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第一章8  〈お買い物と世界の国々〉

 

 翌日、ジロとマスコに留守番を頼んで、再びアルモンティアに来た。

 なんだかんだと仲間が増え、足りない物を買い出しに来たんだ。


 俺たちの居住スペースに置くベッドにテーブルにイス、それと食器類。それから調理道具なんかも買えるといい。

 それと邪魔にならないサイズのバッグも欲しい。

 それから一番大事な物……マスコの新しい身体となる人形だ。

 とにかく可愛ければ、ぬいぐるみなんかでもいい。

 いつまで土人形の身体じゃ可哀想だからね。

 それから、ジロに頼まれたワラも買って帰らなくちゃ。

 ワラで寝床を作るそうだ。

 もう普通のヌートリアとの差が分からなくなる。




「じゃあ、どこから行こうか?」

「ヤキメン!!」

「却下」


 ブーブー言うタロを無視して、まずは家具屋に行く。

 無駄に装飾してあるような高級な家具じゃなくていいから、適当に見つけた家具屋に入って見るを繰り返す。

 数軒回ったところで、一番初めの家具屋がシンプルで頑丈さを売りしていてイイ感じだったので戻る。


「いらっしゃいませ、さっきも見に来て下さってましたね。ウチの家具はデザインはシンプルですが、主人が一つ一つ丁寧に手作りしておりますので、とっても頑丈ですのよ。寝具も付いておりますしオススメ出来ます」


 店員の接客も悪くなく、この店で俺用のベッドとタロ用の子供用ベッド、6人がけのテーブルとイスのセットを購入した。

 支払いを済ませ、商品を【四次元的なアレ(アイテムポケット)】に仕舞ってから、次に革製品の店に向かい良いバッグはないかと店内を見渡す。


「いらっしゃいませ。バッグをお探しでしたら、こちらのハングリーバイソンの皮で出来たショルダーバッグがお勧めですよ」


 ハングリーバイソンというモンスターの皮は撥水性・保温性・通気性・耐久性に優れた革製品にはとても優れた素材みたいだ。

 何よりもほとんど手入れしなくてもいい事が魅力だ。

 革製品は手入れしないとダメになっちゃうからね。

 この店では、ハングリーバイソンのショルダーバッグと革の小物入れが3つ付いたベルトを購入した。



「さて、あとは食器類か……」

「え〜!オイラお腹空いて死んじゃうよ〜」

「私もお腹空いてきたわね」

「もう一軒、食器だけ見に行ってからお昼にしよう」


 駄々をこねるタロと、そのタロの上で膨れっ面になってるリリルを何とか宥めすかして、食器が売っている雑貨屋に入る。

 食器もベッドなんかと一緒で見た目より度外視だ。

 エンドレスサマーの経営が軌道に乗って経済的に潤ってきてから、専門店の食器と取り替えていけばいい。

 あんまり無駄遣いしすぎてお金がなくなったら、冒険者ギルドの依頼を受けるか他所のダンジョンに潜らないといけなくなっちゃう。

 よっぽどそっちの方が効率的に稼げるかもしれないけど、俺はノンビリ楽しく稼ぎたいからね。



「きゃ〜このお皿可愛い」

「オイラもこのお皿が欲しいぞ」


 なんだかんだと言ってもリリルもタロも食器選びを楽しんでいる。

 リリルは小ぶりのサラダボウル、タロは平皿が気に入った様子だ。

 全員分の食器を購入して、昼食を取る事にした。



「俺はせっかくだから違う物食べてみたいんだけど」

「私はフルーツか食べたいな〜」

「ヤキメン!ヤキメン!」

「はぁ……仕方ないからヤキメン食べてから、違うお店でお茶でもしようか」

「「さんせーい!」」


 ヤキメンの行列に並びながら、ふと思ったんだけど、この町の人もモヤの人もリリル連れてても全然警戒しないよな。

 タロは飼い犬に見えてるんだとしても、リリルはどっからどう見てもピクシーなのに。

 もしかして見えてないのか? ……なわきゃないよな。


「ユウタは本当に物を知らないわね」

「ユウタは見た目通りにバカだからな」


 タロを強制お座りさせてリリルに話の続きを聞く。


「この世界に何人ビーストテイマーやらモンスターテイマーがいると思ってんの? もっと大きな都市に行けばそこら中にモンスター連れた冒険者がいるわよ。それに危険なモンスターは種類によっては都市内は連れ歩けなかったりするから、問題ないわ。人間だって慣れたものよ」


 なるほど、知らなかっただけでそんなシステムがあったのか。

 でも危険なモンスターてフェンリルはどうなんだ?


