10話 バグ技、使えたけど使えない
部屋に戻って昨日の成果を確認してみる。
袋を開けると……よしよし、2万ゴールドと、盾の彫刻が刻まれたネックレスがちゃんと入っていた。
『守護者のネックレス』
序盤の装備にしては上等なステータス強化アイテムだ。ゲーム中だとこれがあるか無いかで序盤の攻略難易度が全然違った。
身につけ、ステータスを確認する。
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レベル:1
体力 :16
魔力 :22
攻撃力:1
守備力:2(+20)
俊敏性:2
魔練度:6
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うん、ゲーム内と同じ効果みたいだな。
普通は前衛の職種にこのネックレスをつけるが、今の俺は打たれ弱い魔法使いで、パーティを組んでいない。ましてや回復魔法も使えないわけで、すぐに倒されないよう守備力を上げるのはとても重要だ。
しかし本当に大事なのはこれからだ。これはただの隠しアイテムであり、攻略本にも載っているような情報なので誰でも入手できる。元ゲーム系Youtuberニートの本領発揮はここからである。
作戦はこうだ。
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ネックレスを手に入れたら、ファンデ村の道具屋に行く
ネックレスを売ろうとする
35000ゴールドで買い取ると言われるので、いいえを選ぶ
店の外に出て、また入るのを2回繰り返す
ネックレスを売ろうとする
35000ゴールドで買い取ると言われるので、いいえを選ぶ
店の中でネックレスを装備する
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このバグを使うと、この作業を繰り返すたびに守護者のネックレスに元々の効果である守備力+20が何故か上乗せされる。これを何度も何度も繰り返せば、序盤から1キャラクターは物理攻撃に対してほぼ無敵となる。
ただこの作戦、1つだけ問題があるんだよなぁ〜。まぁやってみるか……。
装備していた守護者のネックレスを外し、覚悟を決めミレア婆さんの雑貨屋に向かう。
「こんにちは」
「いらっしゃい。あんたが噂のあんたがツバサくんだね。昨日はごくろうだったね」
店に入ると品の良い、人が良さそうなお婆さんが座っていた。
ミレア婆さんの店は、村で唯一の小売店だ。店内を見回すと、かなり商品量が多い。ゲーム内だと冒険に必要なアイテムしか売っていなかったが、こちらの世界だと服から食材まで手広く取り扱っているようだ。まぁ村唯一のお店だったらそうなるか。
「すみません、このネックレスを売りたいんですけれど」
「ん? どれどれ。ほぉ〜〜これは……ちょっと待ってな」
よかった。どうやら買取もやっているようだ。
ミレア婆さんは一度店の奥に引っ込むと、ルーペを持って戻ってきた。
「ほぉ〜〜、ほぉ、ほぉ。これは上等なものだねぇ……おそらくこの村の村人の中じゃ買い手がつかないから、買い取った後村に来た行商人に売ることになる。だったらあんたが行商人に直接売るか、もっと大きい街で売ったほうがいいとおもうよ」
「いや、今売りたいんです」
「そうかい。となると……ちょっと安めの査定かもしれないが、買い取りの値段は35000ゴールドってとこだねえ」
すごいな。売値がゲーム内とドンピシャで同額だ。
「う〜ん、じゃやめときます」
「そうかいそうかい。まあいいよ。他に何か買っていくかい?」
「いえ、ではまた……」
そして店を出る。店を出たら店にまた入る。
「ん?まだ何か用かい?」
「いえ……」
店を出て、また店に入る。
「なんなんだいあんたは……」
「いえ、このネックレスを買い取っていただけないかと……」
「はぁ〜なんだい結局売るのかい。じゃあ35000ゴールドね。金庫からお金持ってくるからちょっと待ってな」
「いや、すみません、本当に申し訳ないんですがやっぱり止めときます」
「あんた!! いい加減にしなさい! 人のことおちょくってんのかい!」
キレた。そりゃいくら温厚な人でもキレるよなぁ〜。
「ごめんなさ〜〜い!!」
店を出る前に急いでネックレスを装備し、逃げるように店を出る。
小走りで部屋に戻り、ステータスを確認すると。
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レベル:1
体力 :16
魔力 :22
攻撃力:1
守備力:2(+40)
俊敏性:2
魔練度:6
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おお〜〜〜〜!! 狙い通り、ネックレスの効果が2倍になっている!
ただしかし、更に強化していくのはもう無理そうだ。
そう、この作戦の難点は、この作業を何回も繰り返すことが難しいという点だ。
ゲームだったら何十回繰り返しても何も言われないが、ミレア婆さんはこの世界では生きているし、感情もある。事実ブチ切れていた。
……やっぱりこれは無理だわ。精神力が持たない。
繰り返したら村唯一の店を出禁になるのは確実だ。奇人変人扱いされて、下手したら村を追い出されかねん。
くそぉ〜〜〜、このバグはアイテム入手した後にファンデ村から出るとフラグが消えて使えなくなるんだよなぁ。マックスまで上げておけば無敵状態になれたのに……。
まぁでもこの世界でもバグ技は使えるのが使えるのが確認できただけで良しとしよう。
このゲームにはまだまだバグが沢山あるから焦る必要はない。焦ってヤバイやつ扱いされ、この世界唯一の知り合い達に縁を切られる方がダメージがはるかにでかい。慎重に行こう。
う〜ん、今度ミレア婆さんにはお詫びしにいかないとな……。
まあなんにせよこれで準備は整った。
王都に行かずこの村に残った例の目的を、明日から進めていくとするか。
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