茶の間
とりあえず、大広間は
洗濯物を仕舞えるようになっので
後回しにする
主人の部屋(隠居)にあった荷物や元々積み上げられていたダンボールなど、まだまだ、壁が見えないくらいあるし、
とりあえず、畳の上に落ちていた汚れた洗濯物やレジ袋、ゴミ、瓶、本などなど、拾って捨てたので
通路はできた
大広間はここまでとし
日常よく使う、食事したり、テレビ観たりしたりして、一番長く過ごす茶の間兼、応接間を先に
片付けることにした
そこへ郵便屋さんが代引き商品を持ってきた
主人は急いで財布を持ってきて、お金を支払い
商品を受け取った
そこで、私は目をむいた!
(それ、私の財布じゃない?)
[そうよ、薫のカバンの中にあったけん、とってきた]
全く悪びれず、当たり前のように言う
(なんで?)
[そこにあったけん]
ちゃんと私達の部屋の私達専用の食器棚の中に
バッグを入れて、その中に財布をしまっていたのに!
(お金は返してくれるんよね?)
[なんで?俺が使ったものを返さないかんの?]
(でも、それは、私のお金でしょう)
[薫のお金って、細かいなぁー!]
(それは、私が結婚する時に持ってきたお金で
生活費も預かっているわけでも、
小遣いをもらっているわけでもないのに、
財布一緒って、おかしくない?
じゃあ、私もお金がいる時は、幸ちゃんの財布から
勝手にとっていいの?)
[わかったわい!返さい!ほんと、細かいなー!
飯食わせてやっとるんやけん、ええやないか!]
[じゃあ、2180円やけん、2000円でええな!]
そう言って、お金をこたつの上に投げつけた
あまりの事に、びっくりして涙が出た
子供の頃から、食べ物とお金は投げてはいけないと
教えられているし
たとえ、どんなに親しくても、親兄弟でも
許可なくバックの中、まして財布は勝手に触っては
いけないと言われて育ったのに
こんな人がいるのか?と信じられなかった
前の時や、私の両親も財布は共有していたから
勝手にお金を使うことはあった
でもそれは、財布一つで、給料まるまま、嫁に渡し
そこから、振り分け、基本自分の財布を使うけど
どうしてもという時に借りて、必ず伝えて、必ず返す
でも、幸雄は、自販機のジュース一つ自分で買えといい、生命保険も、年金は勿論、ガソリンや車検代、
日常の生理用品でさえ出してくれない
いくら収入、貯金があるのか?
どんな支出があるのか?全くわからない
幸雄は電気の仕事(ラダープログラム、エンジニア、
パソコンの仕事)と農業をしている
義母の貯金、義弟の年金、我が家の収入全部
管理しているらしい
生活費は勿論、小遣いももらった事はない
幸雄がいない時は全て立て替え、レシート、領収書がなければ返してもらえない
さらに、幸雄が無駄だと思ったもの、認めないものは
全て私の貯金から支払う
財布、経済は全て別だ
お金がなければ私は何もできない
住まわせてやって、ご飯を食べさせているのだから、
感謝しろと言うのが、主人と義弟、義母の口癖だった
悔しくて悲しくて涙が止まらなかった
[はよせんと、いつまでも終わらんよ
一人でやるんか!]
冷たい言い方に納得がいかないけど
茶の間を片付け始めた
[指示してや]
結婚したけど、まだまだ主人の家だと思うのに
私が一人で片付けるの?
私の仕事なの?
二度目だから、
他に嫁ぐ所ないから、仕方ないんだけど、
涙を払う為に黙々と片付けることにした
(まずは、こたつ布団を干して)
[上も下も?]
(そう、上も下も!
こたつも、ない方がいいから、庭に出して
干しとこう!)
(次に、ゴミ拾い、ゴミ袋に大広間の時のように
分別しながら、捨ててって!)
[じゃあ、コンテナ持ってくらい!]
そう言って、幸雄がコンテナを取りに行く
私は、4畳半の茶の間の片付けを始めた
下に落ちている義母の服を持ち上げた時
べちょっと、ねちゃついた感触と、強烈なアンモニア臭が!しかも、びしょ濡れで、畳も色が変わっていた
(いやぁー!)
