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第一章7  〈ジラルディーノ〉

 

「いやいや、サハギンはないでしょう」

『水陸両用で残虐な性格も、うってつけだと思ったのですが……』

「マスコは性能面しか見ないからダメなのよ。リゾートなんだからキモイのはNG」

『……なるほど……では私もNGですか……?』

「へ? いや……マスコは大丈夫よ……キモくないから、ね? ユウタ?」


 俺を巻き込むなよ。

 マスコがリリルに言われて、明らかに落ち込んじゃってるし。

 AIみたいな存在なのに感情があるんだなぁ。


「オイラはイルカがいいと思うんだよねぇ〜。乗れるから!」

「タロ! お座り!」


 お座り言われてお座りしちゃうフェンリルもどうかと思うけど、今回ばかりはタロの空気の読めなさに救われた。

 だけどマスコも落ち込んでるし、リリルの言った事も間違いじゃない。

 お客で賑わうビーチに土人形のマスコがいるのもシュール過ぎるからね。

 マスコのアップデートも早急に行わねばならない課題の一つだな。



 そして俺たちが今何してるのかと言うと、ダンジョンマスターである俺が何かと外出する事が多いから、不在時に代理で守護者を任せられるモンスターを選んでいるのだけど、これもまた中々に難航している。


「サメのモンスターとかどう?」

「海のリゾートでサメはだめでしょ!?」

「カッパ!」

「海水無理っぽくね?」

『もうこの際ランダム召喚してみます?』

「なにそれそんなの出来るの!?」

『本来はないですけど、やってやれない事はありません』

 マスコの提案でランダム召喚を試す事になった。

 どのモンスターを召喚するか決めずに、適当に魔力を込めて召喚してみるらしい。



『ではユウタ様どうぞ』


 この際だから、ありったけの魔力を込めて召喚してみてやろうか。

 コントロールパネルに触れた右手からガンガン魔力が吸われてゆく。

 これ以上吸われたら倒れそうってところで右手を離した。


『……来ます』




『……誰? この私を喚ぶのは?』


「あ……俺です」

「なんか凄いの来ちゃったわね」

「イルカじゃなかった〜」


 そこに召喚されてきたの()()()()()?は、逆巻く水をその身に纏い圧倒的な存在感がありながら、それでいて全てを優しく包み込むような気配を漂わせている存在だ。

 ……なんかモンスターてより美しい水の女神様みたいのが出てきちゃったんだけど……。


『私を人間の魔力で呼び出した……と? それにこの海は……ダンジョン? 誰でも結構です、説明を』


『では代表して私が説明させていただきます』


 マスコが要点をかいつまんで、召喚された女性型モンスターに状況を説明してくれた。


『……なるほど、人間ユウタよ……面白い試みですね。私の名前はウンディーネ、水を司る精霊です。流石にダンジョンの守護者になるわけには参りませんが、この私を召喚出来るほどの魔力を持つ者との出会いと、新しい試みに海を選んでくれたお礼に、私のペットを仕わせましょう』


 そう言ってウンディーネ様は身に纏っていた水を残して消えていった。

 それにしてもペットてなんなんだろう?


