私と、可愛い生徒たち ③
「オーリー!!」
ナーテが嬉しそうに笑いながらやってくる。
ナーテは相変わらず可愛い。このクレバス王国にやってきてから、少しだけ髪を伸ばしている。
それにしてもバーシェイク王国で、第二王子たちに追い回されていた頃のナーテは少し疲労が見えていたから……。
とても輝いていて、いきいきとしているナーテを見ると何だか嬉しくなる。
文官として働いているナーテは、とても楽しそうに自立した暮らしをしている。イフムートが友人として支援はすると言ってたけど、ほとんど断って仕事しているのよね。
今の方がナーテはとても楽しそうだ。
「ナーテ」
ナーテの顔を見ると、私も嬉しい気持ちになる。
使用人たちも、ナーテを笑顔で受け入れている。皆、ナーテのことが好きだもの。
「オーリーは本当に相変わらず綺麗ね。こっちにきてから益々綺麗だわ!」
そう言いながら抱き着かれて、受け止めながら笑い合う。
「イフムート様に色々もらっているの?」
「まぁ……イフムート、色々理由つけて色んなものをくれようとするもの。断りにくい理由でくれるのよね」
「ふふ、イフムート様はオーリーのことが大好きだものね」
そんな会話を交わしながら笑い合う。なんだかこうして話しているだけでなんて楽しいのだろうってそういう気持ちでいっぱいになる。
ナーテが転入してきて、第二王子たちの“運命”だと言われていると知った頃は、ナーテとこんなに仲良くなれるとは思ってなかった。それが今はこうして親友と呼べるほどになっているなんて不思議な気持ちだ。
しばらく二人で近況を話し合ってから、私はカッチヤ地方の染め物についてナーテに聞いてみた。
「カッチヤ地方について? 私も行ったことはないけれど……ただ同じ文官の先輩にカッチヤ地方出身の方がいるのよね。聞いてくるよ!」
「わぁ、ありがとう」
「それにしてもオーリーの授業は楽しそうよね。私もオーリーと一緒に勉強会したいわ。一緒に同じようなことしようよ! 互いに一つのことについて調べて、話し合うのきっと楽しいと思うの!」
ナーテはそう言いながら、楽しそうににこにこ笑っている。
「楽しそう! ナーテはどんなのがいい?」
「そうねぇ。折角クレバス王国にきているから、クレバス王国特有の食文化とか! 私、文官として行ったことない街にいったりたまにするのだけど、今まで見たことないものがあったりして面白いの。私の食べたことのないものって沢山あるんだなって。私の見たことないお菓子もあったわ! レシピを教えてもらえる範囲は教えてもらったりしているの。王城に仕えている人たちって、色んな場所から来ている人が多くて……本当に色んなことが知れて面白いのよ。材料集まったら作ってみるわ!」
「材料には何がいるの?」
「えっとねぇ……」
ナーテがあげた材料を聞き出すと、それがこの屋敷内にそろっていることが分かった。ナーテに今、材料が屋敷にあるから一緒に作るか誘うと、ナーテは喜んで頷く。
「それにしても流石だわ。こんなに高価な材料もあるなんて! えっと、これ使っちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫よ。私も久しぶりにナーテとお菓子作りたいもの」
学園生活を送っている中で、長期休暇の時に一緒にお菓子を作ったりしていた。その時のことを思い出して、何だかくすりと笑ってしまう。
ナーテと一緒にお菓子作りをして、一緒に食べる。
「冷たくておいしいわ!」
「ふふ、美味しいよね。私も初めて食べた時にびっくりしたの」
ナーテと一緒にお菓子を食べる。美味しいお菓子を食べていると何だか嬉しい気持ちになる。
ナーテはしばらく屋敷に滞在して、明日も仕事だからと帰っていった。帰り際に「カッチヤ地方について分かったら教えるね。あと食文化についても次にくるまでに調べておくから!」と言っていた。
ナーテが帰った後、私もカッチヤ地方についてのことやこのクレバス王国の食文化について調べたりした。あとはマドット以外にも家庭教師をしている生徒はいるので、その授業に関して準備をしたりする。
「オーリー、一生懸命なのは良いけれども夜更かししないようにね?」
「はい。お母様」
家庭教師の活動の準備をしたり、調べものをしたりしていると夜更かしをしそうになる時がある。気づいたら時間が過ぎていて驚いてしまうのよね。
お母様から声を掛けられて、その日は本を閉じて眠った。
――明日はまた家庭教師の授業があるから、頑張らないと。
『嫌われ者の公爵令嬢。』二巻は2022年5月発売予定になります。よろしくお願いします