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恋と夕立

作者: NY

初投稿です。

拙い文章ですが、どうぞよろしく。


別に好きな人がいるわけじゃないけれど、

突然、胸が熱くなることがある。

別に好きな人がいるわけじゃないけれど、

何かが寂しくて眠れない夜がある。

別に好きな人がいるわけじゃないけれど、

誰かの声が聞きたくなる時がある。

その度に僕は、高校生っていうのはこういうものなんだ、と自分自身に言い聞かせてはきた。が、今しがた、一人歩く曇り道のもとで、自分がそのぶつけようのない(わだかま)りを正当化しようとしているという事実に直面すると、どこか虚しくなる。


ふと見上げると空のオレンジ

仲間を見つけ鳴くカラスの声

瞬間、ポツリと雫がひとつ

僕の視界を縦断する。


夕立だ。ついてない。

予報外れというやつだ。

傘なんて持っている筈もなく、僕はびしょ濡れになる。

だが、いい。これでいい。

このどうしようもない蟠りが、雨に打たれ、流されることで、消え行くのではないかとさえ、思っている。



「寒くないの?」



ふと、後ろから声がする方を見ると、クラスメイトの上坂さんがいた。あまり話したことはない。


「暑すぎたからね。汗が流れて丁度いいぐらいだよ。」

「馬鹿じゃないの。入んなよ、傘。」

「別に大丈夫だよ。もう家着くし。」


変な噂が立つと面倒なので丁重に断らせてもらう。彼女としても、それはごめんだろう。というか、僕を傘に入れて彼女に何のメリットがあるのだろうか。


「というか、僕を傘に入れて何のメリットがあるの?」


やってしまった、と思った。

失礼なことを言ってしまった、と思った。

思ったことをすぐに口に出してしまう、昔からの悪い癖だ。

僕が、人と話すことが下手だと言われる所以だ。

物事の重要性をメリット、デメリットで決めるという凝り固まった価値観も然り。

せっかく厚意で接したのに、この僕の不遜な物言い。

彼女の機嫌を酷く損ねてしまったのではないかと、僕は後悔し、直ぐ様、謝罪した。


「ごめん、今の言い方は失礼だね。忘れて――――」


しかし、彼女の返事は、



「別にメリットとかデメリットとかそういうんじゃなくて、『私がやりたいからやる』って、ただそれだけのことなんだけど。」



と意外なものだった。

そういう考え方もあるのか、と僕は酷く驚嘆した。

ひねくれた価値観を持つ自分が恥ずかしくなる程に。


結局、僕は彼女の傘に入ることなく帰宅した。

特に意味はない、が強いて言うなら話している間に雨が弱まっていたとでも言うべきか。しかし、流石に風邪をひいてしまったかな。身体が怠い。もう今日は早く課題を終わらせて寝てしまおう。流行りのラブソングでも聞きながら。


別に好きな人がいるわけじゃないけれど。




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