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私と、可愛い生徒たち ①

隣国にて。オーリーと家庭教師で教えている令嬢たちとの話です。

「おはようございます。お嬢様」

「おはよう、ミロダ」





 朝、目が覚めてから侍女であるミロダと挨拶を交わす。



 クレバス国にやってきて、しばらくが経つ。まだ、クレバス国に居るのが不思議な気持ちにさえなる。

 寝ぼけたままの私の身支度をミロダたちがしてくれる。



 この屋敷に仕えている使用人たちは、バーシェイク王国からそのままついてきてくれた者たちばかりだ。




 身支度を侍女たちにしてもらってから、お父様とお母様と挨拶をして、席に着く。

 クレバス国は、国が異なるのもあってバーシェイク王国とは少しずつ文化が異なっていたりする。食事で出てくる食べ物も、主流なものが違ったりもする。ちょっとした違いがあって、そういうのを実感すると、隣国で暮らしているのだなと実感する。




 一番の違いは、貴族たちと交流した時の視線や周りからの対応だ。

 バーシェイク王国では、終始遠巻きにされていて、私はずっと敬遠されてばかりだった。だけれども、此処ではそういう視線ばかりではない。私がイフムートの友人として此処にいるからこそ、笑いかけてくれる人たちが多い。

 そう言う風に笑いかけられることが、不思議な気持ちになった。




 イフムートには、「本来、オーリーはそうやって過ごすはずだったんだよ?」って言われた。確かに元王太子妃がああいう態度をしなければこういう風に笑いかけられるのが当たり前の生活をしていたのかもしれない。

 不思議な気持ちと、戸惑いもあって……だけれども何だか心が温かい。そういう気持ちでいっぱいになった。





「オーリー、今日は家庭教師に行くのよね?」

「うん。そうよ。お母様」




 お母様がこんな風に、憂いが何一つなく笑っていることが私は嬉しかった。



 こうしてクレバス国にやってきたからこそ、お母様は私が王侯貴族たちから敬遠されていることを嘆くことも無くなった。お母様のその笑みを見ていると、こうしてクレバス国にやってきて良かったというそういう気持ちになる。




 私はこのクレバス国にやってきてから、貴族たちと交流したり、まだ年若い貴族令嬢たちの家庭教師の仕事をしている。イフムートから紹介された貴族令嬢たちで、彼女たちは私が隣国で“悪役令嬢”と呼ばれていたことなどを知っていても、それを抜きにして私のことを見てくれていた。

 家庭教師として初めて彼女たちと対面した時は、正直とても緊張していたけれど、それが杞憂と分かって本当に嬉しかったっけ。

 私は今、家庭教師をすることをとても楽しんでいる。




 バーシェイク王国では、年下の令嬢たちと交流することなんて全然なかった。元王太子妃の影響があって年下の子たちと交流なんて全然なかった。だからこそ、ただ慕ってくれる生徒たちが可愛いなってそういう気持ちでいっぱいになっている。

 家庭教師をすることが本当に楽しくて仕方がなくて、いつも楽しみにしているのだ。




 今日はクレバス国の伯爵家の元へと向かうことになっている。




 公爵令嬢として過ごしてきたこと、一生懸命学んできたことがこうして誰かに伝えられて、隣国にやってきて役に立っていることが嬉しい。



 昔、王侯貴族たちから敬遠されている時、公爵令嬢として学び続ける必要なんてないんじゃないか――なんて、そんな風に思った時だってあった。でもお母様とお父様が、「学んだことは何でも役に立つはずだから」と、色んな可能性を考えて、そんな風に言ってくれたから。それで私も一生懸命学んだ。

 パーティーに参加することなんてあまりなかったし、参加しても敬遠されていたけれど――それでもこうして学んだことが生かせている。今までやってきたことで、何も無駄なことなんてなかったんだなってそんな気持ちになった。




 お母様とお父様や使用人たちと会話を交わしているうちに、時間がやってくる。馬車に乗って、王都にある伯爵家の別邸へと向かう。



 馬車の中から、外の光景を見てもバーシェイク王国とは雰囲気が異なる。街並みや歩いている人たちも違って、何だかその光景を見ているだけでワクワクする。

 この前、イフムートとナーテたちと一緒に見て回ったりしたのだけど、とっても楽しかった。また今度、一緒に見て回ることになっているの。




 このクレバス国にやってきてから、何だか夢見心地な気持ちになっている。だって周りの人たちがとてもやさしいから。周りから敬遠され続けない日々というのは、気を抜いて居られて、ついつい私は思い起こすだけで笑みをこぼしてしまう。

 このクレバス国で沢山のことを経験しているけれど、これからもやりたいことは沢山ある。これから少しずつ経験していきたいなと思った。



 そんな風に考えていると、伯爵家へと到着する。

 到着してから屋敷の中へと案内される。案内してくれる使用人たちも私に敬意をもって接してくれている。

 そして嬉しそうな声が聞こえてくる。





「オティーリエお姉様!! ごきげんよう」



 そうして笑いかけてくれるのは、私の生徒の一人であるマドット・ウーチドである。



 まだ十二歳のマドットは、水色の髪のかわいらしい少女である。その黄色の目をキラキラさせて私を見ている。

 私には妹はいないけれど、妹がいたらこういう感じなのかなって思う。

 イフムートの妹のドエンヌも私のことをお姉様呼びしてくれているから、そうやって呼んで、慕ってくれる人が増えて嬉しい気持ちになっている。



1月15日頃に『嫌われ者の公爵令嬢。』の書籍が発売します。

特典などの情報を活動報告に記載しています。


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