表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/42

Page 03 なにこの不自然な「▶︎」

 




 ◆プロフィール◆


 武田(たけだ) 結星(ゆうせい)


 誕生日 8月30日 16歳


 身長 178cm 体重 ?


 私立 栄華秀英学園高校 2年生 転入 (転入日 本日)


 家族構成:


 父 武田 雄星 44歳 会社員


 母 武田 結子 42歳 会社員


 妹 武田 結衣 15歳 中学3年生


 両親は別居。母は海外に出張中。


 母親が戻るまで、この家で妹と二人暮らし。


 ▶︎



 6月6日のページに、さっきまではなかった記載が現れていた。


 これ、どういうこと?


 それにしても、なんだこのザルなプロフィールは。いきなり高校からとか。



 そして……いかにもこの不自然(あからさま)な「▶︎」。これって、もしかして三角ツリー?


 ポチれってか? いいぞ、[ポチ]。


 試しに三角の記号を押すように、紙の上に指を滑らせると、




 ▼

 保有スキル(日記帳所有者(ダイアリーホルダー)特典)


【青雲秋月】平常心を保つ


【悠々自適】気の向くままにのんびり暮らす


【眉目秀麗】容貌が優れて美しいこと


【天資英邁】生まれつき才知が非常に優れていること


 ◆現在の作戦

可惜身命(あたらしんみょう)】身体や命を大事にする



 あらら、本当にツリー展開したよ。このページ、どう見ても紙なのに。今に始まったことじゃないけど、やっぱり変だよな。


 それに、保有スキルってなんだ?


 まさか、この説明文つき四字熟語がスキルだっていうのか? あと、「日記帳所有者(ダイアリーホルダー)」ってなんだよ。


 意味わかんないよ、こんなの。


 ……もしかして、ラノベでよくあるあれか? 


 一旦死んで別人に生まれ変わるとか。異世界に行っちゃうとか。ああいうのによくありがちな、電車に轢かれたっていうのが俺の死因みたいだし……って、そんなわけないか。ないよな? 


 でも、このプロフィールを見ると、全ての項目で自分のこととは思えない。どれも真新しく、知らない人のことのように思える。やはり、以前とは別人になっているんじゃないかなぁ。


 いやいや、待て。結論を出すには早過ぎる。


 どう見ても、この家っていうか、この部屋には見覚えがあるんだよ。窓の外を眺めても、よく見知った気がする、ごく普通の日本の住宅街の風景だ。


 スキルとか、プロフィールとか出てきて、おかしいことだらけだけど、こんなに日本そっくりで、まさかゲームの世界とか異世界ってことはないよな!?


 ……とりあえず、ちょっと調べてみようか。



 ◇

 ◇

 ◇



 今日は転入初日らしいが、学校は休むことにした。


 無断欠席になってしまうが、この世界が本当にリアルなら、後で学校から電話の1本でもかかってくるだろう。なんか呑気だな。俺ってこういうやつだったっけ? 


 さて、まずはこの部屋からだ。


 おっ! 早速スマホを発見。これにも見覚えはないけど、引き出しの中に入っているくらいだ。きっと俺のだよな?


 スマホを手に取る。電源は……入ってるじゃん。ロックは……かかってないみたいだな。


 まずは、連絡先をチェック。


 うん。登録件数0件。


 使えねえな。……これが俺のスマホだっていうなら、この家の電話とか、家族の連絡先くらい載せておけよ。



 〈 ! 〉



 おい。視界の隅で日記帳が光った。またもや不気味な赤い光だ。


 スマホに視線を戻すと……出てきたよ、連絡先。登録件数が4件になってる。家と両親と妹。



 ……いやだからさ、願いを叶えてくれるのはいいんだけどさ、なんって言ったらいいのかな……そう! あれだよ。


 [確認]


「本当にしますか?」とか聞いてくれるやつ。これでよろしければ、[確認ボタン]をポチッてねとか。そういうのが欲しいんだよ。


 ゲームとかにあるじゃん。そういうの。


 目の前に[確認]メッセージが浮かぶとか、念話で(アナウンス)が聞こえるとか。


 それをよろしく。



 日記帳……光らない。なぜだ? と思ったらきた。



 《システムを改変するには、管理者の許可が必要です。改変しますか?》



 おわっ!?  なにこの怖いメッセージ。頭の中に響く声と、目の前に浮かぶ字幕の両方が同時に出てきたし。


 システム改変って、さっき俺が思った確認ボタンの作成のことを指しているんだよな、きっと。


 よく考えろ、俺。


 普段何気なく思ったことを、なんでもかんでも「願いごと」にされちゃかなわない。そうだろ? だって、それでもし寿命が縮むとかだったら大変だし。


 従って、思いついたことを実行する際には、[確認]が必要になる。当然だ。


 でも、全部が全部それでいいかっていうと、そうでもない。


 なぜかっていうと、この世界は、常ならざる意志が働くおかしな場所だ。これから俺の予想を越えるような何かが起こったとしても、全く不思議じゃない。


 だって、俺の知らない謎理屈がまかり通る世界なんだから。


 それに、人生をまたやり直せるのだとしたら、日記帳にあったような出来事は、もう二度と御免だな。今世は平和にのんびり生きて大往生したい。


 だったら、例えば運悪く交通事故に遭った時とか、暴漢にいきなり襲われた時、命に関わる病気に罹ってしまった時や、また万一だが、ファンタジックな異様な化け物が出てきた時とか。


