19話 報告
「マルセルさん、お話があります」
「おお? マナポーション代は値引きできねえぞぉ〜?」
ブランドン墓地の祠から無事帰還したので、その足でギルド出張所に向かった。
「いえ、真剣な話です」
「……ん。何かあったのか?」
俺の表情から察したのか、マルセルが仕事モードに切り替わる。
「ブランドン墓地でリビングデッドが大量発生している原因がわかりました」
「なんだと?」
***
マルセルにファンデ村に着いてからのことを話すことにした。
ブランドン墓地でレベル上げをしたこと。
月光草がリビングデッドに効くこと。
ブランドン墓地でネクロマンサーがリビングデッドを召喚していたこと。
会話の内容から、リビングデッドの数がさらに増えることが予想され、おそらくこの村に攻めて来ること。
……
「……ったく。無理すんなって言っただろ」
「すみません」
怒られるかと思ったが、意外とマルセルはあっさりとしていた。冒険者はみんなこんなもんなのだろうか。
「しかしリビングデッドを召喚するネクロマンサー、しかも最低でも2匹か……。厄介だな」
「今はブランドン墓地に留まっていますが、もしあいつらがファンデ村に向かってきたら……」
「リビングデッドは意思を持たないはずだ。まとまった数で攻めてくるなんて本当にあるのか?」
「普通はそうですが、ネクロマンサーが使役していたとしたら別です」
「ふむ、にわかには信じがたいが……お前のその様子だと信じて良さそうだな」
そういえばアンデッド系の魔物が出現し始めたのも2年前って言ってたしな。マルセルは現役引退して職員になってるし、ネクロマンサーとは遭遇したことがないのかもしれないな。
「今すぐこちらから出向いて、先に叩くのは難しそうか?」
「……ミスリルゴーレムが守っているので難しいかと」
「ミスリルゴーレム……? ミスリルゴーレムって勇者の英雄譚に出てくるあれか?」
「英雄譚は読んだことが無いからわかりませんが、ミスリルでできたゴーレムです」
「魔法を弾き返すっていうあれか?」
「上位職の高位魔法なら効きますけどね」
「お前何でそんな事知ってるんだよ……っていう話はひとまず置いておこう。俺やお前で倒せそうか?」
普通の方法でミスリルゴーレムを倒す方法は2つ。
物理攻撃でゴリ押しするか、上級職の高位魔法を使うかだ。もう1つ方法が無いことも無いが、今の状況だと難しい。
「僕らだけだと難しいですね。レベルの高い前衛が数人でかかるか、もしくは36レベル以上の魔法使いがいれば、あるいは」
「魔法使いでいいのか? 戦士じゃなくて?」
「ええ」
「その言い方だと、お前は36レベル未満という認識で良いのか?」
「おそらくそうですね」
「ふむ……36レベルを超えている魔法使いはこの国だと俺の元パーティーメンバーだけだ。すぐに使い鴉を飛ばしても、おそらく間に合わないだろう」
俺のレベルが36あれば問題ないが、まだ23レベル。
ここからリビングデッドだけ倒して一気に36レベルまで上げるというのは至難の業だ。
「あと数日中に王都からの援軍が着くはずだ。あいつらが着き次第、全員で叩く。いいな?」
「はい」
「もっと急いで来るように早馬を飛ばそう」
「援軍が来る前にネクロマンサー達が攻めてくる可能性もあります。村の人たちが自衛できるように、月光草を集めておくのが良いかと」
「そうだな……。すぐに村総出で月光草を集めさせよう。奴らが攻めて来る前に援軍が間に合えば良いが……」
その後、マルセルは村人を集会場に集め、今の状況を村人たちに説明した。
村に残るかどうかの判断は、それぞれの決断に任された。
別の街にいる親戚の元に避難する家族もいたが、家族全員が満足に動ける一家ばかりではない。病人を抱える家族や、逃げる場所を持たない家族は、村に残り王都からの援軍を待つことになった。
その日以降、残った村人で動ける人員を総動員しての月光草集めが始まった。
群生地は渓谷だけではなかったらしく、かなりの量の月光草を集めることができた。
しかし月光草が大量にあったとしても、ただの村人たちがリビングデッドの群れを見てパニックにならずに対処するのは難しいだろう。
援軍が間に合えばよいが……。
***
そして、ある夜。
奴らは俺達の予想より早くやってきた。
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