表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第3話 筋肉探偵最後の事件

 筋肉犯罪の被害者宅で、期せずして宿敵モリアガッティーの違法ステロイド工場の場所をつかんだ筋肉探偵オメガ。

 今度こそモリアガッティーを捕まえようと、急ぎ違法ステロイド工場に向かう!


 いよいよ宿敵モリアガッティーとの最後の戦いに挑むオメガ。果たしてその結末はいかに!?


****


 違法ステロイド工場にたどり着いたオメガだったが、あたりの様子がおかしいことに気が付いた。


 やがてオメガに追いついたマチョソン博士とチョコレート警部も、その異様な光景に驚き、腹筋が6つに割れた!


 そこには、まるで超大型の台風が通り過ぎたかのような、破壊の限りが尽くされた工場跡しかなかった。

 壁は粉々になり、違法ステロイドの製造装置もバラバラになって、煙を吐いている。

 唖然として見ていた3人であったが、やがて彼らの耳に、悲鳴と爆発音が届く。


「嫌だ! まだバーベル160ポンドを持ち上げることに成功していなんだ! まだ死にたくな、ぐへぁ!」

「うわあ、ママー! 助けてくれぇ!」


 バスンバスンと音が響くと同時に、ステロイド工場の従業員らしき細マッチョたちの悲鳴が聞こえてくる。


 音がする方に近づいたオメガたちは、超大型の台風かと思われた破壊者の正体を知った。


 それは、変わり果てた姿の筋肉教授モリアガッティーであった。

 これまで以上に筋肉が膨張し、もはや人の姿をとどめていない。それでも顔の部分にはモリアガッティーの面影が残っており、マッチョであるオメガや、医師であるマチョソンには、かろうじてモリアガッティーだとわかる。


 違法ステロイドの大量摂取により、もはや理性を失ったモリアガッティー教授は、破壊の限りを尽くす、暴力の化身と化していたのだ!


 工場を破壊しつくしたモリアガッティーは、破壊衝動をある程度解消したのか、若干理性を取り戻した。


「ぐふふ、ふふふ、ははは、ついに、ついにたどり着いたぞ。オメガの筋肉が違法ステロイドを使わない人類の到達点であるとするなら、さしずめ今のワシは原初の筋肉人類アルファと言えるだろう! ワシを止められるものはもはやおらん!」


 その身に宿る破壊衝動を、輪舞シティの建物に向けるモリアガッティー教授、いや、筋肉人類アルファ!


 もはや輪舞シティの細マッチョたちでは、筋肉量が違いすぎ、なすすべもない。一方的な蹂躙を待つのみである。

 筋肉人類アルファへと進化したモリアガッティーを止められるのは、もはやオメガのみである!


 これから待つのは、世界最強の筋肉と筋肉のぶつかり合い!


 オメガに近づいてきたアルファが、渾身のパンチを放つ。オメガに超重量のパンチが迫る。

 オメガは両腕をクロスして顔をガード、腰を落としてパンチを受け止めようとする。


 だが、さすがのオメガでも、アルファの圧倒的な筋肉量には耐えきれず、10ヤードほど吹っ飛ばされた。

 吹き飛び、後ろにあった木にぶつかって止まったオメガは、この逆境でも笑顔であった。


「モリアガッティー教授、いや、アルファ、やるじゃないか。これほどバルクアップした人間と殴り合える日が来るとは思っていなかったよ」

「もはやオメガも敵ではないわ! これからは筋肉人類が世界を支配するのだ!」


 踏み込み、跳躍するアルファ!

 10ヤードの距離を一気に詰め、またしても圧倒的な膂力から高威力のパンチが繰り出される!


 だがオメガはあえて踏み込み、ぎりぎりでパンチをかわしつつ、クロスカウンターを決める!

 そう! 何を隠そう、オメガはバリツの達人級(マスタークラス)である!

 さらに今は亡き友人オーゼキ・テンポーザンから、スモーの奥義も習っている。


 クロスカウンターが顎に決まり、一瞬意識を失いかけたアルファに対し、テンポーザン直伝のテッポー(※張り手である)を連打する!

 人知を超える筋肉に、テッポーの鈍い音がドス、ドスと響いていく!

「どすこい、どすこい。ああ、テンポーザン、お前の技が、魂が、俺を助けてくれる!」


 アルファは、違法ステロイドで筋肉を肥大化させたとはいえ、骨の強度までは充分に高められていなかった!

 連続してオメガのテッポーを受け続け、アルファの肋骨が折れる!


「ぐあ! まさか骨の強度が不足しているとは誤算だった! だが、肋骨の骨折程度であれば、まだ闘える!」


 アルファも負けじとパンチを繰り出し、オメガの胴にねじ込んだ。


 吐血するオメガ!

 だが、オメガはテッポーをやめない!

「どすこい! どすこい!」

「ワシが! ワシが最強のマッチョじゃ!」


 ノーガードで殴り合い、吐血しながらも、手を止めず、両者ともにダメージを蓄積していく。

 ガスン、ゴキンと重金属がぶつかり合う音が響き渡る。

 ああ、まるでテンポーザンの故郷のオマツリで奏でられる囃子(ハヤシ)ミュージックのようだ!

 ドンドコ、ドンツコ、ゴキンバキン、ドンドコ、ドンツコ、ゴキンバキン!


 双方の体力も次第に削れて来て、殴り合いのテンポが徐々に遅くなってきた。


 やがて、アルファのパンチが止まった。

 オメガも残すところ1発が限度である。


「これでテンポーザンの仇が討てる。これが最後のテッポーだあああああ!」

 顎に渾身のテッポーが決まる。

 脳震盪を起こしたアルファは、完全に伸び、顔から地面に崩れる。


 すべての力を出し切ったオメガもまた、吐血しながら地に倒れ伏した。


****


 それから数日後、モリアガッティーは違法ステロイドによる一時的な筋肉肥大の効果が切れ、監獄に収監されている。人類で到達可能な筋肉量になったモリアガッティーであれば、監獄勤務のスットコドッコイ・ヤードの細マッチョにもどうにか抑え込むことができている。

 一方、モリアガッティー以上にダメージの大きかったオメガは、命に別状はなかったものの、マチョソン博士から、傷をいやすまで安静を言いつけられていた。そして、ついに本日、無事退院し、筋トレの許可も下りた。


 さっそくプロテイン窟に向かい、筋トレである。


 モリアガッティー教授の逮捕により、その後数年の間、筋肉犯罪は激減した。

 しかし、第2の筋肉人類を目指したモリアガッティーの部下であるゴリマッチョたちは、地下に潜って違法ステロイド製造を続けていた。それが直感的にわかっているオメガは、今日もバルクアップをやめない!


 数年後の第2の筋肉人類の誕生時、オメガの大胸筋が意外な活躍をするのだが、これについては、マチョソン博士が別の機会にまとめてくれるだろう。


 筋肉探偵オメガとモリアガッティー教授との死闘の話はこれにて終了である。

 だが、来るべき時のため、君も筋トレを続けよう!

 筋肉人類が誕生すれば、細マッチョでは生きていけないのだから。


 完


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