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第二章11  〈アバババババ、シビビビビビ〉

 

「ひ、ひぃぃぃ……命だけは、命だけは勘弁してくれぇぇ」

「お前ら一体何者だ! 2人揃っておかしな格好しやがって!」


「見てわからないのか? タロ頭巾だぞ!」

「俺達が何者かなんて、お前らに言う必要ない。お前らこそ誰に雇われてここにいるんだ?」


「雇われてだと? ただ野宿していただけなのに? クク、そういうことか……俺達が簡単に吐くとでも?」


 しまった。

 サトゥルさんに繋がっているのが感づかれてしまった。


「気づかれちゃったみたいだから隠さないけど、俺達も仲間狙われて、そこそこ怒ってるんだよ! タロ!」

「オッケー! ちょっと痺れてみる?」


「アバババババ」

「シビビビビビ」


「どうした? 骨まで透けて見えそうだぞ?」


 タロ……それは完全に悪役のセリフだよ。

 しかもどんだけ電撃喰らわせても、アニメや漫画みたいに骨は透けないからね!?

 コイツのこういう知識はどこから来てるんだほんとうに。



「タロ」


 俺の合図で電撃を止める。


「吐く気になったか?」


「く……誰が!」

「兄貴……俺もう……」

「バカヤロウ! 根性見せやがれ! ただのチンピラだった俺たちを拾ったくれたオヤッサンに報いる為じゃねーか!」

「って言ってもオヤッサンは俺たちの事いいように利用してるだけじゃ……」

「トミーーー!! 次そんな事言ってみろ! 俺がお前をぶっ殺すぞ!」

「どうせ任務を失敗した俺たちは処分……アババババ」


「長いぞ」


 タロ、お前って奴は本当に……。

 でもこの流れだとトミーを攻めた方が良さそうだ。


「ハァハァ……」

「兄貴〜……」

「風魔法エアスラ……シビビビビ」ガクッ。

「よくも兄貴を!」


「気絶しただけだぞ」

「本当に死にたくなけりゃ依頼主を吐くんだな。誰の依頼でサトゥルさんの店に嫌がらせしてるんだ?」

「ペッ」


 意外と一筋縄ではいかないな。

 漫画や映画だと、こんな感じで尋問すれば聞き出せるはずなんだけど……。

 仕方ない、アプローチを変えるか。


「タロ。元の姿で軽ーく脅してあげな」

「わかったぞ。へーんしん……とう!」


 掛け声と共に、顔を隠していた布が空を舞い、満月を背景にジャンプをしたタロが、空中でフルサイズに戻った。

 知らないトミーからしたら、急にバカでかい狼が現れたように見えただろう。



『いい加減吐かぬか人間……どうあっても吐かぬと言うなら、我が牙でトドメをさしてくれよう』


 こっわ。

 やっぱり元の大きさに戻ったタロの存在感は半端ない。

 仲間の俺ですらプレッシャーを感じるくらいの存在感だ。



「フェ……フェンリル……!? 何でこんな場所に!?」


「そうなんです本物なんです。あなた達が無謀にも魔法で攻撃を仕掛けていたのは天狼属最上位種フェンリルです」

『して小僧よ……吐く気になったか!?』


「は……吐きますとも喋りますとも! セルジオです。セルジオのオヤッサンの命令で、あの換金所に嫌がらせしてました」


「やっぱりそうか……」


 わかり切っていた事だけど、当事者の俺に仕掛けるならまだしもサトゥルさんに嫌がらせするなんて……どうしてくれようか。


『ユウタよ……この人間共はどうするんだ?』

「うーん……どうしよう。でもセルジオのジジイに突っ返してやりたよな〜。暴れないように縛って拘束したいけど適当な紐とかないしなぁ」

『念のために言っておくが、頭巾の布は使ってはならぬぞ』

「……」


 なんか適当な拘束魔法とかないのか?

