ちびっ子、Vtuberになる
中学3年生の夏その日はやってきた。
いつも通りの朝を迎え、何気ない1日が始まる。
その日は家族でプールにやってきていたが濡れたプールサイドで滑りバランスを崩して頭を強く打ちつけそのままプールの中へ沈んだ…
目が覚めたときはすでに病院のベットの上にいた。
最初は混乱したが、僕の中に美月姫という女の子の記憶があったため理解するのは早かった。
身長、体重、性別、全てが変わって僕は女の子になってしまった。
そう、身長141cmの15歳の少女に……
「美月姫大丈夫?お姉ちゃんだよ!わかる?」
目が覚めたと気づいてすぐ姉らしき人から声をかけられた。女の子の記憶の中にある姉の咲月姫だとうっすらとあるがこのままだと少女が全く別の人だと認識される。
今僕の中にある意識は男の子だから…
だから僕は、
「ここは……ど…こですか?」
記憶を無くしたことにした。
「美月姫?嘘だよね…」
それから僕はすぐに医者に診察された。そして記憶喪失と診断された。
あれから7ヶ月がすぎ家族は記憶喪失の僕にもなれてきたようだ。
僕自身は意識が男の子ということもあり女の子の生活に少しは慣れたが未だ完全には慣れない。
退院してすぐお風呂での洗い方から女の子としての仕草例えばスカートを履いた時は階段などの時に軽く抑えたりとかね。スカートを履くのは女装みたいですごい恥ずかしかった。僕も最初はすごく抵抗したがそれを上回る力で抑え込んでくるのでいつも負けてしまう。
「みぃちゃんちょっといい?」
今までのことを振り返っているとママから呼ばれた。
ママのとこに行く間もいろいろ変わったなと考える。
それは記憶を忘れたふりをする中で困ったことがある。それは美月姫の記憶の中ではお母さんと呼んでいたはずなのにいつのまにかママと呼ばれていたからと押し切られて呼び方を変えさせられた。
お父さんのことはパパとなり、姉のことはお姉ちゃんと呼ぶことになった。考えているといつのまにかママのところへ着いた。
「何?ママ」
「私ね思ったのよ!記憶を少しでも思い出せそうな方法‼︎だからね、みぃちゃんの大好きだったVtuberの募集があるってその会社で働いてるお友達から聞いて応募しちゃった」
「ママVtuberなるの?すごいね」
「ならないわよ?」
「?」
今応募したって言ったのに?
「だってVtuberになるのはみぃちゃんでしょ?」
頭の中が真っ白になった。
「どういうこと?」
「だから、みぃちゃんをVtuberの募集に応募したの!そしたら合格しました〜!」
ということは僕がVtuberになるの?
「なんでしたの?しなくていいのに!」
「だって好きなんでしょVtuber?いつもみてたし」
そりゃあいつもみてたよ好きだし、僕も美月姫もだけどそれとこれは話が違う。
だって、僕は…
「見る専門!僕はやるんじゃなくて見る方だよ!」
「あらら〜どうしましょう。合格しちゃったのに…」
ママは困ったと手を頬にそえて考え込む
面接もするはずだと僕は思い出した。
「大丈夫だよ!面接してないからVtuberになるのはまだ決まってない。今のうちに断ろう!」
だが、ママの顔色が悪い
「あのね、言いにくいんだけど…
この前Vtuberが好きなのかとかいろいろ聞いたじゃない?それでねママみぃちゃんびっくりさせたくて書類審査合格した時にちょっとお友達にお話ししに行ったの」
とても嫌な予感がする気がする。
「何を?」
「びっくりさせたいから本人が気づかないようにリモートにして日常会話風にリモート面接してたの。そしたら合格しちゃった」
嫌な予感が的中してしまった。
合格しちゃったじゃないよ!
「それって断ったりとかは?」
まだ配信してないしいけるでしょ?
「もう宣伝しちゃったから無理そうなの。」
早くない?それでも遅くはないよね?
僕から事情説明してみたらなんとかなったりするよね?
「しかも3Dアバターも完成しちゃったし何より明後日から配信デビューだからもう遅いのよ。」
明後日?ということは2日しかない
ママは断れないし僕も今更断る度胸ないから
「なら僕は…Vtuberになるってこと?」