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第二章12  〈アルファベット部隊〉

 

 ────バァン!!


 けたたましい音と共にタロが店に突入する。

 仕方なしにタロを追いかけて俺も突入する。


 だがタロよ……ハンドサインを何も決めてないのにやった俺も悪いけど、何となく雰囲気で分かるじゃん?

 せっかく敵に見つかって無いのに音立てて突入するか?

 隠密行動が台無しだよ。



「セルジオー! 出てこーい!」


 夜中に突入して来た侵入者が、そんな風に呼んだって出て来るわけないだろ!

 これで出てきたら、余程のバカかただのバカだよ。



「こんな時間に何者だ!? 営業時間外なのがわからないのか!?」


 あ、セルジオ出て来た……余程のバカかただのバカだ。


「ジーとトミーとかいう雑魚をモヤに送り込んだのはお前だな?」


「はて? 何のことやら……」


「とぼけたって無駄ですよ。アンタが雇って寄越したチンピラなら玄関脇でグッスリ寝てんぞ」


「チ……役立たずめ……だがまぁいい。奴らなど所詮は捨て駒。他にもまだ駒ならあるんだからな!! 皆の者……出合え出合え!」


 時代劇かよ。

 さすがファンタジー版越後屋だな。


 セルジオの掛け声と共に奥の部屋からゾロゾロと用心棒やチンピラみたいなのがたくさん出て来た。

 前に来た時にいた美人秘書っぽい人もいる。

 あの美人秘書さんも護衛かなんかだったのか。



「くくく……バカな侵入者め、この人数を相手に出来るかな?」

「ここに侵入者がいるって事はGの奴失敗したのか? セルジオ様に拾ってもらいGの位まで与えられたと言うのに……」


 なんだなんだ?

 ジーってGだったの? 名前じゃなかったんだ。

 て事はここにいる奴らは残りのアルファベットか!?

 序列はどっちが上なんだろ?

 Aかな? それともZかな?

 AからZまでのセルジオの私設部隊ってとこか?


「ユウタ、オイラがやっていい?」

「いや……ここは俺がやる。サトゥルさんの恨みを晴らしてあげたいからね。……てか名前を呼ぶんじゃねーよ!」


 カララララ────。

 神剣エクスカリバルを鞘から抜く……なんだかすごく久しぶりに抜く気がする。

 すると刀身に刻まれている字がぼんやりと光っているように見えた。


 〈Si Vis Pacem, Para Bellum〉


 前は読めなかったのに今はスキル【言語理解(オールリンガル)】のおかげでちゃんと意味が判る。


 〈汝平和を欲さば、戦への備えをせよ〉


 つまり平和でいたければ、戦う準備をしておけって事か……深い……深いが残念ながら今から戦うところなんだよな。

 まあ、平和でいたければ、戦う事も必要って事にしておいて、肝に銘じておくとしよう。

 さて……、敵さんはどう動くかな?



「オイオイ、Wよ……やっこさんこの人数とヤルつもりだぜ?」

「ふふ……そうねT。ボウヤは自分が英雄か何かと勘違いしているみたいね」

「AからFはGの仇でも討ってやったらどうだ?」

「チッ……Jの野郎、調子に乗りやがって」


 いやいやいやいや、全く分からん!

 とりあえず美人秘書風のお姉さんがWって事と、序列がZに向かうほど高いって事しか分からん!

 JだのTだのまどろっこしい。

 ただ外で転がってるGより序列が上の奴が、え〜とABCDEFG……WXYZだから19人。

 20人近くいるってことか……まあ何とかなるっしょ。



「あの〜……もう面倒なんで全員で一気に来てください」


「ほう? 面白い事を言う奴だな」

「Z!」

「お望み通り全員でやってやるよ」

「お前たち万が一取り逃がすような事があったら、わかっているな?」

「わかってるさオヤッサン。お前ら、やるぞ」


 Zと呼ばれる奴の一言で全員が戦闘態勢に入った。



「タロ。セルジオを絶対逃すなよ」

「タロ頭巾に失敗はないぞ」

「よし、行くぞ」

「散!」


 ……本当にこの狼は……何が「散!」だよ。


 タロに一呼吸遅れて、俺も敵に突っ込んだ。



「な!? 奴ら消えたぞ!?」

「各自索敵!」

「ぐわっ!?」

「ぬわぁ!」


「な……何が起こっておるんだ。私の最強の私設部隊が……」


「ユウタに一方的に蹂躙されてるんだぞ」


「ヒッ……」


「動いちゃダメだぞ。動いたら電撃でビリビリさせちゃうぞ」




 タロに「散!」って言われた後、とりあえず近くにいる奴から峰打ちで倒してゆく。

 ジョブスキル【剣を奏でる者(ソードマスター)】のお陰で、Gを除いたアルファベット部隊も難なく倒せてしまう。


 ハッキリ言って弱い。

 神様チートのお陰で俺が強いのか、単にアルファベット部隊が弱いだけなのかは分からないが、一人で楽勝で制圧出来そうだ。

 神様、またまたサンキューです!


