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We are syerupas!  作者: ムラ松
3/3

新人研修

ゆる〜く更新してまーす。そろそろストック切れるなぁ()

私が横川に来てから1週間ほど。


「香さん、起きてください〜。朝ですよ〜。」


楓ちゃんが寝ている私のことを揺すります。


「う、うん…。でも、あと5分…。」


「まったく…。今日から仕事なのに、そんな事言ってていいんですか?」


そう言って楓ちゃんは小さくため息をつきます。そしてそれを聞いた私は


「あっ、そうだった!!」ガバッ


ベットから飛び起きます。


「今日から社会人なのに、そんなでいいんですか?」


「ま、まぁそうだね…。」


私は苦笑いで答えます。


(やれやれ、本当に不安です。)


楓ちゃんは心の中でそう感じていたらしいです。



楓ちゃんが部屋から出た後、私はこの日のために用意した、社会人としての第一正装の服に着替え、鏡の前に立ち


「今日から、社会人か…。頑張らないと!!」


私は鏡の前で呟いてにっこり笑います。



そして、着替えを済ませて、私が下に降りると


「おはよう。朝ごはんできてるよ。」


悠太さんが私たちの朝食を用意して待っていました。


「おはようございます。わかりました〜。」


私は席について朝食を取ります。


「香も今日から仕事か。」


前で朝食を取っていた正樹さんが私に言います。


「はい。ちょっと楽しみです。」


「ふふ。それはよかった。その気持ちで新人研修頑張れよ。」


正樹さんは少し笑って、その場を去りました。


「まったく、香さんがこれから仕事とか、少し不安です…。」


楓ちゃんはそう言ってコーヒーを1口飲みます。


「え〜。そんな事言わないでよぉ〜。私は大丈夫だから心配しないくていいよ〜。」


「そうは言われましても…。不安なものは不安です。まぁいつまでそう言ってても埒が明かないので、これだけは言っておきます。重大なミスとか起こさないでくださいよ!!」


「も〜う。楓ちゃんは心配性だな〜。お姉ちゃんは大丈夫だって!!」


私はそう言ってウインクをします。


「本当に不安です…。」


楓ちゃんは小さくため息をつきます。

まったく〜。楓ちゃんは心配性だな〜。私大丈夫だって!!



朝食を済ませて、ちょっとした身支度を終え


「じゃあいってきまーす!!」


「いってらしゃい。本当、気をつけてくださいよ…。」


「大丈夫〜!!」


私は楓ちゃんに親指を立てて、家を出ます。



私が今日向かうところはこの前、楓ちゃんと初めて出会った碓氷峠資料館。ここで今年から私のように、このうすい鉄道に入社した人向けの新人研修が2、3週間ほどやるらしいです。

