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第2話 踊る筋肉街の殺人

 今日も非番であった筋肉探偵オメガこと、バーベルリング・ホールドは、友人であるキン・ハッスル・マチョソン博士を伴い、プロテイン窟にこもっていた。

 周りのマッチョたちが、粉末プロテインをプカプカと漂わせている。


 プロテイン窟は、阿片窟と違って中毒性もないうえ、筋肉に良い。そう、筋肉に良いのだ!

 マッチョたちが足しげく通うわけである。


 そこにまたしても、スットコドッコイ・ヤードからの呼び出しである! ああ、非番にこそ事件が起きるのは探偵の宿命!


「プロテイン摂取の時間も終わりか! ん? その靴についた泥、俺のヒラメ筋が覚えている! 時計塔近くの集合住宅の庭だな!」

 オメガを呼びに来た、使い走りの若い輪舞(ロンド)ポリスの靴を見ながら、オメガは灰色の筋肉細胞を使った筋肉推理で、事件発生場所を特定した!


「相変わらず君の筋肉は常軌を逸しているね」

 友人のマチョソン博士も驚きを隠せない。マチョソン博士はバニラ味のプロテインを飲み干し、現場に向かう準備を始めた。


 オメガも特製のスーツを着て、準備はばっちりである。

 オメガ、マチョソン博士、若手の輪舞ポリスの三人は、事件現場である集合住宅に向かうのであった。


 少し蒸し暑く感じる昼下がりのことであった。


****


 さて、今回の筋肉犯罪は、密室殺人ともいえる、不可能犯罪である!!

 集合住宅の5階、女性ボディビルダーが自室で殺害されていた。玄関のカギは二重に締まっており、犯人がいたとしても逃げだすのは難しい。

 窓は開いていたが、ベランダはない。窓から垂れた紐などはなく、窓自体に傷などもない。集合住宅の壁はつるつるであり、普通の人間がはしごを使わずに登れるとは思えなかった。

 犯人がどのような経路で逃走したかは不明であった。


 事件を聞き付けたのか、数人の細マッチョや巨漢の男、輪舞シティにつきものの幽霊など、多くの野次馬が集まっていた。


 事件現場を一通り見た後、集合住宅の外から窓の様子を眺めたオメガは、チョコレート警部から捜査状況を聞いた。


「なるほど。密室殺人か。さっそく筋肉推理と行こうじゃないか」

 オメガの僧帽筋が、最長筋が、大臀筋が、ハムストリングスが、下腿三頭筋が、ブルブルと震え、やがて一つの推理を導き出す!


「わかったぞ。握力でリンゴを二つ同時に潰せる程度のマッチョであれば、このつるつるに近い集合住宅の壁を造作もなく上り下りできる! そして、これを可能な筋肉を保持しているのは……、野次馬のお前だな!」

「くそっ! 何故わかった!?」


 野次馬に紛れていた巨漢の男が、オメガの筋肉推理に動揺する!


 驚くべき握力を生かして壁を登り、不可能殺人に見える状況を引き起こした巨漢の男を、筋肉推理で見抜いたオメガ。日々のトレーニングに登攀訓練を取り入れた甲斐があった!


 チョコレート警部はぼやく。

「すぐそこに避雷針があるじゃねぇか。登れるならそっちを登った方が楽じゃねぇのか」

「猿ならそうするでしょうが、そこに壁があるから登る。これは登攀大好き筋肉野郎の習性ですよ!」


 巨漢の男は、オメガの指摘に感動しつつ、不意打ちで攻撃を仕掛けてくる!

「よくわかっているな、筋肉の兄ちゃん! うおおおお、マッスルパンチ!」


 オメガに殴りかかってくる犯人の巨漢の男!

 オメガはなんと、抵抗することなく殴られた。


 ゴキリ。


 骨が折れる音がした。


 チョコレート警部は、さすがにオメガといえども、ノーガードで殴られて骨が折れたのかと思ったが、そうではなかった。

 なんと、折れたのは、巨漢の男の指であった!


「うおおおおおお、いてええええええええ!」

「俺は筋肉探偵だからな! 顔の筋肉も充分鍛えてある! 大頬骨筋(だいきょうこつきん)笑筋(しょうきん)によるガードの味はどうだ?」


 オメガの筋肉笑顔! 恐るべき表情筋!


「お、俺の負けだ……」


 オメガの顔の筋肉の力に恐れをなしたのか、犯人は抵抗を諦めておとなしくお縄についたため、事件は解決した!


 なお、犯人の巨漢の男は、マチョソン博士が骨折を適切に治療したため、今後の筋トレに支障はない!


 筋肉推理で犯人を捕まえたオメガは、帰ろうとしたが、ふと、証拠品として被害者宅内部から運び出されていた、ノートのようなものを発見した。


「チョコレート警部、これは何ですか?」

「ん? ああ、事件とは関係があるかと思って運び出したが、事件解決したし放置してある。何かの暗号だろうな」


 そこにはマッチョがポージングする絵がいくつも並んでいる。

 サイドチェスト、フロントダブルバイセップス、フロントダブルバイセップス、フロントリラックス、バックラットスプレッド、サイドトライセップス、フロントダブルバイセップス、……、と意味ありげに並んでいる。


「換字式暗号だと思うが、もう、解読の必要はないだろう。気になるなら証拠として持ち帰って調査するか?」

「いえ、筋肉暗号なら、すぐに解けますので」


 書かれた通りに、サイドチェスト、フロントダブルバイセップス、フロントダブルバイセップス、フロントリラックス、バックラットスプレッド、サイドトライセップス、フロントダブルバイセップス、とポージングしていくオメガ。

 全てのポージングを終えると、大胸筋をしばらく動かしていた。


 やがて、全てを理解したオメガは叫んだ。

「なんと! 最初のページはillegal steroidとあります! つまり、違法ステロイド!これには、モリアガッティー教授の違法ステロイド工場の場所が記されている!」


 そう、筋肉探偵オメガの全身の筋肉をもってすれば、筋肉暗号の解決など造作もない!


 宿敵モリアガッティーの違法ステロイド工場、その尻尾をついにとらえた筋肉探偵オメガ。

 友人テンポーザンの仇を取るため、全ての筋肉犯罪に終止符を打つため、急ぎ違法ステロイド工場に向かうのだった。


 輪舞シティに響くオメガの筋肉の音!

 モリアガッティー教授よ、震えて待て!



 第2話はこれにて終了! 30秒のプランクを3セットしたら、最終話である第3話を読んでほしい!!!



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