表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/23

3話 やっぱりゲームの世界かも

 ……パチッ



 焚き火が燃える音が聞こえる。



「……にしてもどうしてこんな子供があんな場所にいたんだろうね?」

「ファンデ村の子供か?」

「子供がいなくなったなんて報告はなかったよ」

「き、着てる服も少し変わってますし、異国の子なんですかね?」

「どこの子供かはわからんが、何にせよ良かった。俺たちがいなかったならこの子もリビングデッドの仲間入りだっただろうね」

「叫び声で気づいたけど、本当にギリギリだったからね」

「け、けどリビングデッドがあんなに大量に湧くなんて異常事態ですよ。以前ならダンジョンでもあの数が湧くなんてことはなかったじゃないですか」

「……例の噂は本当なのかもしれんな」

「……」


「…………」

「…………おっ、目を覚ましたかい?」




 まだぼんやりとした意識の中ゆっくりと目を開けると、焚き火と、それを取り囲む4人がこちらを見つめているのが目に入った。


「痛みはないか? セレスティーナがヒールと、念の為キュアをかけたから大丈夫だとは思うが……」


 大剣で俺を守ってくれた男が優しく話しかけてくる。

 確かに気を失うまで襲ってきていた激痛が今はない。

 はっと気づいて足を触るが、どうやら噛まれた部分も回復されているようだ。


「……はい」

「それはよかった。俺たちは王都ローランの冒険者ギルド所属のマイスターズ。A級ランクのパーティだから安心してくれ。俺はリーダーのダンテ。で、こっちがエステル、セレスティーナ、カインだ」

「それはそうと、あんたどの村の子なんだい? 何であんなところにいたんだい?」


 エステルと呼ばれた女性が俺に問いかける。ダンテが言った王都ローランという言葉が気になったが、それよりもこの女性が気になる。顔がめちゃくちゃ整ってる上に服装が……。何でそんな短いスカートはくんだ……。

 っていうか耳が……とんがっているぞ……エ、エルフってやつか?

 思わずじっと耳を見ているとエステルが耳を見られていることに気づいたようだ。


「……あんたエルフを見るのは初めてんなのかい?」

「まあこんな田舎じゃ仕方がないだろ」

「……そりゃそうか……ただまあ良い気はしないね。で、あんたはどこの子なんだい?」

「……よくわからないんです。気づいたらあそこにいて……」

「ファンデ村の子じゃないよね?」

「……ファンデ村?」



 聞き覚えはあったが、まさかという気持ちが強かった。

 ファンデ村は、俺がやり込んでいたゲーム『キング・オブ・アトランティス』、通称KoAに登場する村の名前だ。KoAでは主人公は王都ローランから旅を始め、初めてのクエストが発生する村がファンデ村だった。そしてダンテがさきほど言っていた『王都ローラン』、これもゲームに出てくる地名と一致している……。

 そして昨日の光っていた草。想像どおりであれば、あれは月光草という薬草の上位アイテムで、KoAであればアンデッドは月光草やポーションで倒せる。先程セレスティーナが放っていたホーリーアローという魔法も、KoAの聖職者が使用可能な魔法だ。全てがKoAの設定と一致していた。


 別の世界から来た可能性があるというのはまだ話さない方が良いかなと直感的に感じたので、はぐらかすことにした。


「……ファンデ村出身ではありませんが、ファンデ村は知っています」

「ふ〜ん、じゃあ近くの村の子なんだね」

「う〜ん、よくわからないんです」

「記憶喪失ってことかい?」

「あ、あれだけのリビングデッドに囲まれて、怪我も負ったんですから混乱してるのかもしれませんね。私の聖魔法も心理的なものには効きませんし」


 今まで黙っていた、聖職者のような格好のセレスティーナが口を開いた。


「わ、私たちは今日はここで野営して、明日ファンデ村に行きますのであなたも一緒に行きましょう。村に着けば安全ですよ。と、ところでえ〜っと、あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

「大羽、大羽翼です」

「オーバ・ツバサ? 騎士や貴族の子のようには見えないがね。商人の子かい?」


 どうやらこの世界の人間は基本的には名字が無いらしい。


「……いえ」

「埒が明かないね。あんた本当に何者なんだい?」

「まぁまぁ、エステルいいじゃないか。セレスティーナが言ってるように、ツバサくんもリビングデッドに襲われて頭が混乱しているんだろう。明日の朝またゆっくり聞こうじゃないか。ツバサくん、君も疲れているだろうから、もう一眠りしたらどうだい? 明日は朝早くに出発するから、体力を回復させておいたほうが良いよ」



 言われてみればまだ眠気が強かったので、お言葉に甘えてもう一眠りさせてもらうことにした。


 目を閉じて、今後のことを考える。王都ローラン、ファンデ村という地名、ホーリーアローという魔法、月光草でアンデッドを倒すことができる設定。そしてあのゾンビ共のことをリビングデッドと呼んでいるらしい。リビングデッドはKoAに出てくる固有の魔物名だ。全てのKoAの世界と一致している。

 もし本当にここがゲームの世界だとしたら……バグや裏技は使えるんだろうか。月光草でアンデッドにダメージを与えれるというのは裏技だったが裏技は使えたわけだ。もしバグ技が使えるのであれば……俺、めちゃくちゃ強くなれるんじゃないか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勝手にランキングもクリックしていただけると励みになります! よろしくおねがいします!
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=282328417&s script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