第18話 少年、おっさんと出会う
ミチルたちとの別れを経て集落を旅立って2日目、俺とユキはこれと言った災難もなく火山へと近づいていっていた。イノシシを狩り、薬草を採取し、鉱物を採掘したりしながら、着実にミノタウロスとの戦いが近づいてきている。
「火山に近づいてきたせいか、暑くなってきたな」
「う、うん。ちょっと暑いかも……」
「ユキの場合は、格好が格好だからな」
魔女帽子を被ってローブまで羽織ってるからな。正直、見てるこっちまで暑く思えてくる。
「ハルト。私の格好って、趣味だと思われるのかな……?」
「え?なんで?」
「ミチルたちに言われたのよね。この格好、趣味だと思ってたって……」
「あー」
《ヴォレスローブ》と《使者の魔女帽子》が特殊能力付きの装備だって知ってる俺ならともかく、初対面でこの格好なら趣味だと思われても仕方がないか……。でも、
「その格好、似合ってるし良いんじゃない?」
「似合ってたらダメなの!恥ずかしいじゃん!!」
えー……そこら辺、俺にはわからん。とにかく、お気に召さないらしい。
「なら、魔女帽子だけでも俺が被ろうか?」
「んー、それだと私のアイデンティティが失くなっちゃうような」
「どっちなんだよ」
結局、2つ共ユキが装備することになった。今までの会話がすべて無駄だったように思えるが、歩いてる間はいつもこんな感じだから無駄というわけじゃなかった。少なくとも、ユキのことが知れた。それだけだけど、それを知れたことがなんとなく嬉しいんだ。
さて、そろそろ移動を切り上げて野宿の準備をしよう。まだ周りは木々に囲まれてるけど、ちょっと開けた場所を見つけるのはそれほど難しいことじゃない。そこにミチルたちにもらったテントを張って焚火をする。ユキが夕食を作ってくれている間に、俺が周囲に危険なものがないか確認しに探索。それが終わって、ようやく夕食にありつけるっ。
「「いただきます」」
焼いてくれた串肉にかぶりつくっ。ーーッ!!
「うめぇぇ……」
このジューシーな歯応えが堪らんっ。それに野性味溢れる美味さを引き立ててくれているのが、この岩塩!!もともとミチルたちから貰ったものだけど、これまでの移動の中の採掘でいくつか見つけることができた。香料がないから食材の味しか味わえなかったけどっ、岩塩のおかげで食事がめっちゃ楽しく感じるようになった!!マジで美味いっ!!
「野菜も食べないとダメよ」
「わかってるよ」
ご飯がないのが不満だが、ユキの料理に不満は微塵もない。現に串肉だけじゃなくて野菜も美味しいし。まあ、野菜と言ってもキャベツとかニンジンとかじゃなくて、そこら辺にある食葉と《リーゴ》の盛り合わせみたいな感じだけどな。それでも、やっぱり美味しい。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
ご飯も食べ終わったし、テントの周りにバリケードを置こう。みんなが準備してる間に暇だったから俺が木で作った簡単なやつだけど。一応イノシシとか狼とかは入ってこれない様にしてるから、一晩ぐらいなら安心して寝られる。『道具』を開いて、っと。
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道具
木製バリケード×10
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《木製バリケード》をタッチして取り出す。テントを囲む様に配置してっと。うん、こんな感じで良いだろう。
「それで、火山の方はどんな感じ?」
「火山の周りにミノタウロスの姿は見えない。でも、入り口らしきところに1体だけ立ち尽くしてる。見張りでもしてるのかしら?」
「多分見張りだろうな。1体だけっていうのが気になるけど、1体だけで十分ってことかもしれないしな」
もしそうなんだとしたら、リザードマン以上に強いかもしれないな。
「他に入り口らしき所ってあるか?」
「んー……昨日からずっと観察してるけど、それらしい所はその1カ所だけかな」
となると、侵入はそこからになるのか。交代で来た奴と鉢合わせしそうだよなぁ。でも、そうも言ってられないか。火山の頂上からは入れないし。正攻法で行くか。
「明日の朝一で出発して、そこに行こう。その見張りを倒して火山に侵入する」
「わかった。そこから親玉を探す感じ?」
「まあな。その先はどうなるかわからないし、今決めても仕方ないだろうから明日にしよう。今日はゆっくり休むということで」
「うん。それじゃあ、お休み。ハルト」
「ああ。お休み。ユキ」
そんな感じで、各々のテントで眠って今日は終わった。
次の日。朝一で歩いたおかげで、昼前には火山に到着した。到着したって言っても、入り口が見える林の中に隠れてるんだけど。見張りをしてる奴の様子を見たくて隠れてるんだけど……
「いないな、見張り」
「休憩中、とか?」
「それでも交代する奴ぐらいはいるだろ、多分」
さすがに同じ個体がずっと見張りしてるわけがないだろうし……もしかして、俺たちを誘い出すための罠、とか?