私はそこに向かう前に、一度、おくのやに寄ります。そして、おくのやの前でほんの少しだけ待っていると


「香ちゃん、おはよ〜。」


「おはよ〜。」


桜ちゃんが実家であるおくのやから出てきます。


「この子が桜の友達?」


桜ちゃんの横にいた金髪のショートヘアの女の子が私を見て言います。


「この子は?」


「私の友達の澪ちゃん。うすい鉄道のアテンダント課で私たちと同じように今年から働くのよ。」


「浅間澪です。よろしくね。」


澪ちゃんが私に頭を下げます。


「横川香です。よろしくね。」


私も頭を下げます。


「じゃあ、行きましょうか。」


「うん。」


桜ちゃんが言って私と澪ちゃんがうなずくと目的地へ向け、歩き出しました。


「そういえば、2人ってどういった関係なの?」


私が2人に聞きます。


「私たちはお母さん同士が友達だからそれで私と澪ちゃんも昔から仲がいいのよ。」


「そういう関係があって桜の家に下宿させてもらってるのよ。」


「なるほどね~。それで澪ちゃんはどこに住んでるの?」


「実家は西部池袋線の練馬だけど、今は桜の家で下宿させてもらってるわ。」


「澪ちゃんもなんだ。私も近所の白山さんのお家で下宿させてもらってるの~。」


「へぇ~。まぁ、香、これからよろしくね。」


「うん。」


お互いでにっこり笑い合います。


「ふふっ、2人も打ち解けあえてよかった。2人とも頑張ろうね!!」



「「うんっ!!」」



この後も3人でいろいろ話しながら歩いてるうちに碓氷峠資料館に着きました。資料館に着くと


『研修会場はこちら』


という看板が館内に置かれていて、向かった先は更衣室。更衣室に向かうと…


「これがあのうすい鉄道の制服~!?」


私たち研修生の名前が書かれたロッカーの中を開けると、うすい鉄道の制服が入っていました。制服は少し、濃いめの青いブレザーにワイシャツにズボン。ネクタイはロクサンのカラーリングをイメージしたような青とクリーム色のシマシマ模様。そして鉄道員に欠かせない制帽。こちらも制服同様に濃いめの青の帽子に真ん中にはアプト式のラックレールをイメージしたような社紋が。これが今日から私が着る制服か~。私はささっと着替えて横にあった鏡の前に立ちます。


「うわ~!!私、この制服ついに着ちゃったよ~。」


私は鏡の前でくるっと回ります。


「香ちゃんの制服姿、似合ってるねぇ~。」


後ろから桜ちゃんがのぞき込みます。さらにその後ろには澪ちゃんが。


「2人だって十分似合ってるよ!!」


私は2人の制服姿を見て言います。


「香ちゃんありがとう。」


「なんか照れるな~。」


そして私は2人の間に入り、肩を組み、私たちは鏡を見て


「桜ちゃん、澪ちゃん。これから頑張ろうね!!」


「うんっ!!」


「そうだね!!」


私たちはにっこり笑い、これからここで頑張る意識を高め合います。

よ~し!!頑張るぞ~!!


「え~っと、場所はこの先の会議室だっけ?」


桜ちゃんは館内の看板を見ながら研修が行われる会議室へ向かいます。

会議室に行くと、他の数人の私たちと同じような研修生が待っていました。私たちもそれぞれ席に着き、研修が始まる時間まで待ちます。待つこと10分…


ガチャ


前の方のドアから研修の担当の人が入ってきました。ってあの人って⁉


「全員揃ってるか~?俺が今日から3週間ほど、会社全体での研修を担当するシェルパ課機関車班指導係の熊野正樹だ。」


目の前の教壇に立っていた研修の担当の人とは楓ちゃんのおじいちゃんの正樹さんでした。


「お前ら社会人になったからって浮かれてるんじゃねぇぞ。この業界はちょっとしたミスで大事故に繋がる。それにこの鉄道は超級勾配区間を所持するところだ。他の会社の倍に事故に用心しなきゃいけない。だから、お前ら心しておけよ!!まぁ、初っ端からこんなに厳しいこと言ってもあれだし、とりあえず」ゴホン


正樹さんは咳払いし


「うすい鉄道へようこそ。この鉄道はさっき述べた通り日本で有数の超級勾配区間、斜度66.7‰の横川~軽井沢を持ち、高崎~軽井沢間全長40.6㎞を運行する鉄道路線だ。第三セクター方式で西部鉄道を親会社に1997年に設立された会社だ。元はJR東日本の信越本線を引き継いだ路線で通勤、通学、そして観光も視野に入れて多方面で経営する路線だ。そして、この鉄道の売りの碓氷峠。横川~軽井沢の間にそびえる大きな峠だ。そして斜度は66.7‰。ビルにして8階分ほどの高低差を持つ区間だ。この区間は普通の列車だけでは超えれないので補助機関車という後ろから峠を登るのを補助してくれる機関車を連結して峠を越える。とにかく、通勤、通学も大事だが、うちの鉄道はこれを一番の売りであり、うちの鉄道の心臓だ。だから、うちの新人どもにはどこの課に配属されようがこの峠のことは隅々まで知ってもらいたい。何度も言うがそれがこの鉄道の売りなんだからな。社員が売り物について知らなくてどうする?だからこの研修でお前らにここで働くうえの知識を片っ端から詰め込んでやる!!覚悟しろよ!!」