「は〜ビックリした」

「オイラ、シルフィ以外の精霊初めて見た」

「私なんて精霊自体初めてよ」

『ユウタ様の注入した魔力の量が桁違いだった為に精霊が召喚されてしまったようです。それでもあり得ない事だとは思いますが……』


 あちゃ〜、調子に乗って魔力込めすぎたってことか。



「なんか来るよ!」


 しばらく待っているとタロが何かを察知した。

 そしてタロが見ている先に水色の魔法陣が浮かび上がる。

 ウンディーネ様のペットが転移してくるのだろう。



「ウンディーネ様に頼まれて、仕方なくこの俺様が来てやったぜ」

「ヌートリア?」

「ヌートリアームズ! この黒光りする武装が見えねーのか? 目腐ってんのか!?」


 うわ、なんか口悪い奴来ちゃったよ。

 しかもどこをどう見てもヌートリアだよ……地元の川でよく見かけたネズミのデカいヤツだよ。

 そのヌートリアが両腕に銃、背中に機関砲みたいなのを装備しているけど、ただヌートリアが武装しただけな気もするが……。


「このネズミがウンディーネ様のペットなの?」

「ものすごく弱そうだぞ!」

『ヌートリアームズ? そんなモンスターはデータにないのですが……』


「オマエら失礼過ぎだろ!? ウンディーネ様が起こした奇跡によって生まれた奇跡のヌートリア……それがこの俺、ヌートリアームズのジラルディーノ様だ!」


 ジラルディーノて……バカにしたらダメだけど、随分見た目と名前のギャップがあるヌートリアだな。


「……で、どうする守護者」

「あんな名前の長いネズミじゃダメよね」

「オイラが守護者やってやろうか!?」

『タロ様はユウタ様との外出が多いので不向きです』


 俺を含めたエンドレスサマーチームの心が一つになってる。


「オイオイ兄ちゃん達……ずいぶんご機嫌な無視の仕方してくれるじゃねえか!?」


「だって……ねえ?」

「モフモフ兼マスコット枠はタロがいるし……」

『流石にデータにないモンスターは……』

「オマケに弱そうだしな!」


「よし分かった……帰る!」


 悪ノリが過ぎてヌートリアームズのジラルディーノが拗ねちゃったよ。


「悪い悪い。でもヌートリアって海水イケるの?淡水のイメージが強いんだけど」

「オマエはアレか? 馬鹿なのか!? 水の精霊の眷属である俺様が海水がダメなわけね〜だろ!? 陸も平気だし潜水だって得意だぞ?」


「じゃあ弱さだけがネックね〜」

「オイコラ、ピクシー! 俺様が弱いだと? そこいらのモンスターに負けたりしないぜ?」


 もう埒が明かないので、タロと模擬戦をしてもらう事にした。




「相手を殺すような攻撃は禁止だぞ? じゃあ初め!」


 俺の合図でタロとジラルディーノの模擬戦が開始された。

 サイズダウンしているとは言え、フェンリルのタロの圧勝かと思ったけど、ジラルディーノもなかなか凄い。

 高速で動くタロに対して、動きを予測しているのか行く先々に武装から魔力弾を飛ばしている。

 もしかして、ウンディーネ様はかなり強いモンスターを寄越してくれたのでは。


「オーケーオーケー。ジラルディーノの強さは十分分かった。タロに対してアレだけやれれば、そこら辺の人間やモンスターに遅れはとらないよな」


 意外に善戦されて肩を落とすタロとは対照的に、ジラルディーノはドヤ顔がウザイ。

 ちょっとドヤ顔がウザすぎるから、からかってやるか。


「強いのはわかったけど、守護者になってもらうには問題が一つあるな〜」

「問題ってなんだよ!?」

「名前が長すぎる!」

「!?」

「よって今からお前を、ジラルディーノを略してジロと呼ぶことにする! これは決定なので皆もそう呼ぶように!」

「オイ兄ちゃん!」

『兄ちゃんではありません。当ダンジョンのマスター、ユウタ様です。そしてこちらがピクシーのリリル様とフェンリルのタロ様です。そして私がマスターコアのマスコです』

「タロとジロは特に仲良くする様に」

「何で?」

「タロとジロは強い絆で結ばれるべきだからね」

「ジロ……このジラルディーノ様がジロ……」


 この後、ジロから凄まじい抗議を延々と受け続けたが、鉄の意思で抗議を退けた。

 それからマスコに俺不在時の代理守護者をジロで登録してもらい、ジロには水陸両方からのエンドレスサマーの警護に当たってもらう事にした。


 〈スキル【パートナー契約(グッドフレンズ)】を適用します〉


 ジロが正式に仲間になったって事かな?




「おっと忘れてたぜ」


 ジロにエンドレスサマーを案内していると、そのジロがウンディーネ様からアイテムを預かって来ていたらしい。


 そう言ってジロが取り出したのは虹色のサンゴで出来たブレスレットだ。

 キラキラと見る角度によって色を変えるそのブレスレットを、ジロがウンディーネ様からの伝言と一緒に渡してくれた。


『人間ユウタよ……私と其方は、其方の魔力によって召喚されたという縁で結ばれた。そして我が眷属ジラルディーノが仕える主人となった今、其方に水の加護を授ける。この虹色のサンゴが火属性の攻撃から其方を護り、また召喚魔法により水の眷属達を召喚する触媒となる……大切にするように』



 ありがたい事に水の精霊ウンディーネ様が加護を与えてくれるみたいだ。

 ダンジョンをリゾートにするのに海を選んだ事を気に入ってくれたみたい。

 俺たち地球の人間からしたら、リゾートって言ったら大抵の人が海を連想すると思うんだけどな。

 まあ、偶々でも何でも海のリゾートを経営するぞって時に、水の精霊様が加護を与えてくれるなんて縁起が良すぎるよね。


 俺はジロから受け取った虹色のブレスレットを大切にありがたく受け取り、左手首につけた。



 〈スキル【召喚魔法】が使用可能になりました〉


 例の声が頭に響き、【操作盤(コンソール)】でも確認すると確かに使用可能になっていた。

 て事は、召喚魔法は加護や契約がないと使えないて事なのか。

 いつか他の属性の召喚魔法も使えるようになるのかな。




 ────────────────────────


 手に入れたアイテム


 ・虹色のサンゴのブレスレット



 使用可能になったスキル


 ・【パートナー契約(グッドフレンズ)

 ・【召喚魔法】(水属性のみ)



 仲間になったモンスター


 ・ヌートリアームズのジロ(ジラルディーノ)

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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