22話 はじめてのブチ切れ
「ツバサ!! 大丈夫か!」
俺に気づいたダンテが馬を降り、駆け寄ってきた。
「ダンテさん……間に合ったんですね」
「王国騎士団も動員されるような緊急事態ってことで、騎士団が冒険者達にも馬を貸してくれてね。おかげで予定より早く帰ってこれたんだ」
「ツ、ツバサくん! 大丈夫!?」
遅れてセレスティーナも駆け寄ってくる。
「怪我はないけど、魔力枯渇の中毒症状みたいです……」
「よ、よかった。それなら大丈夫ですよ! 今治しますね」
『全知を司る主よ、このものから不浄を祓いたまえ ハイキュア!』
セレスティーナが俺にハイキュアをかけると、体が一気に軽くなった。
「こ、これで肉体的な中毒症状はだいぶ軽減されたはずです。精神面のダメージは残りますが……」
興奮状態だからか、精神的なダメージは全く気にならなかった。
精神的なダメージなんて言ってられない。マルセル達を助けなければ。
「マルセルさんとナターリアさんが上位の魔物を食い止めています! 加勢しにいかないと!」
***
カッサンドラが現れた先に急いで向かうと、燃え上がる炎の中に3つの影が見えた。
炎に近づいていくと、深手を負いながらも、倒れたナターリアと後方にある集会所を守るように必死に耐えているマルセルの姿が見えてきた。
「マルセルさん!」
『あら、新しいオモチャがやってきたわね』
「フンッ!」
ダンテが有無を言わさずカッサンドラに斬りかかるが、軽くかわされる。
「くっ!」
『すごいわねぇ〜人間の愛情って。その男、自分も瀕死のくせに女を守ってるのよ。ゾクゾクしちゃう』
「悪趣味な奴め……セレスティーナ、お前は2人の治療をしてくれ! エステルとカインは援護を頼む!」
「ええ!」
「……ああ」
カッサンドラの相手はマイスターズに任せ、セレスティーナと俺は倒れていた2人に駆け寄った。
「お、おま……えら……」
「ぅ……」
「い、今治癒しますからじっとしていて下さい!」
「ナ……ター……アを……さき……にたのむ……」
2人共どうにか息があるようだ。よかった。
「助かりそうですか?」
「こ、これなら大丈夫です! もう少し到着が遅かったら2人とも危なかったですが……」
「よかった……」
「け、けど、これはひどいです。この状態で生きているということは……多分拷問のように死なない程度にずっといたぶられたんでしょう……」
「…………」
………………ブチッ
俺の中の何かがキレた。
あんなに優しい2人を、いたぶっただと?
この2人を失ったら、マリアが……どれほど悲しむと思ってるんだ。
「……2人を頼みます」
「ツ、ツバサくん!?」
2人の治癒をセレスティーナに任せ、マイスターズの元へ向かう。
「ツバサ!? 危ないから君は下がっていろ!!」
「皆さん、少し離れていて下さい」
「んん?」
『あ〜ら、お子様が何の用かしら?』
「……みんな、少し下がれ。ツバサに何か策があるようだ」
ゲーム中にカッサンドラという固有名の魔物は出てこなかったが、こいつは堕天使系の魔物だ。だったら必勝法は1つ。
『ファイアストーム!』
炎がカッサンドラの周囲を焼き尽くす。
アンデッドを大量に処理したおかげで、自分のレベルと魔力が劇的に上がっているのが実感できる。
『ちょ、熱いじゃない!』
さすがのカッサンドラも直撃したら少なくないダメージを受けると判断したのか、飛翔して回避した。
が、狙い通りだ。
『サンダーボルト!!』
激しい轟音と共に、雷がカッサンドラに直撃する。
――サンダーボルト
1次職である魔法使いが使える最高位クラスの魔法だ。
そして堕天使系の魔物が飛翔モードに入っている時――雷系の魔法のダメージは2倍になる
『グ!? ナ、なニ……』
効いている。そしてサンダーボルトはスタン効果があるのでずっと俺のターンだ。
こいつらクソみたいな性格のくせに回復系の聖魔法を使うからな。油断せず、ヒールをするスキなんて与えないのが一番だ。
『サンダーボルト!』
『サンダーボルト!』
『サンダーボルト!』
『サンダーボルト!!』
レベルアップの感覚が湧くまでサンダーボルトを撃ち続ける。
そしてレベルアップ、つまり倒した時には、性悪女は跡形もなく消し炭になっていた。
「む、無詠唱!? それにこの威力って……ツ、ツバサ、君は一体……」
我を忘れて魔法を撃ち続けて忘れていたが、端で見ていたマイスターズのメンバーがポカーンとしている。
しまった、こっちの人は無詠唱で発動できないんだっけか。
(まあいい、2人の様子が心配だ。見に行かないと!)
と思って2人が倒れていた方を振り返ると
「ガッハッハ! よくやったぞツバサ!」
元気そうなマルセルが立って拍手をしていた。
……このオッサンさっきまで瀕死の状態じゃなかった?
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