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20話 夜襲

 カンカンカンカン!!



 満月の夜、非常時を告げる鐘が村中に響き渡る。

 すぐに着替え、村中がざわめく中集会所に向かうと、すでにマルセルとナターリアが指示を出していた。


「女子供は集会所に隠れろ!! 男たちは武器と月光草を持て!!!」

「マルセルさん!!」

「ツバサか! 奴らが来たようだ! 予想より早く来た……援軍は間に合わなかったようだ。俺たちだけでやるしか無い!」

「日が出るまで月光草が尽きなければだいぶ楽になるはずです。それまで耐えましょう」

「そうだな……打ち合わせ通り、村の奴らとマリアは徹底的に集会所を守れ! ツバサと俺、ナターリアは遊軍だ! とにかく数を減らすぞ!!」


 マルセルが的確に指示を出す。


「そうだ、ツバサ」


 マルセルが懐から何かを取り出し、渡してきた。


「マナポーションだ。今回はタダでいいぞ! なるべく村の中で炎魔法は撃って欲しくないが、命には代えられん。危険になったら……迷わず撃て。集会所だけは燃やすなよ」

「……わかりました」

「おにーちゃん!」

「マリア!」


 村人の誘導をしていたマリアがこちらに気づき、駆け寄ってくる。


「お兄ちゃん! ……絶対に死なないでね!」

「マリア……! これを身に着けてろ!」


 マリアに守護者のネックレスを渡した。


「これは……?」

「お守りだ。このお守りがマリアを守ってくれるはずだ」


 この子はこの世界に来て初めてできた友達だ。

 死なせるわけにはいかない!


「ありがとう、お兄ちゃん! 気をつけてね!」

「まずい、すぐそこまで来てるぞ! 行くぞツバサ、ナターリア! マリアは早く戻れ!」


 集会所からブランドン墓地方面の出口に向かうと、月明かりに照らされる無数のアンデッドが村に向かってくるのが見えた。


 少しでも集会所から離れた場所で戦うため、こちらから奴らの前線まで駆ける。

 アンデッドの集団に近づくと、奴らの全貌が見えてきた。


「おいおいおいおい、話が違うぞ!!」

「リビングデッド以外もいるわね……」


 一面を覆い尽くすアンデッドの群れには、リビングデッド以外の魔物も混じっていた。

 スケルトン、グール……そして実体を持たない幽霊のようなアンデッドであるゴーストやレイスもいる。

 高位のアンデッドであるレイスまでいるとなると、より高位のネクロマンサーが召喚している可能性が高いな……。


『ウィンド!』


 村のあちこちに配置しておいた月光草を魔法の風に乗せ、スケルトンやゴーストに投げかける。


「グァアアア!!!」

「ギイィィ!!」


 スケルトンは崩れ落ち、ゴーストは消滅した。

 よし、リビングデッド以外にもしっかり効くみたいだな!


「リビングデッド以外にも月光草は効くみたいです!」

「そのようだ! 集会所の守備は問題無さそうだな」

「ええ。ただゴーストやレイスに物理攻撃は効きません。マルセルさんとナターリアさんは気をつけて下さい!」

「ええ!」

「おうよ!」


 マルセルは戦士、ナターリアは弓使いであるアーチャーのため、物理攻撃が効かないゴースト系のアンデッドには月光草に頼らざるを得ない。


「来たわよ!」

「うおおおお!!」

「グォオオ!!」


 各所で戦闘が始まった。

 この村でまともな戦力は俺とマルセル、ナターリア、マリアだけだ。俺たちだけで何とかこの村を守らなければ。

 せめて日が出るまで耐えれれば良いのだが……。

 いや、こんな弱気じゃ駄目だな。耐えてみせる。

 異世界から来て何もわからない俺を受け入れてくれたこの村を守ってみせる。



 絶対に守るという覚悟を決め、迫りくるアンデッドに魔法を放つ。



『ウィンド!』






 ***













 ……もうどれくらい戦っているのだろう。

 マナポーションを飲みすぎているせいか、時間の感覚がない。

 意識も朦朧としている。

 だがこちらの状況などお構いなしに、アンデッド達は次から次へとやってくる。

 仲間がどれだけやられても恐怖を感じないというのがアンデッド最大の長所だろう……。


 ハッと意識を現実に戻すと、スケルトンナイトが殺意をむき出しにしてこちらに向かってきているのに気づいた。


『ウ、ウィンド』


 無意識に魔法で防衛しようとするが、月光草を風に乗せていないと気づいた時にはもう遅い。

 ウィンドくらいでは倒せないスケルトンナイトは、もう目の前に迫ってきていた。





 ガコッ


 ギリギリの所でナターリアが放った矢がスケルトンナイトの頭を居抜き、駆け寄ってきたマルセルの一撃により、スケルトンナイトが崩れ落ちる。


「ツバサ、大丈夫か!」

「ええ……」

「クソッ! 数が多すぎる!!」

「一旦集会所まで引きましょう! まとまっていないと個別にやられてしまうわ!」


 彼らの長年の経験による判断からか、遊軍である俺、マルセル、ナターリアは最後の防衛ラインである集会所のそばまで撤退することにした。

 集会所に近づくと、俺達を視界に捉えたマリアが駆け寄ってきて、撤退を魔法で懸命に援護しようとする。



 だが、その時。


『ウフフフフフ……』


 片翼が天使、もう片翼は悪魔の翼を持つ美女が、静かに戦場に舞い降りた。



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