説得
「……国王?今なんて言った?」
春輝が聞き返す。
隣ではサラが顔を伏せて俯いている。
彼女の拳は、血がにじむほど強く握り締められている。
「魔王には、死んでもらう。こやつが死ぬところを民に見せれば民衆の怒りも収まる。当然の報いであろう。」
そう言って口角を吊り上げる国王。
春輝は怒気を発しながら、国王を睨みつける。
「……この子は殺させない。約束は守らないといけないからな。」
「主殿……。しかし、そんな事をすれば……。」
その言葉を手で静止する春輝。
「国王、この魔王を殺すつもりなら、俺はこの国を滅ぼすことをいとわない。」
「そんな事をすれば、リオネスの執事ではいられなくなるが?」
「それでも構わない。この子がそれで救われるなら。」
「……貴様の忠義はそんなものなのか?」
「あいにく、ここでこの子を見捨てたりしたらお嬢様からこっぴどく怒られることは目に見えてるんでね。」
そういって肩をすくめる春輝。
ジルがそこで助け舟を出す。
「国王様、彼は魔王を従属魔法によって従えています。場合によってはこの先、切り札として活かせるやも知れません。」
「……そうか。ジル、お前がそういうのならそうなのだろう。
ならば、春輝といったか?お前の配下としてその魔王を付けろ。それで今回の件は何も無かったことにする。魔王なんてこの国に襲来せず、依然として魔王によって民の平和は脅かされている。それでどうだ?」
「分かりました。というより、元よりそのつもりでした。」
そう言って頭を下げる春輝。
そんな彼を終始驚いた表情でサラは見ていた。
(これでは、どっちが従者か分からないではないか。)
そう思って、サラは苦笑いするのであった。