 ……そういう時は、即座に助けて欲しいよな。そして、そういう時には、[確認]は要らない。


 それでどうだ?


 《システムを改変しました。()()()()()()[確認]を必要とします。》


 どうやら通じたみたいだ。



 はあ。初っ端からこれか。


 やれやれだ。


 そうだ。腹が減ってるんじゃん、俺。


 どうせ時間がかかるだろうし、調べ物は後でいいや。まずは飯を食おう。



 ◇



 朝食は、意外なことに和食だった。


 ごはんとワカメの味噌汁。おかずは、ちょっと甘い厚焼き玉子と香りの良い青菜のごま和え、小さめの焼魚。それにプチカップの納豆に味付け海苔。


 胡麻和え好き。ちょい出汁が効いていて美味い。


 結衣が作ったのか?


  やるじゃんか。まるで旅館の朝ご飯みたいだ。不思議なことに、俺自身のことについては、ほとんど何も覚えていないにも関わらず、こういったことは、ちゃんと思い出せる。




 ご馳走さまでした。


 食器ぐらい洗っておくか。お腹がいっぱいになったので、それからまた部屋に戻って調べ物を再開した。


 途中、学校の担任っていう女の人から電話がかかってきたけど、体調が悪いから明日行きますって返事をしたら、それで大丈夫だった。


 すごく心配してくれている様子だったから、無断欠席とか、悪いことしちゃったかな。


 昼飯は、冷蔵庫の中にあった、タッパに詰められた総菜を適当に食べた。残り物っぽい肉じゃが。でも、蕩けかかったジャガイモによく味が染みていてうまかった。これも結衣が作ったのかな?


 明日は学校か。


 あとで、制服とか学校用品が揃っているのか、チェックしないとな。部屋の中にある物のリストを作らないと分からなくなりそうだ。持ち物については、結衣に聞かないといけないものもありそう。




 ◇

 ◇

 ◇




「武田くん、無理はしなくていいのよ。でも、体調がよくなったら学校に来てくれると嬉しいわ。……転入したてですもの。顔を出すだけでも大丈夫だから。…………そう、それはよかった。じゃあ、明日、学校に来たら、まず職員室へ寄ってくれるかしら。朝のHRでクラスのみんなに紹介するから。じゃあ、今日はゆっくり休んでね。お大事に」


 ふぅ。


 受話器を戻すと、つい息がこぼれて身体から力が抜けた。らしくもなく緊張しちゃったわ。


「佐藤先生、転入生はなんて?」


「明日は来るそうです。今日は体調が悪くて休んだらしくて」


「そうか。時期外れに転入するということで、ストレスを感じているのかもしれないな」


「やはりそうでしょうか?」


「元々メンタルが弱いという可能性もある。実際に登校して来て、何か問題がありそうだったら、私にも教えてくれ。これは、君のクラスだけじゃなくて、学年全体の問題でもあるからな」


「ありがとうございます。学年主任が水島先生で、とても心強いです。男女混合クラスは初めて受け持つので、私では判断が難しいことも、思っていた以上に多くて。これからご迷惑をおかけすると思います」


「気にしなくていい。君はよくやっているよ。特に、今回はアクシデントというか、想定外の事態が起きたから、大変なのはみんな分かっている。クラスが落ち着くまで、ある程度の時間が必要だろう。気負う必要はないよ」


「そう言って頂けると、少し肩の荷が下ります」


「さっきも言ったけれど、これは学年全体の問題でもある。私や他のクラス担任も含め、全員で協力し合って、この学年を運営していこうじゃないか」


「はい。よろしくお願いします」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆こちらも是非よろしくお願い致します。◆

   

♡ラブコメ版連載中♡『この男に〈甘い〉世界で俺は。〜男女比1:8の世界で始める美味しい学園生活〜 ラブコメver. 』

   

「不屈の冒険魂」 ガチ神官物語[ISAO]The indomitable spirit of adventure online◆神官「ユキムラ」が頑張る話

   

『次元融合』〜ゲームに侵食され分断された世界を旅する冒険紀行〜◆ゲーム世界がゲームではなくなって?「不屈の冒険魂」主人公が再び登場

   

小説家になろう 勝手にランキング

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