台所の片付けの前に
茶の間の片付けが済んだ後
主人が言った
[今まで、ご飯は、外食してたけど
部屋も大分片付いたし、家でご飯作ってくれない?]
(いいけど、お義母さんと、修二さんは、納得してるの?)
[俺から言うし、大丈夫やろ]
家事は嫌じゃない
ご飯も自分で作った方が安心だし
引き受ける事にした
(でも、一つだけ、お願いが!
先に台所、片付けたい)
[わかった!じゃあ、明日から、台所、片付けよう]
嫁に来てから、初めて、台所に入った気がする
台所は主婦の城、お義母さんのエリアだと思っていたから、極力入らないし、入っても見ないようにしていたからだ
一番初めに目についたのは、
(嫌ぁー!キャアー!キャアー!キャアー!)
ネズミが4匹、親子?で土間を走っていった
さらに、足元の角に、3ヵ所、普通の何倍もある
大きなゴキブリホイホイが置いてある
そのうちの一つが動いているように見える
中から細い紐のようなものが、ひらひらと動いている
心臓がドキドキと、
生まれて初めて口から出るのかと思うくらい
大きく音を立てて動いている
見てはいけない
見てはいけない
と、思いつつ、人間は、見たくないものを見てしまう
巨大なゴキブリホイホイは
ネズミ取りホイホイだった
気を失いそうになるのを必死に堪え
なんとか声を出す
(捨てて‥‥)
すると、幸雄は、ネズミ取りホイホイを1個、
台所のゴミ箱に捨てて
[2匹も取れとる!
チッ!こっちは、かかってない]
そうして、当たり前のように、2個とも、
台所のゴミ箱に捨てた
(嫌ーっ!無理無理無理無理!
ここに、よーおらん!ネズミの死骸と一緒なんて
ご飯、作れないよー!)
[こっちは生きとるよ!死んどるのは、これだけよ]
(どっちにしても、嫌ー!)
[わかったけん、外に捨ててくるけん]
ゴミ箱に手を突っ込み、ネズミ取りホイホイを
2個両手に持って捨てに行く
(嫌あー!一人にしないでー!)
[すぐやけん]
そう言いながら、外に行く
戻ってきた幸雄が
[これで、大丈夫やろ!]
(まだドキドキしてる、もう少し休ませて!)
大きなため息をつきながら
新しいネズミ取りホイホイを仕掛ける
(あのね、それって、
ゴキブリホイホイと同じでしょう?)
[そうよ、見たら、わかるやろ]
(じゃあ、それって、餌でおびき寄せて、
餓死させるんよね?)
[その前に、ゴミ箱に捨てるけどね]
(それじゃあ、餌の匂いで、寄ってきて
ネズミは、いなくならないよ
それに、ネズミって、ネズミ算って言うくらい
繁殖力凄くて、1匹見たら数十匹いるって言うでしょう)
[何が言いたいん?毒を撒けって?]
(ネズミが寄ってこないように、忌避剤とか
家の外に出て死ぬ薬とか無いの?)
[今まで、そんなこと、考えたこと、なかったなぁ
わかった、他にも買うものあるし、探してみよう]
そうして、台所の片付けの前に
買い物に行く事になった