは採点役として同行するだけで一切助力は致しません。単純な戦闘能力だけでなくダンジョンを探索する技術を見ることであなたの実力を測らせてもらいます」

(四級ダンジョン……ぶっちゃけ1人でも余裕過ぎる。余裕過ぎるからこそ……嫌な記憶が蘇るなぁ)


ヴィオラがアレスの実力を測るために指定したのは四級ダンジョンであるブラルトルイン。

しかしそこはハズヴァルド学園の成績1位の人物の実力を測るためには少々レベルが低く、それゆえにアレスの脳裏にある嫌な記憶が蘇って来ていたのだ。

それはかつてバンドが自分を始末するためにホワル大洞窟を決闘の場に選んだあの出来事。

霧が深く誰かを始末するには十分なそのダンジョンを指定されたことで、アレスはヴィオラが自分を殺すつもりなんじゃないかと考えたのだった。

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