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Page 24 文化祭当日

 


 今日は採寸。


 なんのって、もちろんコスプレ衣装の。俺もてっきり、どこからか借りてくるのかと思っていたのに、文化祭用に作るんだって。


 男性人口が少ないせいで、男性用の貸衣装は数やサイズが少なくて、集めるのが割と面倒な上に、貸衣装はお値段もかなり張るらしい。


 たまたまだけど、コスプレ衣装の製作を趣味と実益でやっている人に心当たりがあるそうだ。クラスメイトの秋月 蘭さんのお姉さんとそのお友達。男子の衣装は全て、その人たちに頼むらしい。


 一方の、女子のコスプレ衣装は、割とシンプルな無地のワンピースに襟や袖、エプロン、ヘッドドレスなどの飾りをつければいいだけとのことで、腕に覚えのある子たちが自作するそうだ。みんなリアルスキル凄いね。


 それが衣装製作班の話。


 あとは店内装飾・買い出し・料理担当・会計・担当教員や文化祭実行委員との連絡班などいろいろな役割があり、それぞれ分担。当日の接客は、全員で交代ということになっている。



「武田くん、もうちょっと腕を上げてくれる?」


「これでいい?」


「うん、そのままジッとしててね」


 なんか、女の子に身体の周囲に腕を回されるのってこそばゆい。当たっちゃいけないところが当たりそうで、ちょっとドキッとする。


「これで武田くんは、終わり。次は上杉くんね」


 採寸担当の秋月さんが、凄く真面目に頑張っている。お姉さんにかなり採寸の練習をさせられたらしい。


 こうして、クラス一丸となって準備を進め、衣装も料理も準備完了。いよいよ文化祭当日を迎えることになった。



 ◇

 ◇

 ◇



「すっごい似合う」



 文化祭当日の朝。俺は用意されたコスプレ衣装である、執事服とやらを着ている。テールコートをアニメキャラ風に華やかにアレンジしたデザインになっている。昼だからモーニングコートじゃないの?って思ったけど、コスプレの場合、似合っていればいいんだって。


 ウエストを絞った細身のスーツって感じ。本当に似合ってるのかな?


 他の4人も、とりあえず全員着てる。それぞれに合わせて、少しずつデザインを変えているところが凄い。


 そして、全員で記念撮影。カシャッ!


 これ以降は、当番制で全員が集まるのが難しいそうなので、ここで撮影会になった。


「みんなで力を合わせて、ここまで準備することができました。あとは、くれぐれも怪我のないようにと、食品を扱っているので、衛生面については、うっかりがないようにして下さい。じゃあ、それぞれ担当の場所に別れて下さい。交代の際は、時間に余裕をもって早めにお願いします」


 ということで、2-Aコスプレカフェが開店した。


 おそらく混むのは昼前から……という予想が外れ、店内は開店してすぐにどんどん人が入ってきた。


 文化祭は、今日と明日の2日間。俺たち執事5人は、午前2人・午後2人・その両方にまたがる様に1人配置で、俺は1日目の午前と2日目の午後の担当になった。


 早速仕事だ。ペアになったのは結城。どうも俺と北条はぽやんとしているせいか、それぞれしっかり者と組まされたみたいだ。


「いらっしゃいませ。ご注文をお伺い致します」


「うっわ。さすがA組、メチャかっこ良い」


「ちょっと、注文しなきゃ」


「そうだった。えっと、デコレーションプリンと、ミルクティー、ホットで」


「私は、チョコバナナクレープとアイスティー、ストレートでお願いします」


 プリンとホットミルクティー、チョコバナナクレープとアイスティストレート。メモメモ。


「出来次第お持ちしますので、しばらくお待ちください」


 ここで笑顔サービス。


「「きゃー♡」」


 喜んでくれたみたいだ。


 概ねこんな感じで、大盛況の内に午前の部は終わり、俺と結城は自由行動になった。



 *



「武田、どこ行く?」


 他の3人はカフェで仕事中なので、結城と一緒に他のクラスの催し物を回ることになっている。


 様々に工夫を凝らした催し物の中で選んだのは、縁日系の出し物。


「意外。武田って、見かけによらず、童心を持つ男だね」


 つまり、お子ちゃまってこと?


「あんまり縁日とか行ったことがないから、凄く興味がある。結城はどこ行きたい?」


「俺? 特にこれってないから、ずっと縁日巡りでもいいよ」


 やっぱり、こいついい奴。ってことで、最初はこれ。風船ダーツ。5×5に仕切られたマス目の中に、やや小さめに膨らませた風船が埋め込まれている。風船を割って、ビンゴになれば商品GET。


