11話 薬草TUEEEEEEEEEE
「あら、おはようツバサくん」
早朝、身支度を整え水場で水を汲んでいると、マルセルの妻ナターリアに声をかけられた。
「おはようございます」
「朝早いのね。どこかにお出かけ?」
「この辺の地理に慣れたいと思いまして……薬草採集がてら付近を散歩してきます」
本当の目的は違うが、本当の目的を言ったら絶対に行かせてくれないので何とかごまかす。
「まぁまぁ、朝から頑張るのね。この辺ではレベルの高い魔物や盗賊の目撃情報はないけれど、リビングデッドの件もあるしあまり遠くまで行かないようにね」
「お、ツバサ。起きたのか」
ナターリアと俺の会話が聞こえたのか、素振りをしていたらしきマルセルもこちらに来た。
「ツバサくん、少しこの辺を散歩してくるんですって」
「まだ一人で歩かせるのは心配だがな……。マリアを連れて行くか?」
「マリアちゃんまだ寝てるでしょ? 起こしちゃ悪いですし、ちょっとした採集と散歩だけだから大丈夫ですよ。危険なことはしませんし」
「そうか。だが魔物やリビングデッドと遭遇しなくても、道に迷う可能性もある。昼までに戻れるか? 万が一道に迷って戻らない時に、日が暮れてから捜索隊を出すと二次災害の危険もあるし、何より今はリビングデッドに警戒しないといけないからな」
「わかりました。昼前までに必ず帰ります」
「なるべく見晴らしのいい所を歩け。あと……わかってると思うが、森で炎魔法は使うなよ」
「わ、わかってますよ」
ファンデ村を出て、マルセルのアドバイス通り見晴らしの良い場所を歩く。
レベル1の状態で村から離れすぎるのも怖いし、迷ったら昼前までに帰れなくなるだろうからあまり遠くまではいかないようにしなければ。
***
「う〜ん、いないな。日中はあまり動かないって言っていたしな……」
小さな池にたどり着いたので、少し休憩することにした。
あれから1時間ほど歩いても目的のものは見つからなかったので、少し遠くまで来てしまった。
「ふぅ〜、生き返る」
頭や体の汗を水で洗い流す。水が冷えてて気持ちがいいな。
池の対岸ではシカやうさぎのような動物が水を飲んでいた。ここは動物たちの水飲み場になっているのかな?
日本の街なかじゃ見られないのどかな風景に目を奪われて、目的も忘れてボーッとしてしまう。
30分くらい経っただろうか。そろそろ行くか、と思っていた矢先。水を飲んでいた動物たちが一斉に首をあげ、一目散に逃げ始めた。鳥も一斉に飛び立ち、周辺の様子が明らかにおかしい。
これはもしかして……と思って対岸の様子を伺っていると、来た。リビングデッドが対岸に現れた。
そう、今日はこいつと遭遇するのを待っていた。
ダンテ達に着いていかずにファンデ村に残ると決めた理由は、生活が不安という点もあるが、最大の理由はこの村周辺にこいつらリビングデッドが大量にいたからだ。
レベル1の魔法使いがソロで倒せる敵なんてほとんどいない。特に複数の魔物と遭遇したら即終了だ。がしかし、しっかりと準備をした上で、日中に動きの遅いアンデッドがいるのであれば、こんなに楽な経験値稼ぎは無い。
そして話に聞いていた通り日中だからか、俺を襲ってきたときよりも動きが遅い。
これはいける!!!
持ってきた袋から月光草を取り出した。実は昨日薬草採集の依頼を受けている時に、月光草をいくつか見つけたんでついでに取ってきていたんだ。
リビングデッドはこちらに気づいているのか気づいていないのかわからないような動きで、池の周囲を徘徊していた。
ゆっくりとリビングデッドに近づく……。しかしこいつら昼間は本当に動きが遅いな。ノロいリビングデッドが1体いるだけだと全然怖くない。夜だから余計に怖かったんだろうな、なんてことを思いながら近づいていく。
そして射程距離まで近づいた所で――投げた。
「グァウァウアウアウァウアアアアア!!!」
あたった瞬間苦しみだし、その場で崩れ落ちるリビングデッド。
動きが遅いせいか、以前襲われたときより心の余裕が全然違う。
冷静に考えると薬草を投げつけると苦しみだす原理がわからんな。ポーションみたいな液体だったらなんとなくわかるんだけどさ、草に触れただけで死ぬか?
「ウゥゥゥウウウ……」
「ゥ……ウ………………」
(ん……死んだか?)
と思った瞬間、体が軽くなるような、不思議な感覚がした。すぐ収まったと思ったら、もう1度不思議な感覚が体を駆け巡る。
「これはもしかして」
あれか? あれなのか? と思いながらステータスを確認する。
****************
レベル:3
体力 :19
魔力 :31
攻撃力:2
守備力:4(+40)
俊敏性:5
魔練度:15
****************
あれだった。
***
結局あの後ファンデ村に戻る前にリビングデッドを2体発見し、レベルも4まで上がった。リビングデッド楽勝すぎる。
手持ちの月光草が無くなったので早めに戻ったんだが、このレベル上げ方法のためには月光草が大量に必要になる。どこか群生地を探さないとな。
朝早かったし一旦昼寝して、午後は採集の依頼すっかと思っていたら……。
「ツバサお兄ちゃん!!!!!!!」
ビクッ
振り返ると鬼の形相のマリアが背後に立っていた。
「な〜ん〜で〜わ〜た〜し〜を〜〜〜」
ゆっくり近づいてくるマリアさん。
「置いていくの!!!!!!!!!!!」
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