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神殺しのアンビシャス  作者: きりきり
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王の末裔たち

 はじめまして! きりきりと申します。

 小説家になろうには初めて投稿させていただきます。どころかネットに小説を公開すること自体が初めてです。

 拙いところはありますが、この作品が出来上がるころには少しは文章が巧くなっていたらと思っています。

 どうかよろしくお願いします!

 誰よりも国を愛していた。誰よりも民を慈しんでいた。そんな誰よりも偉大な賢王がいた。しかし彼の国は一夜にして滅びた。逃げた王に残されたのは友人の死と引き換えに守られた自分と、友人の血族だけだった。

 王は誓った。必ず国を取り戻すと。

 例え幾千年の時がかかろうとも――。


第一章 異形の穢神


 早朝。屋敷の道場で俺は従兄弟の百貴ももきと打ち合っていた。百貴は俺より一つ年上で、この屋敷を実質的に取り仕切っている。いうなれば俺のお目付け役のようなものであり、優秀な逸材として評価されている。その点は俺も理解してはいるのだが、普段の言動のせいで素直に評価しがたいやつである。


「そういえば桃理とうりさん……!」


 打ち合いの最中に百貴が話しかけてきた。その間にも鋭い蹴りが俺の頭を狙って放たれる。俺は左腕で受け流しながら返事をした。


「昨晩百花から聞きました。百花ももかに耳かきをさせたそうじゃないですか」


 百貴はいったん足を引っ込め、俺を蹴り付けながらバク転をして間合いを取った。そしてそこから強烈な当身を放ってくる。全身を使ってなんとか受け流すも、再び打ち合いに繋がった。


「それがどうかしたか――!」


 俺はいったん距離を取ろうとするが、百貴はそれを許してくれない。手を緩めずに打ち込み続けてくる。俺はしのぐだけで精いっぱいだ。


「風呂上がりに縁側で涼んでたら百花が誘ってきてな。床は堅いからって膝枕をしてくれて……」


「お風呂上がりの百花に膝枕をっ!?」


「風呂上がりだったのは俺の方だ――っ! ……それにちゃんと百花にも耳かきしてやったぞ」


「なっ!? 百花にも耳かきをしたというのですかっ!?」


「礼をするのは当たり前だからな。なのに百花のやつ遠慮しやがってさ。だから半ば強引に引き倒してやったんだ」


「強引にっ!? 嫌がる百花に強引にっ!? あ、あなたは自分が何をやったのかわかっているんですか!?」


「もちろん。ただの耳かきだ」


「いいえ。あなたはやってはいけないことをした。私の可愛い妹に手を出すなんて、たとえ神が許しても私が許さない! いざ、お覚悟!」


 百貴の連打が一気に激しくなった。強烈な突きを受け止めれば首を刈り取るような回し蹴りが。すんでのところで躱したと思ったら胸ぐらを掴まれて床に叩きつけられる。


「……桃理さん、これも訓練です。一方的に殴られる痛さと怖さを乗り越えて成長して見せてください」


「ひっ! ちょっとま……」


 そこから先はただひたすらに一方的な暴力が振るわれた。飛び交う暴威の中で、俺は今度百花に耳かきを持ちかけられた時は絶対に断ろうと胸に誓ったのだった。

 そんな朝の鍛錬が終わり、いまだに寝ていた百花を起こして百貴が作った朝飯を食べ終えたところで、そろそろ学校に行かなくてはならない段になった。

 中学校に通う百花とは向かう方向が違うので玄関で別れる。ちなみに俺と同じ高校に通っている百貴は生徒会長を務めているの。今日は朝から生徒会の用事があるらしく、一足先に登校している。

 百貴は生徒会長として優秀で、生徒からも人気のようだ。しかし家での百貴を知っている身としては、優秀さはともかく、どうしてそこまで人気なのかはいまいち理解できん。

 百貴の人望の理由を考察しながら通学路を歩いていると、突然背中に鋭い痛みが走った。


「おっはよー!」


 どうやら背中を叩かれたらしい。今はそういう悪ふざけも体に響くからやめてほしいんだが……という気持ちを込めて振り返ると、同じ高校の女子生徒であり、俺の幼馴染の大上巴おおうえともえがいた。


「……ってどうしたの桃理! ボロボロじゃない!」


 巴はガーゼとシップまみれの俺の恰好を興味深そうに眺めている。鍛錬のあと、百花を起こす前に手当したものだが、何せ自分でやったものだから必要以上に不格好になっているかもしれん。


「なんでもない」


「はっはーん。さてはまた百貴さんに揉まれたんだね? いっやー相変わらずですなー!」


 巴はうちの人間とも仲がよく、一時期は入り浸っていたほどだ。高校に上がってからはそんなこともなくなったのだが、今でもよく絡んでくる。俺にとっては悪友のような存在だ。


