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【連載版】嫌われ者の公爵令嬢。  作者: 池中織奈
番外編

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私はこの国での生活を満喫している ④


 オーリーが私のためにそうやって気を遣ってくれることが嬉しいと思う。

 私が一人暮らしをしているからというのもあるだろうけれど、心配してくれているのだろう。体調が悪い時に一人でいると結構大変だ。なんでも自分でやらなければならないし、取り返しのつかないことになる可能性もある。こうやって一人じゃないと実感できると心強い気持ちになる。



 私はオーリーやイフムート様と仲良くならなかったら、こうしてこの国にやってくることはなかったかもしれない。私のことを“運命”だと口にして、私自身じゃなくてその肩書だけを見ていた人たち。例えばオーリーやイフムート様と仲良くならなくても彼らから離れようとはしたと思う。ただ彼らはあの国の権力者だから、その場合どうなったか分からないけれど。

 私がこの国にいるのは、オーリーとイフムート様に出会ったから。私がこの国でのびのびと楽しく過ごせるのは、二人が居るから。



 私が横になっている間、侍女が食べやすいものを作ってくれる。

 体調が悪い時に誰かがご飯を作ってくれるのって、本当に心休まると言うかほっとする。

 気づいたらその音を聞きながら眠っていた。



「ご飯が出来ましたよ。ナーテ様」



 そんな声が聞こえてきて目を開ける。

 はっとして飛び起きた。だってオーリーが侍女をこちらによこしてくれていたのに、寝てしまっていたのだもん。




「そんなに慌てて起きなくて大丈夫ですよ。どうぞ、お食べください」



 作ってもらった温かいスープを口に含む。美味しい。

 誰かに作ってもらうものってどうしてこんなに美味しいんだろう? なんて考えながら完食した。

 その後、オーリーが手配してくれた医者に診てもらった。ただの風邪だったようで、ほっとした。




 薬は苦かったけれど、早く体調を治して仕事をしたいので飲み干す。

 薬を飲んだら少しだけ体調が良くなったけれど、此処で動きまわって悪化したら困るので大人しくベッドに横になる。



 こうして横になって、侍女が甲斐甲斐しく世話をしてくれているとなんだかお母さんのことが思い起こされた。幼い頃私が風邪を引いた時、今みたいにお母さんが傍に居てくれた。お母さんが傍に居てくれたことにほっとして、そしてすぐに眠って……起きたらすっかり元気になっていた。

 お母さんが亡くなる前に体調を崩していた時、私は必死に看病をした。でもそのまま亡くなってしまった。お母さんが亡くなった時、私はとても悲しかった。ただ悲しんでいる暇もなく、一人で生きていかなければならないと必死だった。

 その後はすぐにお父様に引き取られて、学園に通うことになって、卒業後はこの国にやってきて働いて……思えば結構バタバタした日々を送っていたなぁなんて思った。




 亡くなったお母さんはお父様とのことを私に言わなかったから、お父様に対してどんなふうに思っていたのかは分からない。ただもう二度とお父様に会わない覚悟で、私を貴族の庶子としてではなく一人で生きられるように育ててくれた。




 ――お母さんが生きていたら、どんなふうに私の世界は変わっていただろうか。

 ……そもそもなんというか、お母様が居たら私は伯爵家に引き取られることはなかっただろうなとは思う。お母さんはお父様に見つけられても一緒に居ることを頷かなかった気もする。

 貴族の庶子として生きていくのは、結構大変なのだ。そういう暮らしをお母さんは私にしてほしくないと思っていただろうから――。



 お母さんは私を一人で育てながら、少なくとも私の前では弱音なんて吐かなかった。元々伯爵家の侍女という安定した職業について、平凡に暮らしてたはずだ。それが突然身籠って、一人で生きていくことになって……お母さんは凄いなと思う。今、こうして一人暮らしをしていると余計にそう思う。

 だって元々私とお母さんが暮らしていた街は、お母さんの知り合いが誰もいなかったらしいの。誰かの伝手でそこに行きついたわけではなくて、本当に誰も自分を知らない土地で一から周りとの関係を作って……。



 亡くなる時だって、恨み言の一つも言わなかった。

 私のことを最期まで心配していた。自分のことじゃなくて、最期まで私のことばかり考えてくれていた。

 私はそんなお母さんが大好きだった。




 お母さんがそういう人だったからこそ、私は街の人の助けを借りながら一人で生きていこうと決意した。そもそもお母さんが街の人たちと良好な関係を築けていなければ私はお父様に見つけてもらうまで大変だったと思う。

 親を亡くして身寄りもない女の子が酷い目にあったなんてこともたまに聞く話だから。



「……おかあ、さん」




 うつらうつらしながら、お母さんのことを呼んだ。



 そして気づけば私は眠っていた。



 目が覚めた時、オーリーがよこしてくれた侍女はいなかった。置き手紙だけが残されていて、『体調不良が続くようならまた来ます』と書かれていた。

 ゆっくり休んですっかり体調がよくなったので、次の休みの日にはオーリーに会いに行こうと思うのだった。



『嫌われ者の公爵令嬢。』コミック発売しました。よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナーテがまともな王宮の文官として就職し、無事働けていて本当に良かったです。 [一言] ナーテのお母様の人生がハードモードすぎて(でもこの世界の女性には珍しくないのかも…ということも併せて)…
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