y4.生命を知る
今日も太陽が起きるのと同時に目が覚めた。
寝るのが早い分すぐ目が覚める。
ダラダラしている時間は私には無い。
一刻も早く人里へ。私はすぐに行動を開始する。
昨日寝る前に考えてたんだけどやっぱり家を作ることにした。
向こう岸の海岸まで多分一日中いかだを漕ぎ続けても辿り着けない。
なら数日分の食料、後は寝てる間に流され無いように船の錨を作らなきゃ行けない。
じゃあ割と大きめのいかだを作る必要がある。
正直いかだ完成まで野宿はキツいし、簡易的でもいいからまず家だ。
だがここで問題がある。
いかだにしても、家にしても木が大量にいるのだ。
え?切ればいい?
簡単に言ってくれるなよ!!
私のパートナーの石斧くんは全然切れないんだ!!
あんなもんで木を何本も切るとか考えられない。
そこで私は石斧くんのアップグレードから始める事にした。
川をジャングルの方へと辿っていきながら能力を使って使えるものは無いかと辺りを見回してみる。
あった!
川の底に黒くてラメみたいにキラキラした石が落ちていた。
この石は表面がザラザラしててとても硬い。砥石の代わりに使えるようだ。
これで石斧くんを研いで切れ味を…… ん?待てよ……
なんかこの川辺色んな色の石が落ちてる。
これは石斧くんより、斧にするのに向いた石があるかもしれん!
やっぱりだ!読みがあたった!流石私、冴えてるぞ!!
しかも途中で火打石、とでも言えばいいのか石同士で擦ると火花が出る使えそうな石も拾った。
そしてメイン。オレンジがかったこの石はかなり硬く大きさも手頃だ。
私はラメ石でオレンジ石をひたすら研ぎ続けた。
それはとても地味な、だが結構な重労働だった…。
とにかく硬い。擦っても擦っても形が変わらない。それでもここでやめる訳にはいかない。私は一心不乱に研ぎ続けた。そしてやっとの思いで、
出来た!!めちゃくちゃ時間かかったけど!!
スーパー石斧くんだ!オレンジに鈍く輝いてるのがカッコイイ!
さらばノーマル石斧くん、君の事は忘れない。
あとついでに小さいオレンジ石を研ぎ続け、持ち手にツタをグルグル巻きにしたナイフも作っておいた。いや、ついでってほど簡単じゃなかったけど。
こっちは切った木の加工用だ。
早速試し斬りだ!
私は川沿いに生えてる手頃な木を切ってみる。
うおお!!
超切れる!!これなら一日10本ぐらい楽勝じゃないか!?
テンションも最高潮、私は川沿いに海岸の野宿スポットまで手頃な木を切りながら進む。
はずだった……
何これめちゃくちゃ重労働なんだけど。
一日10本?無理無理無理無理、超無理。
むしろもう4本も切った私を褒めてほしいね。
ていうか私こっち来てから木の実しか食べてないんだよ?
木の実じゃあ力は出ないだろうがっっっ!!!
肉!
タンパク質をとらねばならん……。
こっちに来てから虫、魚、鳥は何度も見かけてる。
虫は論外。虫は嫌いだ、食べるとか考えられない。
魚は好きだが獲るのが厳しい。だって釣るにしても餌に虫使わなきゃじゃん。
となると鳥だ。
鳥を捕まえたいところだ。ギブミータンパク質。
周囲を少し探索してみると
私はゴムのような繊維質のツタと、めっちゃしなる枝を見つけた。
このふたつを使って作るのはもちろん弓だ!
もうすっかり手慣れた手つきで枝にツタを巻き付けていく。
ナイフで枝をとがらせた矢も何本か作った。
いざ!参る!!
鳥は何度か見つけた。
時間はかかったが矢もある程度真っ直ぐ飛ぶよう練習した。
なのに何故当たらない!!
これはダメだ、もっと練習がいる。
そもそも冷静になって考えてみたら、弓なんか今まで触った事もないのに当たるはずがない。なんか異世界だし森だしでエルフに憧れて勢いで作ってしまった。
何か別の獲物を探そう。
私は落ちていたY字型の枝を持ってジャングルを少し進んでいく。
異世界とはいえ今までここで見た生き物は、姿や色は違えど地球にもいるものばかり。
こんなジャングルならきっと……いや、必ずいる!