思わず、悲鳴のような声が出た
[どした?何?ネズミ?虫?]
(違う、これ、見て!びしょびしょ!
多分、おしっこよ)
[なんだぁー!びっくりするやろ!
お袋は尿漏れやけん、よくあるんよ!]
こんなの初めて見たよ
(でも、こんなびしょびしょなの、なんでのけないの?
畳も濡れて、腐ってしまうよ)
[ほんと、お袋はいかんなー!
これは俺が持っていかい]
そう言って、洗濯中の洗濯機に投入しようとした
(待って、それを入れたら、他のも、もう一度
最初から洗い直しになるから、
これは、後で洗うから、バケツにでも入れといて)
義母の他の服も同じかも?と、思って
びくびくしながら、回収していると
いつのものか?すでに、乾いて茶色く変色した物が
次々、出てきた
さらに
(キャー!キャー!キャー!)
服の下にゴキブリが!生きているのや死んでいるのや
(ギャー!いやぁー!キャー!キャー!キャー!)
トドメに、ネズミの屍骸が!
(もう無理!もうやだ!)
涙目になりながら、叫んでいると
[ここは、俺がすらい]
そう言って、義母の服をコンテナに入れようとする
(お願い!ネズミとゴキブリのやつは捨てて!
色も変わっているし、洗ってもキレイにならないよ)
すっごく大きなため息をついて
[わかったわい!ほんと、お袋はいかんな!]
しぶしぶ、ゴキブリとネズミの上にあった変色した
服はゴミ袋に入れた
その後、ゴミ、汚れた洗濯物、捨てる物、本、
置いとく物を仕分けしていった
次に、テレビや、お義母さんの椅子などを、他の部屋に移動し、3段ボックスを庭に出して、キレイに拭く
それから、カーテンを外して洗濯機で回していると
義弟が帰ってきて、叫びだした
【なんでカーテン洗うがぁー!
カーテンなんか洗うもんじゃないよなあー!
薫さん、頭おかしいがよー!
入院せんといかんやろー!】
そう言って、凄い剣幕で私に詰め寄ってきた
主人が
[おまえは黙っとけ!
カーテンは洗った方がいいがよ!]
【お母さん、カーテンなんか洗うもんじゃないよな】
{幸雄が洗うと言うなら逆らうな!
部屋に入っとけ!}
それって!カーテン洗うのは、幸雄が認めたから?
【薫さんがおかしいがよ!カーテンは洗わんがに、
カーテンは洗わんがに‥】
ブツブツ言いながら部屋に入っていった
(ねえ、いいの?)
[いつものことやけん、気にせんでええけん
夕方までに終わらせたいけん、やるよ]
そうして畳を掃除機かけて、水拭きして、
網戸を庭で洗って、干して、窓拭きをして、
壁も拭いて、きれいにした後
大広間の押入れにあった3段ボックスを
全て持ってきて、テレビの横に3段ボックスを4段
天井まで積み上げ、隣に2個立てて積み上げた
倒れないようにボルトで固定し、大型収納を作り
一番下に、新聞、雑誌、チラシ置き場
2段目に、本、雑誌、書籍、取説、
3段目に、お義母さんの薬、血圧計、私物
4段目に、お土産品の飾りや色々収納し
[ようなったな]と、主人が満足していた
仕上げに、洗濯したカーテンをかけて驚いた
ずっと、黒ずんだ焦茶のような?灰色のような
重厚な重いカーテンだと思っていたのが
実は、軽い、淡いパステルピンクの花柄カーテンだった
義母がお嫁に来た時に持ってきた、嫁入り道具だった
主人が45歳、と、言うことは、45年間一度も洗濯してなかったってこと?
もはや、次元が違うとしか思えない
こたつ布団って、いつのだろう?
洗濯してるのかな?
思わず、口にしてしまった
(これ、いつクリーニングにだしたの?)
[いつやろう?おふくろ、いつ?]
{そんなもん、出したことない}
(いつ買ったんですか?)
{ゆきあんちゃんが大学の時やけん、?}
(33年以上前ですね?)
{そう}
なんとなく、こたつに入ったことなかったけど
気持ち悪い!
夜、部屋に戻ってから主人に言った
(そろそろ、こたつのけたら、こたつ布団、
クリーニングに出してね)