正樹さんはそう言って私たちに指を指します。


「まぁ、初っ端からこんな話してもわからん奴にはわかんないからお前ら新人のために、横川~高崎~軽井沢~横川を乗ってもらう。それにこの列車はお前ら新人のために臨時に仕立てた列車だ。しっかりよく見て今後の役に立たせろよ。じゃあ、荷物まとめて、今から30分後に横川駅の改札に集合!!鉄道員たるもの遅刻は厳禁だからな!!以上。いったん解散!!」


正樹さんはそのように言うと会議室を去りました。正樹さんが去るとみんなは…


「ふう。」


肩の力を抜いて、背伸びをしたりします。やっぱりみんな緊張しているんだね…。私はどうだったかって?私はそんなに緊張しないタイプだし相手は私が知ってる人だからそこまで硬くならなかったよ~。それにして早速、電車に乗れるなんて楽しみだよ~。


「香ちゃん~。」


「香~。」


私も行く準備をしていると桜ちゃんと澪ちゃんが声をかけてきました。


「あっ、2人とも〜。」

「いや、それにしても、いきなり乗せてくれるなんて思わなかったよ~。」


澪ちゃんが嬉しそうに言います。


「いきなりそうなるとは思わなかったよ~。私も楽しみ~♪」


「じゃあ、行きましょうか。」


「うん、そうだね。」


そう言って私も荷物を持って会議室を後にします。



そして、資料館を出て、歩いて横川駅まで。横川駅に向かうと他の研修生もちらほら集まってきて、そして約束の時刻になり


「よし、みんな揃ってるな~。じゃあ、行くぞ~。」


正樹さんがみんなを引率して階段を登り、3番線に向かいます。3番線に向かうと…


「おっ、115系じゃん~。」


目の前には115系の湘南色が停車していました。


「とりあえず、乗れ。この電車に乗ってこれからお世話になる路線がどういうものかこの目で確かめろ~。」


そう言って、手でドアを開け、車内に入ります。


「まぁ、適当に座れ、そろそろ発車するぞ~。」


正樹さんが車内アナウンスで言うと


ガッタン


列車は動きだし高崎方面へ向かっていきます。


「やっぱり、115系はいいな~。」


私はそう言って窓を開けます。


「だよね~。JRの231系よりこっちのほうが私は好きね。」


桜ちゃんが窓から手を少しだけ出します。


「私的にはこの国鉄車特有のブロアー音が…」


澪ちゃんが顔を少し真っ赤にして興奮気味に言います。


「澪ちゃんって音鉄なの?」


私はそんな澪ちゃんを見て聞きます。


「もちろん♪私、走行音を聞くのが大好きで、特にロクサンのあのブロアー音が大好きでさ、もう毎日のように動画サイトや自分で録ったやつとか聴いてるよ〜。」


澪ちゃんが幸せそうな顔をして言います。


「でもなんでアテンダントなの?運転士とか機関士、整備士になればもっと聴けるのに〜。」


「いや、私は、その…運転すると変になっちゃってね…。」


「変になる?」


「なんと言うか、運転席に座るとテンションが上がってハイになっちゃうのよ…。」


「それ、なんかすごい!!」


それを聞いた私は澪ちゃんの手を握ります。


「いやいや、すごくないわよ…。逆に困ってるレベルだし…。」


澪ちゃんは苦笑いで答えます。


「なるほどね〜。ちなみに整備に行かなかった理由は?」


「それは単純よ。私、電気のことがわかんないからよ。まぁ私、接客は好きだし、電車の走行音に囲まれながら接客ができるなんてここしかないからこの会社に来たのよ。で、香はロクサン目当て?」


