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1.私が嫌われている理由。

 私、オティーリエ・シェフィンコは驚くほどに王侯貴族に嫌われている。



 以前の、五歳の頃の私は我儘だったからそれで遠巻きにされているのは仕方がないことだったと自分でも思う。

 だけど、今の私はそこまで酷くはないと……思う。




 街に出かけた時だって、皆普通に笑いかけてくれているし、平民の知り合いも沢山いる。ただただ私は王侯貴族という上級階級の人たちに嫌われている。私だって公爵令嬢という立場で、同じ上流階級にも関わらずである。




「……オティーリエ様だわ」

「まぁ……あの方と同じクラスだなんて不安ですわ」




 王侯貴族の通う学園に通って初日から、私は遠巻きにされている。

 普通、公爵令嬢という立場ならば周りから近づいて来ようとするものである。それだけお父様の公爵家という地位は強大なのだから。

 ――けれども誰一人私と親しくしようとしてくれないのは、一人の女性の言葉にある。




「ルイーゼ様が……」

「ええ。ルイーゼ様が……」



 クラスメイトたちも口にしているその“ルイーゼ様”。



 フルネームは、ルイーゼ・ミッシェルン。現在は王太子と結婚してルイーゼ・バーシェイク。




 我が国の筆頭公爵家の長女にして、王太子殿下の妃。次期王妃という地位を持つ、この国で影響力の強い女性である。私は必要な時に挨拶した程度しか、交流はない。

 美しい金色の髪を持ち、女神のようだと言われる慈愛深い令嬢。嫌われ者の私とは正反対の位置にいる麗しの令嬢だ。妖精姫だとか、そういうあだ名で呼ばれている方だ。



 私よりも四歳年上の彼女は既に学園を卒業している。だけど多くの者に憧れられ、好かれている。




 ――そんな彼女は、なぜか私を嫌っている。

 まともに話したこともない。本当に必要最低限の挨拶程度。でも王太子妃は私のことがとても嫌いなのだ。






 ――五歳の時にあれだけ私が遠巻きにされていたのも、私の我儘が原因なだけではなかった。

 四つほど年上の王太子妃が、私のことを憂いていたのだという。それが原因だった。







 彼女はどうしてだか、私がどうしようもないほどひどい女性に見えるらしい。それでいて、私が幾ら我儘を直したとしても、彼女にとってはそれが計算にしか見えないらしい。

 私が幾ら優しく対応しようとも――それでもその心は周りに伝わらない。






 あらゆる行動が誤解され、私という存在は十年経った今も、遠巻きにされ、悪役令嬢だと、信じられない噂が出回っている。





 昔、私はその噂を払拭しようと頑張った。沢山行動して、自分から好かれようとした。けど、それは上手く行かなかった。空回りにしかならず、結果として王侯貴族の中で私と心から親しくしようとする人はいない。




 また王太子妃を溺愛している王太子はもちろん、なぜかその弟の第二王子にも嫌われている。

 私が何もしていなくても、私は第二王子の婚約者の座を狙っている存在らしい。まったくもって意味が分からない。





 そんなわけで昔は色々頑張った私だが、最早最近は諦めている。

 王侯貴族間で嫌われていることは、仕方がないと。王太子妃に嫌われている限りどうしようもないのだと。





 というか、王太子妃に対して盲目的過ぎてこの国は大丈夫だろうかと嫌われ者ながらにも思ってしまう。





 王太子妃が嫌っているのは私だけらしい。

 ただただ彼女にとっては私がどうしようもない性格の女性で、どうしようもないほど性悪で――“悪役令嬢”なのだとか。




 もちろん、直接個人的な話をしたこともないから、そんなことを言われても意味が分からないだけである。

 あと私に近づいてくる人がいないのは、三つ上のお兄様の影響もある。





 我がシェフィンコ公爵家を継ぐ予定であるお兄様。このお兄様は元々私が我儘だったのもあり、私と距離を置いていた。昔の私を顧みれば、私を嫌っていても仕方がない事だとは思う。

 だけどその嫌悪は、王太子殿下と王太子妃への尊敬の気持ちから益々ひどくなったのである。




 お兄様は王太子殿下の側近であり、王太子殿下と王太子妃とそれはもう仲良くしているのだ。家族であり、妹である私が幾ら改心した様子を見せようが、全く持ってそれは目に入らないらしい。




「女神であるルイーゼ様がお前の性根が腐っていると言っているのだ。お前が幾ら父上と母上を騙そうとしても私は騙されない」



 などと真正面から言われた私は盛大に泣いたものである。




 お父様とお母様が幾らそれは違うと言葉をかけたとしても、お兄様にとっては私は“改心したふりをして公爵と公爵夫人を操り、意のままにしようとしている悪女”でしかないらしい。



 正直、何処から突っ込めばいいのか私にはさっぱり分からない。



 そもそもどうして王太子妃が私のことを“悪女”や“悪役令嬢”というものに仕立て上げようとしているのかも分からない。どうしてそこまで悪役として私が買いかぶられているのかもさっぱり分からない。

 私は嫌われ者が故に、婚約者はいない。次期公爵家当主のお兄様にも嫌われている私は、シェフィンコ公爵家の影響力は皆無だ。




 というわけで、もうあきらめて絶賛ぼっち生活を謳歌している。



以前書いた短編『嫌われ者の公爵令嬢。』の長めバージョンです。

4,5万字程度で終わる予定の短めの話です。書く気分になってどんどん書いているので、連続投稿します。


0時、9時、12時、18時で投稿していく予定です。

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― 新着の感想 ―
]_・)悪【役】令嬢と言い出したのが、妃(つまり、もう結婚して嫁に収まってる人)だということは、その元公爵令嬢で今は王子妃の人がそっち系の知識を持ってるってことかー
[一言] このお兄ちゃん家族、侍女執事からも嫌われてそうだな
[気になる点] 極個人的な感覚なのですが……。 お笑いが芸能として 一般化している庶民の話でなければ、「つっこむ」と言う言葉は違和感があります。 「指摘する」が適当なんじゃないかな、と……。
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