 タロに聞いてみ……。


  〈土属性魔法バインドグロウを提案します〉


 久しぶりに頭の中を例の音声と文字が流れた。

 土魔法バインドグロウか……例の声が推奨するくらいだから、拘束に適した魔法なんだろう。

 使ってみるとするか。


「土魔法バインドグロウ」

『ぬ?』


 俺の声と共に地面から植物が生えてきて、凄いスピードで成長する。

 そして伸びた植物がジーとトミーを拘束する様に巻き付いて身動きが取れない状態にしていた。


「なんだコレ〜!? 解いてくれぇ〜」


『ユウタよ……今の魔法は何だ? この我も見た事がない魔法だったが……』

「土魔法バインドグロウだそうです」

『だそうですとは何だ、だそうですとは』

「いや〜それが俺にも良く分からないんだよね。俺の【黒幕(フィクサー)】ってスキルなんだけど、色々サポートしてくれるスキルがありまして……タロに拘束出来る魔法ないか聞こうと思ったら、スキルが提案して来たんだよね」

『何だその無茶苦茶なスキルは……本当にデタラメだなお前は』

「そう言われましても……」


 本当に自分でも把握しきれていないからタチが悪い。

黒幕(フィクサー)】については、サポートしてくれている例の文字と音声なのは判っているけど、スキルの説明に????があったり未知数な部分も多いんだよな。

 名前も決して印象の良い字面ではないし……まあ、有能なスキルではあると思うんだけど。

 ま、それはさておきジーとトミーの奴をセルジオのジジイに返却しに行きますかね。



「タロ、トミーを少し静かにさせたらアルモンティアに行くぞ」

『あのタヌキジジイを退治しに行くのだな? 面白い』

「うん。もう少し夜が更けたら出発だ」


 ギャーギャーと騒ぐトミーを、タロがビリビリっと痺れさせて静かにしてもらって、少し時間を待ってから2人をタロの背に乗せてアルモンティアに向かう。

 ここからアルモンティアまでなら、いつもよりもタロにゆっくり走ってもらったとしても30分強で着くだろう。

 急いで2人を落っことしてしまったらイケナイからね。



 道中ジーが目を覚ましたが、拘束されている自分の置かれている状況が理解出来なかったようだ。

 とにかく拘束を解こうと風魔法を使おうとしてたんだけど、このバインドグロウは拘束している相手の魔力を吸っているらしく、上手く魔法が使えないでいた。

 暴れてタロの背中から落ちたら危ないから、もう一度タロに気絶させてもらう。


「アバババババ」


 俺も雷魔法使えるんどけど、タロみたいに上手に気絶させる自信はない。




 アルモンティアに着くと、流石に日付も変わろうかという時間なだけあって、町は昼間とは違い静まり返っている。

 タロが人目につくと騒ぎになるかと心配していたが、これだけ人通りがなければ、何の問題も無さそうだ。

 ただセルジオの店がある場所が、冒険者ギルドと商人ギルドに挟まれるような場所にあるのだけがネックだ。

 時間的に商人ギルドはまだしも、冒険者ギルドは酒場が併設されているタイプだったから、この時間でも酒を飲んでいる冒険者も多いだろう。

 そんな人達にタロを見られたら大騒ぎになってしまう。

 騒ぎになるだけならまだしも、最悪取り囲まれて攻撃されてしまうかもしれない。



 人目が無いのを確認しながら、セルジオの換金所に近づいて行く。

 タロがこのままのサイズで行くのは、さすがに危険なのでデフォルメサイズになってもらい、顔に布を巻き直しタロ頭巾にならせる。

 本人は相も変わらず乗り気だ。



「この2人どうやって運ぼうか……それとも一旦ここに置いておくか……」

「面倒だから、オイラが風魔法で運ぶぞ」


 タロはそう言うと、二人を魔法で浮かせた。

 浮いた2人はコロコロと空中で転がっている。


 どういう魔法の使い方してんだ、これ?


「いつもより多めに回してるぞ」


 なるほど……子供の頃に正月によくテレビで見かけたやつだ。

 和傘の上を升とかボールとかを転がすやつの要領でやってんのね。

 いや、自分で言いながらもどうやってんのか皆目見当もつかないけどな。



 タロが2人を浮かしたまま移動して、なんとかセルジオのアイテム換金所まで辿り着いた。

 ジーとトミーの2人を拘束したままの状態で玄関脇に寝かせ、俺とタロは玄関の両サイドに散る。


 俺はこういう状況でやってみたかった事がある。

 映画や海外ドラマなんかで軍隊や警察がやってるハンドサインだ。


 見様見真似でタロ頭巾にハンドサインを送る。

 はじめにハンドサインを決めていないんだから、何の意味もない行為だが、タロ頭巾もその気になって俺にハンドサインを送り返してくる。

 まあこういうのって雰囲気重視だからな。


 俺が送ったハンドサインは、

(静かに侵入してセルジオを押さえる)だったのだが、やはりタロには上手く伝わっていなかった様だ。

 タロは玄関の扉を派手に開けて突入して行ってしまった。


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