「もっちろん♪電車と機関車が一緒に峠越えてるなんてここだけじゃん!!音もいいし、それに重連で走るあの重厚感も…。」


私の脳内には碓氷峠を越えてるロクサンと115系の姿が思い浮かびます。


「うん、うんわかるわかる。」


澪ちゃんがにこにこして私の意見に賛同してきます。


(よかった~。澪ちゃんも香ちゃんもお互い打ち解けあって~。)


横で桜ちゃんが私たちの話をにこにこしながら聞いてました。



列車は高崎に着き、折り返し、軽井沢方面に向かいます。列車が軽井沢方面に折り返すと車内のスピーカーから


「次の北高崎は…」


一駅、一駅の駅周辺、観光地など、周辺についての説明がされます。



そして列車は横川に着くと…


「ここからうちの鉄道の難所の碓氷峠の通過だ。全員最後尾に来い。」


と、言われてみんな、最後尾に集合します。

最後尾に向かうと…


ピッ!!


私たちが乗ってきた列車の後ろに短く汽笛を鳴らして青の車体に全面がクリーム色の車両がやって来ます。あれが、噂の…


「こいつが碓氷峠越えには欠かせない補助機関車、峠のシェルパ、ロクサンことEF63だ。ここを通過する列車の全ての列車にこいつが連結される。そうこいつこそがうちの鉄道の売りであり、いわゆるアイドルってやつだ。」


正樹さんはどこか嬉しそうにロクサンのことを説明します。

説明をしている横でロクサンは作業員さんの手旗信号の指示のもと、115系と連結をします。


「みんな、目の前にあるロクサンの運転台を見て見ろ。気づくことがないか?機関士が前側にいないだろ。ロクサンが峠を登る時は機関士も後ろを向いている。そして後ろを向いたまま18m×2両離れたところにいる列車と連結する。前方監視は今までの運転士に任せて、ロクサンの機関士は車両の操作をやるんだよ。」


正樹さんが説明してる横で…


ガチャン!!


ロクサンと115系が連結し、作業員さんがロクサンと115系の間にジャンパ線と言われるコードのようなものを接続します。


「そろそろ発車だ。みんな、車内に戻れ。碓氷峠の詳しい説明を後でたっぷりするよ。」


そう言って、正樹さんは車内に戻っていきます。私たちも着いていくように車内に戻ります。



私たちが車内に戻ると


ピー!!


ロクサンが大きな汽笛をあげて、列車は動き出します。動き出すと…


「この碓氷峠は…」


碓氷峠の地形や歴史についての説明が正樹さんの車内アナウンスによって説明されます。

横川を出ると少しずつ列車は登っていきます。そして周りの景色は一気に一面山の景色へ変わっていきます。


「あ、あれって。」


澪ちゃんが反対側の窓から一つの建物を指します。


「丸山変電所だね。」


「いや、いつ見てもこのレンガ造りはすごいよね~。」


車窓から見えた赤いレンガの建物はかつて、碓氷峠の電化を支えた丸山変電所。このレンガ造りが近年、注目され国の重要文化財にも指定されています。



丸山変電所から少し走ると旧線と呼ばれるロクサンが走る前の時代に使われていた線路と分岐します。旧線は国鉄・JRの時代は線路が撤去されていましたが、うすい鉄道に切り替わったときに、坂本宿、碓氷湖、熊ノ平の観光を視野に入れて、線路が復活。現在は碓氷峠専用の保線用機関車が貨車から改造したトロッコ車を牽引して、横川と熊ノ平の間を走っています。



旧線と別れるとさらに66.7‰の区間に入ります。ここが碓氷峠で一番キツイ区間となります。

そしてさらに走ると列車はトンネルに入り、車内は光の海に包まれます。


「やっぱり、トンネルのイルミネーションはキレイね~。」


「本当にすごいよね~。」


これもうすい鉄道の売りの一つのトンネルイルミネーション。碓氷峠は山を越えるが故にたくさんのトンネルを通過します。トンネルの中はもちろん、真っ暗。そんな区間がいつまでも続くとお客さんも飽きてしまいます。そこでうすい鉄道がそんなトンネル内でもお客さんが飽きないように工夫を凝らして設置されたのがトンネルイルミネーション。休日になると、このイルミネーションを見るために列車に乗る人たちで賑わいます。