 すると脳裏にまたもやサムズアップする神様が浮かんだ気がするが、きっと気のせいだろう。



 自分がこの世界の人間でどれくらい強いのか分からないが、アルファベット部隊はアッサリと全員気絶させる事に成功した。


「ふう……一先ずこれで静かになるな」

「ユウタ、中々の動きだったぞ」


「ユウタ? さっきから引っかかっていたが、なるほどユウタか。あの時の生意気な小僧本人が乗り込んでくるとは……」


 どうやらセルジオに正体がバレたようだ。


「お前たち、この儂にこんな事をしてタダで済むと思っておるのか?」


「アンタこそ、卑怯にもサトゥルさんに嫌がらせしやがって……俺を怒らせるとどうなるのか分かってるのか?」


「クク……お前のような新米冒険者を怒らせたからと言って何が出来るのだ」


「アンタのお粗末な私設部隊を一人で制圧するくらいは楽勝だったけど?」


「く……私のバックには貴族の中でも有力なお方が付いているんだぞ!? お前達はそのお方も敵に回した事になるのがいいのか!?」


「上等上等……本当にそんな有力なお方がバックについてるんなら、俺の周りの人間に嫌がらせなんてせずに、直接俺を狙いに来いや」


 そう言って俺はエクスカリバルをセルジオの首元に突き付けた。


「ひ、ひぃぃぃ」


 実際に傷つけるつもりはないけど、これくらいの脅しをかけておかないと、この手の奴は反省しないからね。


「わかったのか? 次はオイラが喉元に噛みついちゃうぞ」


「わ、わかった。この件からは手を引く……もうモヤの換金所には絶対手出ししたりしない……誰にも君達の事を言ったりもしない。だから命だけは……」


 ま、こんなところかな。


「せいぜい今の言葉を忘れない事だね。じゃあタロ、帰るか」

「だな〜。夜じゃなけりゃヤキメン食ってから帰りたいとこだけどな」

「また今度買ってやるって」

「約束だぞ」


「ま、待ってくれ!」


 帰ろうとしたらセルジオに呼び止められた。


「なに?」


「ずっと気になってたんだが、その連れの生き物は何なんだ!?」


 そりゃそうか。

 知らないセルジオからしたら、頭巾を被って人間の言葉を話して、二足歩行する獣っぽい生き物としか分からないもんな。


「正義の味方タロ頭巾さ」



 こうしてサトゥルさんに対する嫌がらせをしていたセルジオの成敗は成功した。

 あとはエンドレスサマーに戻ってサトゥルさんに事の顚末を話して終了だな。

 帰りがけに玄関脇で気絶しているGとトミーの拘束を解いてから帰るのも忘れない。




「────と、いう事でもう大丈夫です。俺の不用意な一言で本っ当にご迷惑をお掛けしました」


 俺は頭が砂浜にめり込むくらいの土下座をサトゥルさんにしていた。


「そんなっ……頭を上げて下さい。こういう商売をしていたら少なからずトラブルは付いて回るので……それにこんな素敵な場所が村の近くにあるなんて思いもよりませんでしたよ」

「こんな場所で良ければいつでも遊びに来てください」

「そうよ! せっかく仲良くなれたんだしね」

「そうだな。サトゥルならいつでも歓迎だぜ」

『またのご来訪を心よりお待ちしております』


 俺とタロがいない間に、サトゥルさんはリリル達とずいぶん打ち解けたようだ。


「みんなにもオイラの活躍見せてあげたかったな〜」

「はいはい」

「どうせ馬車代わりだろ!?」

「なんだと〜!?」

『フフフ』


「ユウタさん、ここは本当に素敵な場所ですね。人間もモンスターも関係ない……夢のような場所ですよ! 私で良ければ何でも力になりますので、いつでも頼って下さい」

「ありがとうございます、その時はお願いしますね。じゃあ明るくなってくる頃合いだしタロ! 送っていくぞ〜」

「は〜い」

「ほら見ろ馬車代わりだ!」

「今回は私も着いていくからね!」

「じゃあマスコ、ジロ、すぐ戻るけど行ってきます」

「おう」

『いってらっしゃい』



 この後サトゥルさんを無事にモヤに送り届けて、エンドレスサマーに戻ってから、サトゥルさんにアイテムを換金してもらっていない事に気付いたけど、夜通し動いてたから眠すぎて、俺とタロは爆睡した。



次回はジョルジュ視点の回になります。

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