 〈パーン!〉〈パーン!〉


 おー。次々と風船が割れていく。結城上手い。


「ビンゴ! おめでとうございます。こちらから商品を選んで下さい」


 商品は駄菓子詰め合わせ。ちなみに、ビンゴにならなかった場合は、駄菓子をひとつもらえる。うん。さっき、1個もらった。


「次は何する?」


「射的?」


「OK!」


 その後も、輪投げ、ヨーヨー釣り、モグラ叩きとかやったけど、どれも結城は上手かった。


「縁日の申し子だな、結城」


「まあね。うち、神社だから。ちっちゃい頃から、こういうのやってたし」


「神社!? じゃあ、将来は神主に?」


「ならないよ。跡は姉さんが継ぐから、俺はフリー」


「へー。結城の家ってことは、その神社ってわりと近くだよね?その内、行ってみたいな」


「大きな祭りは終わっちゃったから、来るなら初詣かな。かなり混むけど、その分、いろいろ屋台が出るから面白いよ」


「マジ? 行くそれ」


「是非。武田のこと見たら、姉さんたちが騒ぐけど、それは気にしなくていいから」


「姉さんたち? お姉さん、何人いるの?」


「4人。煩いよ」


「姉妹が多いんだね。うちは妹が1人だから想像がつかない」


「妹いるんだ? 学校どこ?」


「ここの中3」


「武田に似てる? 似てたら凄い美人じゃね?」


「いや、あまり似てないかな? 妹は美人っていうより可愛い系だし」


「そっかあ、残念」


「結城って面食い?」


「かなり。武田は顔より食物に釣られそうだよね」


 否定できない。


「うん。料理上手な子は魅力的かな?」


「それだったら、名乗りをあげる子がいっぱいいるよ、きっと」


「そうかな? 食いしん坊の男って微妙じゃね?」


「いやいや。女の子から見たら、それってチャームポイントになりうるよ」


「そっか。ならいいや」


「いいんだ? その答え、いかにも武田らしいけどな」



 *



 その後、「男女逆転ファッションショー」を見たり、「ストラックアウト」っていうボール当てゲームをしたり、「学校パロディ劇場」や「モノマネショー」なんかを見て回った。


「案外楽しいもんだね」


「気合いが入ってるのが、予想以上に多かった」


「武田、話は変わるけどさ、バトフラの広報PV見た?」


「うん、見たよ。トレントのやつでしょ?」


「そう。それでさ、変なことを聞くようだけど、あの時、俺たち何人で行ったか覚えてる?」


「えっと……7人?」


「……そうだよな。それ以外いないもんな」


「どうしたんだ?」


「いや。華師が1人もいないなんて、バランスが悪いパーティだなと思って」


「あー、俺もそれ思った」


「本当に? なんか他に気になることはなかった?」


「気になることか……」


「なんかあるの?」


「いや。あのPVを見たとき、チラッと思ったんだ。何で緑色がいないんだろうって」


「緑? どういう意味、それ?」


「いや。俺にも分からない。ただ、そう思ったんだ」




 ◇

 ◇

 ◇



 間接照明が照らす落ち着きのある暖かい色合いの室内。そこでくつろぐ1組の男女がいた。ふんわり沈むソファに腰掛けた2人は、女性が少年を労わるように、そしてひっそりと囁くように会話を交わしている。



「どうしたの? 廉?」


「……人数が、合わないんだ」


「合わないって?」


「どう考えても、俺の記憶から消えている人間がいる。絶対にいたはずなのに、誰にとってもいないことになってるんだ」


「それは、あの日記帳と関係があるのかしら?」


「分からない。みんな平気な顔をしてる。でも、何かが起こっている気がして怖いんだ」



 何かおかしい。


 最初はふとそう思っただけだった。しかし、胸騒ぎに近いその違和感を看過できず、それからずっとその原因を探し続けた。そして今、その違和感はさらに大きくなっている。


 3人以上いないといけないはずのC組男子が、誰かやめたという話も聞かないのに、いつの間にか2人に減っている。


 武田が転入してくる前、A組の男子は4人しかいなかった。B組に5人いるのだ。


 学年の始めに、A組から順番に配置していくはずの男子生徒が、B組に5人いてA組が4人だけっていうのは明らかに変だ。急に欠員が出たって記憶はない。なら、4月にはA組にも5人いたはず。なのに、そこだけぽっかりと記憶が消えている。


 事前にバランスよく役割を振ってメンバーを組んだはずなのに、華師がいないパーティ。


 明らかに人が欠けてる。それも、1人じゃない。消えたのは、おそらく2人だ。でも、それに関する記憶は、消しゴムをかけたみたいにキレイに消えてしまって……。



「勘違いってことは?」


「ない。俺以外にも、違和感を感じている奴を見つけた」


「本当に? その人は何て?」


「そいつは、緑色がいないって言ってた」


「緑? 青じゃなくて? ……それはどういう意味かしら?」


「分からない。聞き返したけど、なんとなくそう思ったって。でもそいつは、男子生徒の人数が合わないとは思っていないようだった」


「人によって、記憶がずれている? 部分的な誤認かしら?」


「分からない。でも、酷く嫌な感じがする」


「……怯えないで、廉。あなたがそう感じるなら、何かが起こっている可能性があるわ。でも、あなたは私が必ず守ってあげる。……私にはその力があるもの。きっとそれがこの家に、そして私たちに与えられた役目なのだから」



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