「ユキ、使い魔で中の様子って見れるか?」
「罠の可能性だよね?さっき飛ばして見てみたけど、ミノタウロスの姿はなかったわ。《エアサーチ》にも、何も反応がないし」
「罠じゃないってこと?」
「ここまで何もないと、多分そうなんじゃない?」
「んー……」
あ、そういえば。
「《魔力感知》って技能。アレは使ったのか?」
《魔力感知》は周囲の魔力を感じ取ることができる、らしい。まだ習得してないからわからないけど。微々たるものは難しいらしいけど、魔術を使うぐらいの魔力なら感じ取れるとか。待ち伏せとかじゃないと、あとは見た目じゃわからないトラップぐらいだろ。
「もう使ってる。入り口の中まで範囲内だけど、それらしい魔力どころか魔力自体感じ取れなかったから、トラップもないわ」
「マジか。じゃあ、本当に罠とかじゃない?」
「今のところそうね」
罠の可能性はグンと減ったな。なら、ここでジッとしてるのも意味ないし。
「火山に入ろう。警戒は怠らないように頼む」
「わかった」
後ろ腰の《小鬼斬丸》を抜く。それから慎重な歩行で入り口に近づく。ちょっと覗いてみたけど……いない。よし、入ってみるか。中はゴブリンの時の洞穴と違って広い。剣が振れないんじゃないかと思ったけど、この分だと問題なく振れそうだな。とりあえず、今は短剣だけあって構えて進む。
結構進んだけど、ミノタウロスには出会わない。一本道だから鉢合わせを警戒してたんだけど、まったく出会わない。いや、出会わなくて良いんだけどさ。ん?あれは……。
「出口?」
「ううん。開けた場所に出るみたい」
ユキの宣言通り、開けた場所に出た。開けた場所、というか……
「暑ッ……!!」
めっちゃ暑いんですけど!周りの景色も赤いし……うわっ、マグマが見える!!これ、完全に火山の内部だわ……。間違って踏み外しでもすれば、マグマの中に一直線にダイブする羽目になる。
「とんでもない所に出たみたいだな……」
「うん……あつい……」
「大丈夫か?さすがに魔女帽子ぐらいなら取ってもいいと思うぞ?」
「大丈夫……魔術で冷やすから。ーー〝雪の子よ冷たく集え〟」
ユキが術式を綴って呪文を唱えた。ユキの目の前にバスケットボールぐらいの氷の塊が出てきたっ。
ジュュュュュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。
「あー」
でも、熱に溶かされて一瞬で水になった……。水も蒸発してるし、ヤベェな。《ゴブリンの水筒 500ml》。《ゴブリンの水筒 500ml》。
「とりあえず、水分だけでもこまめに取ろう。こんなところに居続けたらすぐに脱水症になる」
「そ、そうね」
暑過ぎて汗が止まらない……。《雪華の漆黒衣》の保温性が仇になったな……。早いところ親玉を倒してさっさと出よう。《ゴブリンの水筒》を大量に貰っておいてよかった。ん?
