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3.私と第二王子殿下

「――わざと俺にぶつかってきたのだろう。しおらしい真似をしても俺は騙されないからな!」





 目の前でそんなことを言ってきているのは、第二王子である。




 ツィアーノ・バーシェイク。

 とても噛みそうな名前の王子様だ。藍色の髪と、黄色い瞳が特徴的で、美形である。俺様系というやつだ。



 その王子様に私は睨まれている。

 というのも廊下を歩いていたらぶつかってしまったのだ。……なんて不運。私にとっても第二王子にとっても。






「……申し訳ございません。前を見ておりませんでした。失礼いたします」





 正直言ってこの人に関わりたいという思いは、1パーセントもない。王太子妃同様、この第二王子殿下とも私は交流をしたことがほぼない。だけれどもこのお方は、私のことを王太子妃同様嫌っている。視界に入れたくないレベルであろう。

 そんな嫌いな虫でも見るような目で睨まれると流石に私も嫌な気持ちになる。あとこの方が王太子でなかったのは良かったと思う。外面を取り繕えない人が王になったらこの国は大変だ。……まぁ、王太子も表面上はにこやかにしながらも王太子妃から何か聞いているからか視線が非常に冷たかったけれど。





「ふん、俺の妃の座を狙っているのだろうが、俺はお前には騙されん」

「第二王子殿下の妃を狙うなど、わたくしには恐れ多いことでございます。」





 内心では誰がこの王子様の妃になりたいと思うのだろうか……という気持ちで一杯である。だって明らかに面倒な人だ。俺様系な、俺は偉いですっていう態度は人によっては心が惹かれるかもしれないが、私は好ましいとは思っていない。でも他の貴族令嬢はキャーキャー言っているから、一般的にモテる人なのだと思う。





 そうやって王子という地位もあり、周りからもてはやされたからこそ残念な人になったのではないか……などと私は不敬なことを内心考えてしまった。




「はっ、口では何とでも言える」




 ……ややこしいことに、私は王太子妃や第二王子に婚約者の座を狙っていると思われている。




 私が頭を下げている間に、王子様はいなくなったのでほっと一息を吐く。周りから見世物のように見られていてその場を急ぎ足で後にした。




 寮に実家から連れてきた侍女を連れていくことは許可されているが、学園内に連れていくことは許可されていない。学園で私たちの世話をするのは学園で雇っている使用人である。貴族に乞われれば、その通りに動く彼らは学園内でも見かけられる。彼らからも冷たい瞳を向けられる私の貴族人生は終わっている。




 誰もいない裏庭にたどり着き、一息を吐く。




 昔、私と先程の王子様の間で縁談はあったらしい。それは陛下が第二王子のお相手として私はどうかと持ち掛けたらしいのだ。嫌われても私は公爵令嬢だから。でもあの王子様は王太子妃が大好きで、王太子妃を妄信している。なので、私みたいな悪役令嬢とは婚約できないと断られたらしい。

 ……うん、まぁ、それはいい。私もあの王子様と婚約なんて気が滅入る。でもどこでどう認識が変わってしまったのか、私はあの王子様の婚約者になりたくて仕方がなくて、両親に婚約をねだったことになっている。ちなみにそんな事実はない。






 王子様は、王太子妃が理想らしい。優しくて、誰からも好かれている妖精姫。そんな妖精姫を理想としている王子様は婚約者を作っていない。何でも妖精姫から「貴方の運命がそのうち現れるはずよ」などという意味の分からないことを言われたためらしい……。




 ちなみにそんなことを言われている選ばれし男たちにはお兄様も含まれている。公爵家を継がなければならないのに、婚約者も恋人もおらず、その運命を待っている……って中々アレな気がする。

 まぁ、王子様が婚約者を選ばないというのもあって、いずれその婚約者の地位になれるのでは! と令嬢とその親たちが期待した結果、婚約を結んでいない令嬢もそれなりにいるわけだけど……。ただそういう夢見がちな思考を持っていない令嬢はさっさと婚約している。





 私としてみれば“運命”などという訳の分からない助言に付き従って婚約者を作らない人たちに選ばれるかもと期待している令嬢よりも、婚約者を作って将来を見据えている令嬢たちの方が好ましいと思っている。向こうは私と全く関わってはくれないけど。




 ……私が婚約者が出来ないのは、婚約を拒否されているからなのだけど、中には婚約を結ばないからこそ第二王子を狙っていると思い込んでいる人もいる。お父様ぐらいの年の人への後妻とか、訳アリの人との婚約なら私も結べるかもしれないが、娘の幸せを望んでいるお父様はそういうのは省いてくれている。

 でも本当、お兄様が当主になって、私がまだ家にいたらそういう人に嫁がされそうだからその前に平民になるべきだよねっとは思っている。




 そのためにももっと平民の事を学ばないとね!




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