「……たく。お前は朝から無駄に元気だな」


 背中の仕返しに軽く皮肉を言ってやると、


「元気だけが取り柄みたいなものですからな!」


 巴はなぜか自慢気に胸を張った。


「自分でいうかよ」


 俺がやや呆れ気味に返してやると、にやりと意地の悪い笑みを浮かべて、


「家柄だけが取り柄の桃理よりはましですからな!」


 などとぬかしやがる。俺はカチンと来て、


「ああ?」


 と、不良も真っ青になるほどと自負している恫喝フェイスを向けてやるも、巴には少しも効果がないようで、


「おやおや、怒っちゃった? それならほらほらー! 私を捕まえて御覧なさ~い!」


 とかなんとか喚きながら先行して挑発してくる。

 しかし俺には巴を追いかけるだけの余力がなく、ただ恨めし気ににらむことしかできなかった。


「……もう、しょうがないなあ」


 そんな俺の態度に何を思ったのか、巴は鞄を漁りながら近づいてきて、何かを取り出したかと思うと俺の頬に貼り付けてきた。確認してみるとどうやら絆創膏を貼られたようだった。


「そいつがありゃあどんな怪我でも一発だぜえ! へっへっへ」


 巴はバカみたいな笑い声をあげながら、呆然とする俺を置いて先に行ってしまった。

 そんな巴の背中を見ていると、思わず呆れ笑いが漏れてしまう。

 俺は気を取り直して再び歩き始めた。怪我の痛みが少しだけ引いた気がした。

 それから学校に向かってのんびり歩いていると、曲がり角のところで危うく人にぶつかりそうになった。


「おっと……すみません」


 慌てて身を引いて衝突を回避する。そして角から出てきた人物を確認すると、同じクラスの庚更紗かのえさらさだった。

 庚更紗は美少女だ。頭脳明晰、スポーツ万能、品行方正。クラスどころか学校中でも可愛いと評判だったが、その周囲にはだれであろうと寄せ付けないような名状しがたきオーラを纏っており、仲良くなったと者は誰もいなかった。

 しかしあるとき庚が、別のクラスの連中につっかかられている同クラスの生徒を助けるという出来事があって以降は、クラスの女神様的な存在として扱われている。

 見たよし、頭もよし、運動も出来て人望があるというと、なんだかあいつを思い出してしまって、俺は別の意味で庚に近づきがたかった。

 さて、そんなおおよそ完璧といえる美少女学生である庚更紗だが、自分とぶつかりそうになった男子高校生こと俺に対しては謝罪の一つもなく、さっさと歩き去ってしまった。

 庚更紗も百貴と同様に、非の打ち所がない完璧超人……というわけではないということだ。

 そんなことがあって、普段より少し遅れて学校に着いた俺に、聞きなれた叱咤が飛んできた。


「桃理! 遅いですよ! あと五分で遅刻するところじゃないですか!」


 どういうわけか校門の前に百貴が立っていた。その後ろには生徒会の面々がカゴや書類を持って並んでいる。

 いったい何事だと思っていると、百貴が前に進み出てきて俺に手を差し伸べてきた。


「さあ、鞄を出しなさい」


 どうやら生徒会の用事とはこのことだったらしい。


「今日は持ち物検査があったんだな。ほら百貴」


 俺は百貴に鞄を渡した。後ろで生徒会の女子生徒が書類に何か書きつけている。


「こら桃理! 学校では私のことは生徒会長と呼んでくださいと言っているじゃないですか! 何度言ったらわかるのです!」

 

「ああ、悪い悪い、百貴会長。これでいいか?」


「……まあいいでしょう」


 百貴はまだ何か納得がいっていなかった様子だったが、不承不承といった感じで頷いた。まったく、ちゃんと会長と呼んでいるというのになんが不満だというのだろうか。

 ところでさっきから書類に何かを書き込んでいる女子生徒の様子が少し変だ。やたらと熱が入っているような……。


「……さあ、鞄の検査は終わりましたよ。今度は身体チェックです。腕を横に挙げてください」


「はいはい」


 次に百貴は、両手を広げた俺の体を順々に叩いていった。後ろの女子生徒のペンを走らせる勢いがすごいことになっている……。


「お、おい百貴、くすぐったいんだが……」


「我慢しなさい。すぐに終わりますから。それと会長を付けなさい」


 そう答える百貴だが、どうにも手つきがおかしい気がする。妙に丹念というか、俺の全身を隈なくなぞっている。

 ああ! ついに後ろの女子がエビ反りなって倒れこんだ! それでもペンを握る手は止まらない! なんという執念! いったいなにが彼女をそこまで突き動かすのか!


「……はい、終りました。早く教室に向かいなさい」


 百貴が俺の鞄を渡してくれる。俺は礼を言って、いまだに熱が冷めやまないといった感じの女子生徒に脅えながら急いで校舎の中に入っていった。

 教室に向かって階段を駆け上がる途中、体の痛みが消えていることに気づいた。先程の持ち物検査で百貴が俺の全身を入念にチェックをしていたのは、今朝がた自分が負わせた怪我の治療をしてくれていたかららしい。

 朝の鍛錬は義務のようなものであり、俺がどんなに怪我しようが百貴が気にする必要はないというのに。

 ……まったく、妙なところで気を遣ってくれる。

 俺は小さく礼を言って先を急いだ。

 このような拙作をここまで読んでいただいてありがとうございます!

 投稿する前にかなりの文を直したのですが、気になる点、こうしたほうがいいというアドバイス等をしていただけるならうれしいです! 批評歓迎! どんとこい!

 それではありがとうございました。

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