「あれって……」
「え?」
なんか端っこに石みたいなのが並んで、枝みたいなのが散らばってる。炭みたいなのもあるし、生活感を覚える。ん?石と思ってたけど違うな。透明で赤いし。こんなのどっかで見たことあるような……。とりあえず、詳細を見てみるか。
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燃火石
*常に熱を放出している特殊な鉱石。放出を妨害することで燃え上がり火を起こす。一定時間燃え上がったあと、しばらく熱を放出しなくなる*
《燃火石》を『道具』へ入れますか?
はい / いいえ
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へぇ、特殊な鉱石。あ、見たことあると思ったらアレか。《集光石》だ。アレも透明みたいな感じだったもんな。
「《燃火石》……。あまり熱を感じないね」
「ああ。ここが暑すぎて俺たちの感覚が変になっているのか。もしくは……さっきまで誰かが使っていた、かだ」
「ーーここら辺には誰もいないみたい。魔力も同様」
「そうか。なら、まだ安心か」
俺たちがここに来てからそれなりの時間が経過してる。それでもまだ様子見をしてるんなら、相手に敵意がある可能性がある。正直、人間を相手に戦うのは避けたい。まあ、だからと言って相手に敵意がないとは言い切れいんだけど……。
「人数は、1人か?」
「1人だと思う。椅子が1つしか用意されてないし」
確かに。大きめの石を椅子に模して置いてるけど、普通人数分は用意するだろうし。
「とりあえず、その1人に意識を向けつつ先に進むか。見た感じ、周囲に添って下りていくみたいだけど……」
「下に行くにつれて暑さが増しそう……」
「だな。さっさと親玉を倒して、火山からおさらばしよう」
「うん」
そうやって進み出した俺たちだけど、やっぱり暑いッ!汗の量も半端ないしっ。こまめに水分は取ってるけど、とてつもない速度で喉が渇く。ホント《ゴブリンの水筒》を大量に貰っておいてよかった。それにしても、大きく螺旋状に下ってるけどなかなかミノタウロスに合わないな。一体どこに行ったんだ?
「ハルト、何かあるわ」
「?何かって?」
「ほら、あそこ」
ユキが指差す方を見てみる。特に何もない壁……いや、違うな。わかりづらいけど、亀裂みたいなのが入ってる。でも、これがどうかしたのか?
「あの奥、道になってる」
「え?あんなところに?」
「うん。《エアサーチ》でそう捉えてる」
あの奥に先があるのか?こんな中途半端な下りの壁に?
「行ってみるか」
亀裂に入ってみる。本当に道になってる。この先に何かあるのか?
『わああああああああああああああああああああッ!!』
「「ーーッ!?」」
今のはっ悲鳴!?誰かが襲われてるのか!?ユキに声をかける前に走り出すッ。ユキも走ってついてくる。数秒もすれば、その声を上げた人の下にたどり着く!
「ーーッ。あれが……」
「あれがミノタウロスだよ、ハルト!」
目に飛び込んできたのは、倒れ込んでいるおっさん。それに巨大な斧を振り上げ、今にもおっさんに向けて振り下ろそうとしている牛頭の人型のモンスター。あれがっ、ミノタウロス……!!って、そんな見入ってる場合じゃなかったッ……!!
「《光刃閃波》ッ!!」
《ルミナスソード》を抜いて振るう!光の刃が刀身から飛び出してミノタウロスに襲いかかるっ。振り上げている斧を持つ右腕を斬り飛ばーー
「グフッ!?」
「なっーー」
躱した!?あの姿勢からっ!?いや、驚いてる場合じゃない!!
「おっさん!早く後ろにいる女の子まで下がれ!!」
「おっ!?わ、わかった!!」
ミノタウロスが躱してるうちに、おっさんの前に飛び出すっ。アイツが斧を振り下ろしてくるのを《剣技》で相殺する!《サイライト》ッ!!