ジャングルを歩く事数分、、、見つけた!
蛇だ!!
初めての獲物には嬉しい 狙い通りの小さめの蛇!
すかさずY字型の枝を蛇の首に挟み込む。
いやー、こんなに早く見つかるなんてツイてる!
抑え込んだ蛇の首に手を伸ばして、一気にクビを掴み持ち上げた。
獲ったどーー!!
思わずそう叫びそうになるが私は乙女、我慢だ。
え?蛇掴める時点で乙女じゃない?
何を言う!虫はダメだが蛇は可愛いじゃないか!!
嬉しさのあまりスキップ気味で野宿スポットの海岸へと帰る。下手くそなスキップに揺られる蛇が可哀想だ。
漸く野宿スポットに着きそこで問題が発生した。
火が……ない……。
流石に生のままじゃ食べられない。
かといって私は片手に蛇。片手で火を起こす道具なんて作れないし、蛇を入れる檻も作れない。
ならばどうするか、、決まってる。動けないように殺すしかない。
いや無理無理無理。こちとら普通のJKなんだ。
蚊とかならまだしも、動物なんて殺した事ない。
でも肉を食うためには今殺さなくても、いずれ殺して調理しなくてはならない。
よく考えると今日だって、私は弓で鳥を殺そうとしてたし、日本でも私の代わりに誰かがしてた事だ。
それを今さら出来ないとこの蛇を逃がすのか?
Noだ!!
そもそもこっちに来る前は誰かが殺した動物の肉を食べてたんだ。今更、罪悪感なんて感じる権利もない。
せめて苦しまないように蛇を砂浜にしっかり押さえ付け、頭にナイフを一気に振り下ろす。
ナイフが蛇の頭を貫く感触が手に伝わってきた。
やった、、やってしまった。
なんとも言い難い感情が胸に押し寄せる……。
私は蛇に両手を合わせ黙祷、ナイフで皮を剥ぎ、ぎこちなく捌いていく。むせ返るような血の匂いと肉の感触が容赦なく不快感を煽ってくる。
ダメだ、ちょっと涙目になってきた……。吐きそう…。
徐々に暗くなって来た空にはもう星が見え隠れしていた。
蛇を捌き終え、完全に暗くなる前に火を起こすべく枯葉や枯れ枝を集めて来る。
そして火打石を擦り合わせて集めてきた枯葉に当てる。
出来た!
僅かだが枯葉に火種ができ、急いで息を吹きかけながら火を大きくする。
少しづつ火は他の枯葉や枯れ枝に燃え移り、次第に荒々しくなっていく。
初めて焚火つくった……。
なんか感慨深いなこれ。でも今はご飯だ。
浸ってる場合じゃない。命を奪ったんだ、無駄になんて出来ない。
はーい、という事で気持ちを切り替えて、ここでミサキの3分クッキングー!
まずはさっき獲った蛇の皮を剥いだ肉を、串に刺します。
ここでポイント!串は自分で作るのがベストです!
あとはなんか良い感じに火で炙って、良い感じになってきたら超良い感じなので食べ頃でーす。
私は海水を濾過した時に出来た塩を少しふりかけ、蛇の肉を口に含む。
おお!いけるぞこれ!!思ったより全然食べれる!!
海水濾過してた時に出来た塩も持ってきて正解だった!
食べ終わる頃には日は暮れていた。
結局今日も野宿になるか、、明日から本格的に家作んないとなー。
なんて思いながら砂浜に寝転ぶ。
なんかこっちに来てから初めての体験ばっかりだ。
まあ一応異世界だしそりゃそうか。
自分で色々やって生きるってどんなに大変か分かった気がする。
こっちに来る前は普通に食べてたけど私って他の生き物の命をもらって生きてたんだな。私の代わりに誰かがしてくれてたんだ。
仰向けに寝転び、瞳に映るのは満天の星空。
そんな大自然がそうさせるのか、柄にも無い事を考えながらその日は眠りについた