そして、行楽シーズンになると、このイルミネーションのために臨時列車を走らせています。この列車はトンネル通過時に車内を消灯し、イルミネーションをもっと楽しめるように工夫されているらしいです。


「季節によって、このイルミネーション変わるんでしょ?」


澪ちゃんが言います。


「そうよ。春は桜、夏は海や川、花火、秋は紅葉やハロウィン、冬はクリスマスや雪とかをイメージしたイルミネーションに変わるのよ。」


桜ちゃんが説明します。


「本当にいつ来てもお客さんが飽きないようにしてるんだね~。」


「そりゃ、この鉄道も観光業やってるからね~。私が配属されるアテンダント課もそのためにあるようなものよ。」


「でも、すごいよね~。普通列車にもアテンダントさんが乗務してるなんて。」


「この方式はえちぜん鉄道と同じ方式らしくて、運賃清算から沿線案内あとは列車によってはドア扱いや列車防護もやるらしいよ。」


澪ちゃんは頬杖をついて言います。


「なんか車掌さんみたいね。」


「まぁ、車掌兼アテンダントみたいなもんね。一応、扱いはワンマン運転みたいだけどね。」


「けっこう複雑みたいだね…。」


私は苦笑いします。


「でも、なんか楽しそうね!!」


「そうだね!!」


「まぁ、いくら仕事とは言っても堅苦しくならずにやらないとね。」


「そうね。」


澪ちゃんが言うと私たちはうなずきます。



そうこうしているうちに列車は軽井沢に到着し、横川方面へ戻ります。


「ここからは下り坂ね。」


桜ちゃんが窓から顔を出しながらいいます。


「そうだね~。」


「発電ブレーキ使いながら下るんでしょ?」


澪ちゃんが聞きます。


「そうだよ~。発電ブレーキは下る上での肝だからね~。」


キ~!!