「グゥッ!!」
「くっ……!」
とてつもない力でぶつかり合ったせいで腕がジーンってするっ。でも、そのおかげで互いに弾かれ合って間合いが空く。後ろをチラッと。よし、おっさんはユキの後ろまで下がった。さて、剣を構える。初めて戦うモンスターだからな。慎重に行かせてもらう。《魔力効率上昇》。《筋力上昇》、《敏捷上昇》、《身体能力上昇》、《洞察力上昇》。一気に5つの技能を発動させる。
「グホオオオオオオオオオッ!!」
奴が斧を横に構えて襲いかかってくるッ。掛け声といい、すごい迫力だ!怖気そうになるけど、あのリザードロードに比べればどうってことない!!《ルミナスソード》で受け止めるっ。
「ぐあっ」
お、重いッ。それに鋭い!こんな簡単に弾き飛ばされるとは……!
「〝不可視の弾丸よ穿て〟ッ」
俺と入れ替わるように風弾が飛ぶっ。
「ブヒッ」
「うそっ!?」
嘘でしょっ。あれが見えてるのか!?レベル1だから威力自体はそれほどでも、空気の圧縮弾だから見えないはずっ。今まで当たらないことなんてなかった……。さっきの《光刃閃波》といい、どうやって躱してるんだ……?探ってみるか。《ゴブリンの短剣》。《ゴブリンの短剣》。
レベル1二連投《投擲技》ーー《ナブレ》ッ!
1本を顔に目掛けて、もう1本は右足に投げる!《ゴブリンの短剣》。アイツは体を反って1本目を躱して、次に右足を引くことで2本目も躱した。ここだっ。《バリエード》ッ。反ったことで俺のことが見えていない一瞬があったはず。その一瞬の隙に投擲すればあるいはっ……
「ブフォッ」
片足を軸に回転して躱した。なるほど、
「だいたいわかった」
「ブゥフッ!?」
回避行動している間に間合いを詰めるっ。《アンラッシュ》ッ!!薙ぎ払いっ、返す刃で2撃目を叩き込む!奴の胴体を斬り裂くことはできなかったけど、深い傷を負わせることはできた。それにしても、
「本能で攻撃を回避するとは、ちょっと驚きだな」
アイツは視認しなくても本能で回避行動を取っていた。俺もたまにあるけど、本能っていうのは案外当たる。アイツは俺よりも何倍も直感的に本能を受け取ることができるんだろう。動きといい、まるで鍛えられた戦士みたいだ……。ま、本能で察知してるんなら対処は簡単だな。本能が追いつかない近接戦あるのみ。
「ハアッ」
「ブヒゥッ」
駆け出して剣を振れば、アイツも斧を振って相殺してくるッ。ーーッ。腕がジーンってする!今度は斧を振り下ろしてきたッ!転がり込んで回避!!地面に斧がめり込むのを横目に見ながらっ、素早く起き上がって間合いを潰す!!
レベル5重二連撃《剣技》ーー《ゴルゴレア》!!
《ルミナスソード》を振り上げた1撃。そこから身を捻って薙ぎ払って2撃!とてつもない量の血が奴から飛び出て俺にかかった。でも気にしてる暇はないっ。致命傷に近い傷を受けても、アイツは咆哮をあげて斧を振り下ろしてくる!《ファンゼル》で返す!!アイツが斧を手放したっ。ここで畳み掛けるッ!!短剣を抜く!!
レベル2四連撃《短剣技》ーー《アモネイサ》っ!
両腕と両脚の付け根を狙って《小鬼斬丸》を振るう!ーーっ、浅いッ。短剣の刀身が短いからかっ。ならっ、意識を足に集中!両脚を黄色に発光させて《体技》を使う!!
レベル3上下二段脚《体技》ーー《コブマ》!!
跳び上がって左脚で奴の顎を蹴り上げるっ。アイツが蹴られた衝撃で仰け反っている間に着地して、更に跳び上がって身を捻って体の上下を逆に!そこから右脚で奴の顔面を蹴りつける!!
