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14.私を問い詰められても、私はやってません

「オティーリエ・シェフィンコ!! お前、ナーテに嫌がらせをしているのだろう!!」



 いつものように図書館でのんびりしていたら、王子様たちに突撃された。



 なんだか王子様も含めて皆、私を睨みつけている。女性一人相手に複数人で怒鳴り込みにくるなんて何なのだろうか。



 そして後ろを見て。

 ドジータ様の隣にいるナーテ、凄い青ざめているから。思いっきり首を横に振っているから。



「わたくしはそのような真似を神に誓ってしておりません」



 どうして大切な友人相手にそのような真似をしなければならないのだろうか。私とナーテは、仲良しなのに。



「はっ、言い訳だけはいっちょ前だな」

「証拠はございますか。わたくしはそのような真似をしておりません」

「そんなことを言って、お前以外にこんなことをするやつが他にいるのか!!」



 居ますよ。貴方の後ろにいる令嬢たちとか。一年生の時にあの平民の少女――シャーダ様を虐めていた令嬢たちもいますしね。がっつりいじめの現場を私は目撃していたしね。



「わたくしはやっておりません」

「お前が散々、平民達を虐めていると言う噂は聞いているんだぞ。彼らを脅して他の者に罪を押し付けているなど、本当に何という性悪か。義姉上はこの件に、心を痛めている。俺の運命であるナーテにこのような真似をするなど!!」

「本当に公爵家令嬢だというのに、愛しいナーテに酷い真似をするなんて」

「貴族の風上にもおけんな」



 私の話をいつになったら彼らはちゃんと聞いてくれるのだろうか。第二王子、宰相の次男、騎士団長の三男と、この三人は全然私の話を聞かない。



 というか、後ろ見て。



 王子様が運命なんて言ってしまうから、ドジータ様が物凄い形相しているから。百年の恋も冷めるような恐ろしい顔。それでいてその傍にいるナーテの顔色見て。ドジータ様の恐ろしい顔を見て、震えているから。





「何度もおっしゃっていますが。わたくしは断じてやっておりません。ナーテ様に嫌がらせなどしておりませんし、平民の方々にもそのような真似はしておりません。そもそも証拠はお持ちなのでしょうか?」

「証拠など、貴方がつぶしているのでしょう!! なんと巧妙な悪女なのでしょうか!! ナーテのことは私がしっかり守ります!」




 待て待て、宰相子息。私がやってないので、私がやった証拠などないのは当然なんだけど。

 そしてナーテの手をぎゅっとするんじゃない。婚約者でもない令嬢にみだりに触れてはいけないんだけど。




「……婚約者でもない令嬢にみだりに触れてはいけないと思いますわ。ナーテ様も困っておられますわ」

「はっ、何を言うか。ナーテはお前が目の前にいるから震えているだけだ。馬脚を現したな。それこそお前がナーテを嫌っている証だ」




 いや、何言っているの??

 自信満々にその黄色い目が私を見ているけど、意味が分からない。この人たちの思考回路はどうなっているんだろうか。

 私は至極当たり前のことを言っただけなのだけど。そしてナーテが高位貴族に囲まれて凄い青ざめているから。




「わたくしはナーテ様のことを嫌っておりません」



 ――寧ろお友達なので、大好きだと言える。




「次は証拠をつかんでやる!! その時こそ、お前を断罪する!!」




 何を言っているんだ?? としか思えないがそんな捨て台詞を言い放って、王子様たちはいなくなった。



「お疲れ様、オーリー」

「あら、いたの、イフムート」

「うん。ちょっと前から。まったくもってオーリーの話をあいつら聞かないな」

「昔からそうよ」

「口出ししたらややこしいことになりそうで、庇わなかった。ごめん、オーリー」

「大丈夫よ。貴方が誰であっても、口出ししたらまた変な噂を言われるだけだもの」




 私という存在を悪役だと決めつけているから、誰が関わろうとも悪いようにしか彼らはとらない。

 そんなこんなしばらく話していると、ナーテがやってきた。




「ごめんなさい!! オーリー!! 私が幾ら言っても、全然信じてくれなくて、聞いてくれなくてっ!! オーリーはそんなことをする人じゃないって言っても、脅されているとか騙されているとか、訳の分からないことを言い続けて……!!」




 どうにか王子様たちをまいてきたらしい。



 ナーテは申し訳なさそうに頭を下げる。それにしても運命だとか言っている相手の言うことを全く聞かないってどういうことなのだろうか? 普通に考えて好きな人の言うことを聞かないって中々アレな気がする。



「大丈夫よ。分かっているから」

「それにしてもあの人たち、本当に何なんでしょうね!! こうなるだろうって思っていたから、私、嫌がらせされているの、ばれないようにしていたのに!! どこからか嗅ぎつけられて!! 私、そもそも教師にもう相談済みで……、第二王子たちに近づかないように色々手配してたのに!! なんかもうなんなの!?」



 途中からナーテは怒りを表していた。お疲れのようである。



「お疲れ様、ナーテ。あともう少しの辛抱だから一緒に乗り切りましょう。教師や他の生徒たちが王子様達から逃がしてくれようとはしているのね。それは良かったわ」

「でも、あの人たち……私の話聞かないから、色々勘違い発言ばかりするんだよ。お友達といるから大丈夫ですっていっても、心配だからとかいうし。なんかルイーゼ様がどうのこうの言っていたけれど、私が嫌がらせされるの知っていたってことなの?? って意味が分からないよ。あったこともないけど、王太子妃様って本当に怖いから。それに何が何でもオーリーが嫌がらせをしているって思い込みたいみたいで……」





 ナーテの話を聞いて何とも言えない気持ちになった。ナーテが嫌がらせをされることを知っていたって、ナーテは王太子妃のお気に入りだと思っていたけれど、そんなことはないのかもしれない。



 ナーテと一度も会ったことがないのにナーテのことを決めつけていて、決めつけたナーテのことを気にかけている。



 私は嫌われ者で、ナーテはお気に入り。



 立場的に言えば正反対だけれども、私たちは何だかんだ似た思いを抱えているのかもしれない。

 王太子妃は私とナーテの事を決めつけていて、王太子妃が思っている通りの人間だと思っている。

 ナーテに関してはお気に入りであるが人間としては見ていなくて、愛玩動物のようにただただ勝手に気にかけているとかそんな感じのように見える。




「お互い大変ね。でも卒業後は隣国に行けるのだから、それを目標に頑張ろう」

「うん! でもその前に無理やり王宮に連れていかれたりしたらどうしよう……」

「私も訳の分からないことで大事にされたらどうしようって思うけれど……流石に、そこまで考えなしじゃないはずだわ」




 私もナーテもすっかり、王子様たちを思い込みの激しい勘違いばかりしている男と認識している。

 そんな私とナーテを見て、イフムートは笑いながら「大丈夫だよ」と言っていた。



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