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15.私と友人の内緒の話

「第二王子たち、相変わらずオーリーがやっていると思い込んで暴走しているね」

「うん。というか、ナーテがどれだけ嫌がっても無理やり傍にいようとしているみたいで、ナーテがこちらにこれないって嘆いていた」



 あれからナーテへの嫌がらせは悪化している。



 それに伴い、第二王子たちは自分たちの運命の相手であるナーテを守らなければと傍にいようとしている。何ともまぁ、悪循環である。



 王子様たちが傍にいるからこそ嫌がらせを受けているのに、もっと傍にいようとするなんてナーテの事が実は嫌いなのだろうか? とさえ思っている。



 私はナーテの事を表立って庇う行動をすべきかどうかを悩んでいる。ナーテには、私の立場が益々悪くなりそうだからやらないでくれと言われてしまった。でも私はナーテの事を大切に思っている。

 だからどうにかしたいのだけど、嫌われ者の私ではナーテを庇ったら悪化してしまう可能性もあった。




「何か悩んでいる?」

「うん。私が表立って庇って、ナーテの立場が益々悪くなるんじゃないかって気になっているの。ナーテは卒業までもう少しだから大丈夫だなんて言っていたけれど……王子様の相手になりたくて仕方がない令嬢たちがどんなふうに暴走するか分からないから」

「オーリーはやりたいようにやればいいんだよ。どうせ、俺の国に来るんだし」

「……イフムートは何だか私がこの国に居にくくなる方が嬉しそうね」

「そりゃそうだよ。俺はオーリーに俺の国に来てほしいからね。この国の見る目がない王侯貴族たちが後からオーリーを欲しがっても返したくないし。だから、俺はオーリーと、ついでにウェシーヤ嬢がこっちに来やすいようにしているんだよ」

「イフムートは、良い性格よね……。それをはっきり本人である私に言うあたり」




 イフムートは、恐らく隣国でそれなりの立場にある。イフムートは私がこの国に居にくくなればなるほど、隣国に来てくれると思っているらしい。とはいえ、イフムートが敢えて私の立場を悪くしたりということはしてない。



 ナーテは嫌がらせをされているが、ある程度イフムートは止めようとはしてくれている。普通に考えてナーテは王太子妃の会いたいという願望を断ることが難しい。それが断れているのも、多分イフムートが原因でもあるのだと思う。




「俺はオーリーに俺の国に来てほしいけれど、オーリーに嫌われたいわけじゃないから。オーリーが望むなら手札はあるから状況をひっくり返すことはそれなりには出来ると思う。でもこの国の陛下は王太子夫妻や第二王子の将来のことも踏まえて、卒業までは様子を見ることを決めている。オーリーが噂通りの令嬢ではないことは、この国の陛下は認識はしているよ。……まぁ、ある意味、このままこの国から消えようとしているオーリーのことを彼らの教育材料の一つにしているとも言えるね」



 そんなことをこともなげに言う。



 イフムートも私がイフムートが只の平民ではないことに気づいていることを気づいているのだ。

 それにしても王様にまで学園内の話は行っているようだった。陛下はパーティーで挨拶した時にも嫌な目は向けてきたりしなかった。





「だからね、オーリー、俺はそれが嫌なら早急にどうにかしてさっさと学園の卒業を待たずにオーリーのことを連れ帰ってもいいのかなという気持ちもあるんだよ。ただオーリーは、そういうの望んでないでしょ。自分からそういう騒ぎを起こすことを求めてない。このまま卒業したいって思っている。――オーリーはわざわざ彼らに関わろうとはしていなくて、寧ろもう関わりたくないって思っているでしょ」

「うん。そうね。関わりたくないわ。何を言っても私の言うことを何一つ聞かない王子様たちの相手は疲れるもの」

「うん。だから、このまま彼らが大人しく卒業をするのならばそれはそれ。で、現実のオーリーとウェシーヤ嬢を見ることもなく、何か取り返しのつかないことを起こすならそれはそれ。その時は国内の勢力図ががらりと変わるだけの話だよ。どちらにしても、オーリーが無事に隣国に行けるように俺もシェフィンコ公爵夫妻も準備しているから、オーリーは好きなようにしたらいいんだよ」




 イフムートは、お父様とお母様ともやり取りをしている。それは知っていたけれど、ちゃんと色々私が知らない所で準備を進めているらしい。

 なんだか国内の勢力図が変わるといった恐ろしい話も聞こえてきたが、王子様たちが私の事を誤解して決めつけているから、卒業までにどういう行動を起こすか陛下に試されているらしい。





「……私が好きにしても、その準備には影響はない?」

「ないよ。オーリーが好きにしても、俺の国側ではしっかり受け入れ準備出来ているから」

「じゃあ、私はナーテのことを助けるわ。私にとっての大事な友達だもの」

「そうしたいならそうしたらいいよ。俺もそうしたいところだけど……俺が表立って二人の傍にいるとまたややこしい事態になりそうだから、裏から助ける」

「ややこしい事態って?」

「……俺もあの王太子妃に『いずれ運命に出会う』とか言われていた一人なんだよ」

「え? そうなの? じゃあ、ナーテに運命感じている?」

「いや、ないから。そもそもそういうのは人に言われたから運命だとかいうものじゃないし、俺は運命なんてものは信じてない」




 はっきりとイフムートはそんなことを言った。



 それにしてもイフムートも、王太子妃から“運命に出会う”などと言われているお仲間さんだとは思っていなかった。

 というか、ナーテはどれだけの人数の運命なのだろうか……。勝手に運命認定されたナーテからしたらたまったものではないだろう。




「ところでオーリーは、俺の事、聞かないの?」

「聞いて欲しいの? 教えてくれるならイフムートが何者か、教えて欲しいけど」




 そう言ったら、イフムートは面白そうに笑った。



「俺は――」



 そしてイフムートは、自分の出自を私に語った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 両親と使用人以外全員敵という辛い主人公の状況が続けばいいなんて、普通の人間が惚れてる人間に思えることじゃない。正直なんじゃなくて既に病んでいる。 今本人に面と向かってこういうこと言える奴は実…
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