「グッフゥ!!」
綺麗に着地すれば、覚束ない足取りで後ずさる。頭を蹴ったことで脳が揺らされたんだろう。必死に頭を振っている。それにしても、あれだけの武技を受けておいてまだ生きてるのか……。ミノタウロスというのがタフなのか、アイツがタフなのか。お、意識がはっきりになったみたいだな。
「グフォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ」
……ッ、すごい咆哮だなっ。まるで気合いを入れたみたいに聞こえたけど……。前屈み?地面を空蹴りして……まさか突進?
「グフォッ!!」
飛び出してきた!やっぱ突進だった!!すごい迫力っ。試しに受け止めてみたいけど、絶対に吹き飛ばされるわ。それに角で突き刺されでもしたら終わりだ。なら、ルミちゃんに作ってもらったアレを試すか。
「《孤城盾》」
『道具』から呼び出す。そうすれば、目の前に俺を簡単に包み隠すほど大きな盾が現れるっ。盾は自由落下で地面に突き立った。そこにアイツが突進してくる!
ドォォォォォォォンンンンンンンンンンンンンンンンッ
重々しい音が響くっ。でも、盾は動いていない。当たり前だ。この《孤城盾》は《銀籠手》の破片と《リザードマンの鱗》を混ぜ合わせた特製の金属でできてるんだっ。しかも、それを《地属性魔術》で何度も圧縮してあるから何十トンという重さがある!そう簡単に突破されない!!
「〝旋風を巻き起こし螺旋描いて舞い上がれ〟ッ!!」
そこにユキの魔術が発動するっ。盾の前で旋風が発生して奴の体を上へと巻き上げる!そのまま頭上に頭をぶつけた。またもや脳震盪が起きて手足から力が抜けている。《剛大剣》!!
《ルミナスソード》と《小鬼斬丸》を手放してっ、代わりに呼び出した大剣を手に跳躍っ!それじゃ届かないから《空踏跳躍》!!落下してくるアイツに通り抜けざまに大剣を振るうっ!!
レベル1垂直単発《大剣技》ーー《ソーガ》!!
青の一閃が奴の首を撥ねる!頭と体が別々に落下していった。高く跳んだ俺も身を捻って体勢を立て直して着地した。ーー決まった。
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・ミノタウロスを倒しました
ーーミノタウロスの角
ーーミノタウロスの歯×3 を獲得
・熟練度《短剣術》が40に到達しました
ーー《短剣技》レベル4《クリスト》
ーー《短剣技》レベル4《エルステイン》
ーー《短剣技》レベル4《ヒトラス》 を習得
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お。《短剣技》のレベル4を習得したか。《剛大剣》。結構あっさり倒せたな。地面に転がる《ルミナスソード》と《小鬼斬丸》を拾って鞘に納めてっと。
「お疲れ様。ケガはない?」
「ああ、無傷だよ。フォローありがとう」
あ、忘れてた。《孤城盾》、っと。よし、『道具』に入った。
「君たち、助けてくれてありがとう。本当に助かったよ」
あ、おっさんが話しかけてきた。薄い髭に頭にタオルを巻いたおっさんだ。グレーの服は……作業服、っていうのか?よくわからんけど、工場で働いてる人が着てる服だ。
「いや、どうってことないよ。それより、おっさんはいつからここに?」
「いつから……そうだな、だいたい1、2ヶ月ぐらい前だな。それがどうかしたのか?」
「俺たち、さっきのモンスターの親玉を倒しに来たんだ。さっき来たばかりで、ここのことを何も知らないから教えて欲しいんだ」
「おおっ、そうなのか!お礼になるかは分からんが、俺が知ってることなんでも教えてやるよ!!」
ニッコリと親しみを感じるような笑顔だ。よかったぁ。少なくとも悪いおっさんではないみたいだ。これで背後から襲ってくるようなら、身包み剥いで放り出すしかないからな。本当によかった、よかった。
「お、そういえばまだ名乗ってなかったな。俺はオルガ。しがない鍛治士だ!よろしくな!!」
「俺はハルト。新米の剣士、と言ったところだ。こっちがユキ」
「ユキです。よろしくお願いします」
てな感じで、俺たちは一度穴から出て、腰を落ち着かせて話をすることになった。