「フェンリルをテイム出来る人間なんているわけないでしょ!」

「オイラだってテイムされてるわけじゃないからな! 飼われてます!」


 それはそれでどうなんだタロよ……胸を張ってるけどさ。

 確かに忘れがちだけど、この『まるん』としたモフモフは神話にも謳われる伝説の狼だったわ。

 さすがにフェンリルはテイムしてる人はいないのかぁ……運が良かったな。

 この世界に来てから運がいいのもチート能力の一環なのかな?

 ……うん? この世界?

 俺、この世界の名前まだ知らないわ。

 世界どころか国の名前すら知らないよ。

 リリル大先生に聞いてみるか。


「アンタどうやって今まで生きてきたのよ?」

「アレ? 言ってなかったっけ!? 俺違う世界の出身なんだよね」

「うわ〜ん。ユウタが壊れた〜」


 騒ぐタロをお座りさせてから、2人に俺の身に起きた事を包み隠さず話した。


「にわかには信じられないけど……ユウタっぽいっちゃユウタっぽいわね」

「オイラは信じるぞ! ユウタは強いからな!」


 2人が信じてくれる事が、何よりも嬉しい。

 国や世界についてはヤキメンを買った後に話す事になった。




「らっしゃい! また来てくれたね!」


 へ? 


「またまたそんな素っ頓狂な顔して。ピクシーと狼連れたお客さんはインパクトがあったからね。今日も一つネギ抜きで良いかい?」


 このお姉さんは、俺たちの事を覚えててくれたどころが、注文の内容まで覚えてくれていた。

 お姉さんにとっては何でもない事なんどろうけど、何か嬉しくなるよね。

 ヤキメンが出来上がるのを待っている間に、オススメの店はないか聞いてみる。


「人形の店? ならマルチナって私の友達がやってる店がオススメだよ。どんな人形が好みか知らないけど、色々あるはずさ。町の東の外れにあるから良かったら行ってみて。屋台のアイラの紹介って言えば悪くはしないはずだよ」

「ありがとうアイラさん。あとで行ってみます」


 ヤキメンを受け取り、アイラさんにお礼を言って別れる。




 店員さんに持ち込みを断ってからカフェに入り、席に着いた。

 俺はアイスティーでタロはミルク、リリルはフルーツの盛り合わせを頼んだ。

 タロのミルクは買ったばかりの皿に入れてもらうようお願いした。

 注文の品が届いて、各々好きな物に手を伸ばしながら話の続きだ。


「やっぱりこの絡みつく肉の旨味がたまんないね」

「お座り!!」

「……はじめるわよ? まず今いる国がビシエイド王国ね。ここが大体大陸の中央にあるのね。だから海が無いこの国にエンドレスサマーはピッタリのリゾートなのよ」

「偶然だけどドンピシャだったのか……逆に海が自慢の国とかじゃなくて良かった」

「あと近隣の国は……」


 リリルの説明を要約すると、


 ・今いるのが大陸のほぼ中央に位置する海の無い国、ビシエイド王国

 ・大陸の北部一帯を占めるドランゴニア帝国。 基本的に国境の門を閉ざしているらしい。

 ・大陸南部中央にある小さいがエルフや妖精が住む自然が豊かな国エルフィラ。

 ・大陸の南西部にある商業都市国家グローブ。

 ・大陸南東部にあるアレキサンドライト神聖国。

 ・アレキサンドライト神聖国と海を挟んで睨み合っているのが魔族の治める国セト。

 ・商業都市国家グローブから海を越えて広がる大陸がダンジョン国家デロリアン。ここはダンジョンだらけな国でとても有名であり、冒険者や商人の憧れの国でもあるらしい。


 他にも小さい国は無数にあるが、主要な国は以上みたいだ。


「勉強になりますリリル先生!」

「精進なさい」


 今はエンドレスサマーを軌道に乗せる事しか考えられないけど、いつかは他所の国に行ったり違うダンジョンを攻略しに行ったりもするのかな。

 いつかリリルやタロと行けたら良いな。




 それからお茶を済ませて、屋台のアイラさんに紹介してもらったマルチナさんの人形店に向かった。


「ここか……なんか入りづらい雰囲気の店構えだな……」


 町の東の外れにヒッソリと佇む人形店。

 何か少しだけホラーな雰囲気を漂わせていて何となく入りづらい。

 リリルとタロも緊張しているみたいだ。

 だがアイラさんの紹介なので変な店ではないだろうし、覚悟を決めてドアに手を掛けた。


「こんにちは〜」


「いら…し…い」


 声ちっちゃ!

