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私はこの国での生活を満喫している ③

 仕事が楽しくて、時々残業をする。とはいえ、あまり遅くならないようにはしている。



 王都の治安は良いほうだ。それでも色んな所から、様々な人が来ているのでたまに危険なことはある。特に夜遅いと物騒なこともあるので、気をつけて帰るようにする。

 私が暮らしているのは、王都の中でも治安の良いエリアだけどね。これはイフムート様が用意してくれた。




「ふぅ」



 家に辿り着いて一息をつく。

 今日も仕事頑張ったなぁと自分へのご褒美として、お店で買ったクッキーを口にする。



 私はバーシェイク王国の伯爵令嬢という立場はまだ持ってはいるけれど、一人で暮らしている。だって、お兄様が伯爵位を継ぐので、私はただのナーテとして自立して生きていく必要があるから。

 侍女などが要るなら雇えばいいと言われているけれど、元々私は平民だったし、そういうのは不要だもん。落ち着かないしね。



 ただ私はイフムート様の友人という立場だから、狙われることもあるかもしれないとは言われている。その時は大人しく護衛されるようにって。もちろん、それには頷いた。



 私一人だけではそういう事態になったらどうしようもないから。



 やっぱり王族と親しくしているというだけでも目立って、狙われる可能性がある者なんだなと思った。オーリーだってあれだけ親しみやすいけれど、公爵令嬢という立場で、それだけ本来なら国にとって重要な存在なはずだった。



 ……というか、やっぱりあの国ってちょっとおかしかったのだなとは思う。

 王太子妃の影響で色々と歪んでいたというか…。

 普通なら学園に通う年頃の王子や子息には婚約者がいるはずで。それが居なかったのは王太子妃の影響だった。



 王太子妃はオーリーは本来なら“悪役令嬢”で、“ヒロイン”であるらしい私を殺そうとしたりしたと言っていたらしい。本当に夢物語のような話だけど、あの人はそれを信じ切っていた。

 今の私は王宮で働いているからこそ、貴族のことが昔より分かるようになっていると思う。

 婚約者に違う自分ではない異性が近づいていれば排除しようとするのは結構よくあることだと思う。だからやっぱりそもそもオーリーって“悪役令嬢”じゃないと思う。



 王太子妃は私のことを第二王子たちとくっつけようとしていたけれど、本当にそうなっていたら大変だっただろう。身分不相応にそういう位を望むのって凄く覚悟がいると思う。



 もちろん、下位貴族から高位貴族に嫁ぐなんて話は実際にあるし、そういう覚悟があるならよいと思うけれど……。



 私が“運命”だというのを喜ぶような人間だったら、多分バーシェイク王国はもっと荒れたのだろうなとも思う。だって、例えば自分が特別だからと周りから言われた言葉を全て信じ切るような人間だったら、何の疑問も持たずに見目と位の良い男性に囲まれるのを当たり前だと思っただろう。それにオーリーの事も、周りから言われるままに“悪役令嬢”だと思い込んでいたのかもしれない。

 そうなっていたらと思うとぞっとする。

 本当に、オーリーと一緒にこの国に来られてよかった。





「休みの日に、オーリーの所に行こうかなぁ」



 学園生活中はオーリーと表立って仲良く出来た期間は短かった。学園生活は色々と大変だった。

 この国にきてからは私もオーリーも仕事をしているから、学園生活を送っていた時ほど会えるわけではない。



 だから休みの日に会いにいく。オーリーも時折時間を見つけては会いにきてくれる。


 働き始めてからも一緒に楽しく過ごせる友達がいるのって嬉しいことだ。オーリーに会いに行きたいなと考えるだけで楽しみになる。

 オーリーと話したいことが沢山あるのだ。

 そんなことを考えながら夕食をとって、寝る準備を進める。


 一人暮らしなのでやることは沢山あるので、一つ一つ片付けていった。




「寝よう」



 私はそのまま眠りにつくのだった。




 翌日も頑張ろう……とそう気合を入れていたわけだけど、


「……こほっ」


 私は風邪をひいてしまった。



 あんまり体調を崩すことはないのだけど、最近季節の変わり目だったからかな。

 とりあえず一旦、職場に顔を出して風邪を引いたことを言おう。……こういう時は使用人いた方が楽だったかもしれない。



 勤務時間よりも早めに向かったら、「風邪を引いているならしばらく休むように」と上司から言われた。

 その言葉をありがたく受け取って、私は家に戻った。

 しばらくゆっくり休んで、体調を治すことにした。

 少し休んでいると、コンコンッと扉がノックされる音がした。扉を開けると、侍女の姿があった。




「ナーテ様、オティーリエ様から話を聞いて薬を持ってきました。お医者様もお呼びしましたので、お待ちくださいね」



 オーリーが私の体調不良の話を聞いて、侍女をよこしてくれたようだった。



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