列車は大きなブレーキ音を立てながら慎重に下ります。


「改めて思うけど、本当によくこんなところ下れるよね~。」


澪ちゃんも窓から顔を出して言います。


「そんな不可能なことができてこそのロクサンだもん!!でも、本当にすごいね~。」


私も窓をのぞき込んで前にいるロクサンを見ます。


「やっぱり、ロクサンはすごいだろ~。」


後ろから私たちに話かける声が聞こえます。


「あ、正樹さん。」


桜ちゃんが正樹さんを見て言います。


「桜、熊野さんと知り合いなの?」


澪ちゃんが聞きます。


「うん。うちの昔からのお店の常連さんでね。」


「へぇ~そうなんだ~。」


私も正樹さんを見ます。


「まさか、おくのやの娘がこっち来るとは思わなかったけどな~。」


正樹さんが顔をかきながら言います。


「ちなみに、香ちゃんは正樹さんのところで下宿させてもらってるのよ。」


「だから、香が熊野さんのこと、親しそうな目で見てたんだ~。」


澪ちゃんは「なるほど~」という顔で言います。


「なんか舐められているような…。」


それに対して正樹さんは苦笑いで私を見ます。


「ちなみに香ちゃん、お家ではどんな感じなんですか?」


そういえば、桜ちゃんにはあまり、私の話を最近してなかったな~。


「ん?あ~。いつもうちの孫を襲ってる姿を見るな~。」


「襲ってる!?」


何も知らない澪ちゃんは「えっ!?」という顔で私を見ます。


「襲ってるなんて嫌だな~。スキンシップですよ~。」


私は笑いながら答えます。


「まったく…。とにかく、お前らイチャつきすぎんなよ。」


そう言いながら正樹さんはその場を去ります。その横で澪ちゃんは私をガン見します。


「あんた、どんな暮らししてんのよ…?」


「別に~。今、下宿してるお家に楓ちゃんって言う私たちの1年年下の女の子がいるんだけど、少し小さくてモフモフで可愛いんだよぉ~。」


私は楓ちゃんの姿を思い浮かべて語ります。


「モフモフって何よ…。」


澪ちゃんは少し引き気味に言います。


「え?それはね…。」


私は澪ちゃんを見て…


「こらっ!!離れなさいよ!!」


「うわ~澪ちゃんの髪の毛もモフモフしてる~。」


私は目の前にいる澪ちゃんに抱きつきモフモフします。やっぱり、モフモフはいいなぁ~。


「香ちゃ~ん、私も混ぜてよ~。」


「あっ、こらっ!!桜ぁ~!!」


桜ちゃんが反対側から澪ちゃんに抱きつきます。

そんな私たちの姿を遠目で見ていた正樹さんは…


「あいつら、新人研修で何やってるんだ…。まったく、大変な小娘を入れてしまったな…。」


そう呟いてため息をつきます。



うすい鉄道の体験乗車を終えて午後からは本格的な研修の開始です。研修の内容はうすい鉄道や碓氷峠の歴史やロクサンがどのような役割で働いているかや、沿線についての説明、そして、接客業には欠かせないホスピタリティーマインドや敬礼の練習など、2週間みっちり座学の研修を受けます。でも私は昔から座学の勉強は苦手。まぁ、定期テストの点数はそんなに悪くはなかったけど…。研修の内容は普通の学校の授業よりは面白いけど、やっぱり…


「ふ~ん。給料もらって居眠りとかいい度胸だな~。」


正樹さんは私を見て腕を組みながら邪悪な笑みを浮かべます。私は座学を夢の中で受けています。


「起きろ。」


正樹さんがディスコン棒と言われる車両のスイッチの切り替える棒で私を突っつきます。


「うわっ!!」


私は跳ね起きます。


「お前、また寝てんのかよ~。昨夜もまた楓と夜更かししてたんだろ?」


正樹さんが私を睨みつけます。


「うっ…。」


私はその言葉に何も言い返せなくなります。やっぱり同居してるから全てお見通しってやつか…。

そして家に帰ると…


「寝てた分の補習な。」


正樹さんが腕を組んで仁王立ちをして私のことを待っていました。


「また香さん寝てたんですか?」


正樹さんと楓ちゃんによる補習が始まる日々。

私、ここに何しに来たの~!!と頭を抱える日々です。

でも、研修は2週間ほど。だからいろいろしているうちに…


「今日で全体での新人研修は終わりだ。でも俺はまだお前らをひよっこだと思ってる。これからそれぞれの部署での実践的な研修が始まると思う。決して手を抜くなよ。人の命や今後がかかってるんだからな。お前らも早く仕事内容を覚えてこの鉄道に貢献してくれよ。健闘を祈る。」


そう言って、正樹さんは敬礼します。そして私たちも敬礼をします。今日で全体での研修は最後。明日からは、それぞれの現場へと配属になります。明日からは現場か~。ちょっと楽しみだな。

研修が終わり、解散となり


「香ちゃん~。」


桜ちゃんと澪ちゃんが私に声をかけてきます。


「2人ともお疲れ様。」


「お疲れ様。」


「お疲れ様~。まぁ、香はほとんど、寝てばっかだったけどね。」


澪ちゃんが苦笑いで言います。


「まぁ、そこはね…。でも明日からはついに現場だよ!!」


「そうだね~。楽しみね~。」


桜ちゃんがにっこり笑いながら言います。


「そうだけど、でもちょっぴり不安かも。」


澪ちゃんが顔をすくめます。


「大丈夫だよ。私たちなら何でもできるよ。だから、頑張ろ!!」


私は澪ちゃんの両手を握ます。


「そうよ!!私たちはこれからよ。」


桜ちゃんは私と澪ちゃんの手を握ります。


「よ~し!!私たち頑張るぞ~!!」


「「おー!!」」


私が言うと2人は掛け声を上げます。

明日からはついに現場。私の憧れへとどんどん近づいていく。精一杯頑張るぞ~!!




ゆっくり更新していくのでよろしくお願いします。

次回から本格始動かな?

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