 カウンターに座り人形を作っている店主と思しき女性が、アイラさんの友人のマルチナさんなのだろう。

 ゴスロリって言うのか? そんな中世ヨーロッパにいそうな格好をした人だ。

 アイラさんもそうなんだけど、この世界の女性は綺麗な人が多い。

 それだけでも転生が転移になってしまったのも少しは報われる。


「あの〜、ヤキメン屋台のアイラさんに紹介してもらって来たんですけど……」


 そう伝えると、マルチナさんと思われる生気のない目がカッと見開いた。


「やだ〜アイラの紹介なら早く言ってよ! 雰囲気作っちゃったじゃない!」

「へ!?」


 アイラさんの紹介と告げたら、急にテンションが上がったぞ。

 急な変貌にリリルもタロも戸惑っている。

 話を聞いてみると、開店したての頃にアゲアゲな性格が人形店に向かないとお客に言われてから、初見のお客には雰囲気を作って接客をしていたそうだ。

 俺に言わせれば、人形店でも話しやすい方が買いやすいんだけどな。


「で? 今日はどんな用事? そりゃ人形見に来たに決まってるか!? 笑える〜」


 テンションたけー。


「ええっと……可愛い人形が欲しくてですね……」

「それでウチ来てくれたの!? ありがと〜☆ 自慢の可愛い子ばっかだから気の済むまで見てって」

「あ……はい」

「や〜ん。 この犬とピクシー超可愛いじゃ〜ん! デッサンさせて〜」


 それで静かになってくれるのならと、2人を生贄に捧げる。

 さて、本題の人形探しだ。

 さすが商売をするアイラさんが、お客である俺に紹介するだけあって本格的な人形が揃っている。

 友人の店だから紹介したという訳ではなさそうだ。


 だけど、この店の人形はほとんどが西洋風の人形ばかりだな。

 マスコが操って動いているのを想像すると、西洋人形は中々ホラーな気がする。

 それよりもマルチナさんにオーダーしちゃった方がいいんじゃね?



「あの〜マルチナさん。人形のオーダーメイドって出来ます?」

「もっちろん出来るわよ!」

「人間サイズでお願いしたいんですけど……マネキンみたいな」

「ヤ〜ダ〜! 変わった趣味持ってるわね〜!」


 なんか激しく勘違いされてる気がするけど、気にせず話を進める。

 オーダーメイドという事で、俺はマルチナさんにアレコレ注文をつけてオーダーした。

 そして陳列されている人形の中から、出来るだけ動いても怖くなさそうな人形を一体買う事にした。

 人形の代金とオーダーメイドの手付金を払う。


「ちょっと完成まで時間もらうけど〜、いついつまでに出来るとは言えないわね」

「ちょくちょくアルモンティアに買い出しに来るんで、たまに顔出します。急ぎってわけじゃないんで」

「じゃあ頑張って作るね〜!」


 マルチナさんの店を人形を抱えて出る。

 リリルとタロがなんだかゲッソリしている気がする。


「「疲れた〜」」



 最後に急いで調理器具を見に行く。

 魔道具屋で本当はオーブン付きのコンロを買いたかったんだけど高すぎて断念。

 仕方なく火の魔石内蔵の簡易コンロを購入した。

 ガス缶で使うカセットコンロみたいな物だね。

 それから金物屋に走りナイフや鍋、フライパン等を買って買い物終了。

 リリルとタロが疲れ切ってグッタリしてるから、甘い物を食べてから帰るとするか。


 ……何か買い忘れてる気がするけど。



『ユウタ様……何と言っていいのか……本当に嬉しいです』


 エンドレスサマーに戻り、マスコに新しい身体となる西洋人形をプレゼントしたら、本当に喜んでくれた。

 自分の見た目を気にするマスターコアってのも不思議な存在だけど、仲間は悲しんでるより喜んでいる姿を見ていたい。

 マルチナに人形をオーダーしてきた事はマスコには秘密にしている。

 プレゼントするのが今から楽しみになる。




「……で、俺様のワラは?」




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