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第二章5  〈依頼〉

 

「お願い?」


 そう、お願いがある。

 この冒険者のお兄さん達に、エンドレスサマーの宣伝をして欲しいんだ。

 現時点でのエンドレスサマーは、ダンジョン攻略に来た冒険者がターゲットなんだけど、それだと今みたいに誤解を解くところから始めなければならない。

 毎回それでは、必要な労力が計り知れないんだよね。


 だから、ここには攻略するダンジョンなんて無くて、いつでも遊べる常夏のリゾートがあるって事を広めて欲しいんだよね。

 それと施設を充実させる為に、エンドレスサマーに出店したい人も探してほしいんだよね。



 だけど、その前に……。


「その前に自己紹介させてください。まずこのピクシーの女の子がリリルです。可愛いでしょ!?」

「リリルよ。よろしくね!」



「……で、次が……狼のタロです。」

「オイラがマスコットのタロだぞ! モフって良し!!」


 ……タロよ……自分でマスコットて……オマエはフェンリルとしてそれでいいのか!?

 種族も狼で間違ってないよね!?

 タロの正体がフェンリルなのはまだ伏せておいた方がいい気がするからね。 



「それから……ヌートリアのジラルディーノです。ジロって呼んでやってください」

「オメーは本当に……奇跡の固有種ヌートリアームズだって言ってんだろ! ぶん殴るぞ!! 俺様がウンディーネ様が遣わしたヌートリアームズのジラルディーノ様だ! よろしくな」

「いや、ジロです」



「最後にこの人形ですが、マスコです。人形に憑依型のモンスターが取り憑いてます。憑依型って言っても命のある物には憑依出来ないんで安心してください」

『マスコです。ユウタ様の次に当ダンジョンに詳しいと思います。なんでもお尋ね下さい』


 流石にマスコには冒険者の皆さんの顔が多少引きつっている。

 最後は俺だ。



「で、俺がダンジョンマスターのユウタです。人間で一応は剣士になるのかな? でも出来れば誰とも戦いたくはないんで、そこんところよろしくです」



「ふふ……丁寧にありがとう、レナよ、私も剣士よ。これでもちょっとは名が売れてるのよ」

「俺はバンチ、大盾でタンク役をやってる。よろしくな!」

「……スナイパーのジョルジュだ」

「でも本当に人間がマスターやってるのね。信じられないわ」

「モンスターと言葉が交わせるってのも、中々慣れないけど凄いスキルだよ」


「……で? お願いって何だ?」


 ジョルジュさんは、一歩引いて冷静に状況を見極めようとしている感じだ。



「えっと、ここがダンジョンを改造した海型リゾートだってのは話したと思うんですけど……」


 レナさんとバンチさんが頷いて同意してくれる。

 ジョルジュさんは俺の目から視線を逸らさない。


「皆さんはダンジョンがマスターの特性が色濃く反映されるのはご存知ですよね?」


「……続けろ」


「それはマスターが自分好みにダンジョンをイジるからなんですけど……出来れば俺は冒険者ギルドの依頼をこなしたり、ダンジョンに潜ってトレジャーハントしたりとかってしたくないんですよ。それで運良くマスターになれたダンジョンをリゾートに改造したんです、ノンビリとお金を稼ごうと思って」


「儲かる見込みがあるの?」


「わかりません。でも命を賭けるリスクは出来るだけ避けたいんですよね」


 一回死んじゃってるから、もう死にたくないんです。


「実際は今のエンドレスサマーじゃお金を稼ぐなんて夢のまた夢でしょう。ですからココをリゾートとして発展させて行きたいんです」


 それには経営サイドも客も圧倒的に人が足りない事。

 施設や名物なんかも全く足りていない事。

 そして、ここに海があると認知されていなければならない事などを詳しく説明した。

 話しているうちにいつの間にか、スキル【演説】が起動してAUTO設定になっていた。

 そのおかげなのか【交渉術】のおかげなのか、途中から3人とも真剣に話を聞いてくれた。


「……なるほど、私達に街に戻って宣伝をして欲しいって事ね?」

「そうです。報酬を支払うので、エンドレスサマーで商売したい人も探して欲しいんです。自分でも探しますが、やはり限界があるので……」

「……報酬は?」

「皆さんにも旨味が無ければ意味がないですからね。」

「そうだぞ!旨味は大切なんだぞ!」

「タロお座り!! ジロ! タロを向こうに連れてって!」

「オラ行くぞワンコロ!」


 タロがジロに首輪を掴まれて引き摺られて行った。

 アイツらもなかなかいいコンビになってきたな。

 いや、そんなことを考えている場合じゃない。



 俺が報酬として支払おうと思っているのは、ダンジョン攻略時に見つけた古金貨だ。

 俺の【真贋・解析(なんでもかんていだん)】で鑑定したところ、一枚で620万チッポもの価値があるらしい。

 古いってだけで価値があるのかな。


「前金でこの古金貨一枚ずつお支払いします。店を出したい人を紹介してくれて、実際に出店まで至った場合にも一枚お支払いします」

「古金貨だと!?」

「よく見せてもらっても?」

「もちろんです」


 バンチさんに金貨を手渡すと、色んな角度から見ている。

 鑑定系のスキル持ちなのかな?


「こ…この金貨、ビシエイド建国前の金貨だよ!」

「え!? 本物!?」

「俺のスキルでは本物と出てる!」

「……価値は?」

「一枚で500万チッポは下らないよ!」

「ご……ごひゃ……」


 惜しい! 正確には620万チッポです。


「皆さんもモンスターと戦ったり、ダンジョンに何日も潜って命の危険と隣り合わせより、リスクがなくていいと思うんですが……」


「ダンジョンで毎日保存食食べるのも辛いからね」

「マメだらけの手も女として……ね」

「確かに旨味はあるな。どうする?」


 ジョルジュさんの問いにバンチさんとレナさんが頷く。


「ヨシ……乗ったぜ!」


「本当ですか!? ありがとうございます!」

「冒険者だってノーリスクで稼げるなら、そっちの方がいいからね」

「で、欲しいのはどういう人材?」


 レナさんの問いに幹部会議での話を思い出す。

 色々あるが、とりあえずはコレだろう。


「とりあえずお酒を売る店と宿泊施設……バーとか宿屋とかホテルとかが欲しいです。それと食事が出来るようにしたいです。お店や宿泊施設は俺が用意しますので、バーテンダーとか料理人とか……中の人が欲しいんです」


「なるほど…確かに氷菓子だけじゃ成り立たないよね」

「ユウタ君だっけ?」

「ユウタでいいですよ」

「じゃあ私の事もレナって呼んで」

「俺もバンチって呼び捨てしてくれよな」

「……俺の事はジョルジュさんと呼べ」

「「ジョルジュ〜」」

「チッ……雇われる側だからな。雇用主様は呼び捨てで構わね〜ぜ」


 ふふ……この人達いい人だ。

 笑っちゃわないように気をつけて……と。


「ユウタはこのダンジョンをどうしていきたいの?」


 レナさ……レナの質問に俺は深呼吸をしてから答える。



「いずれは一つの村の様にしたいですね。いろんな人が働きながら暮らして、それを楽しみにお客さんが集まって来るような……ダンジョンリゾート村とでも言うんですかね!?」


「ケッ……大層な野望を待ってやがんな」


 最後までジョルジュは斜に構えていたが、この後3人とも初めての海で大はしゃぎで遊んでから、依頼をこなすべく帰って行った。





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