従属魔法
いち早く我に帰ったジルが、わめいている春輝とサラに近づく。
「春輝殿、どうされたのですか?」
「あ、ジルさん。ジルさんは、この手首の黒いアザみたいなのがなにか分かりますか?」
「……私も見たことがございません。鑑定の魔眼で見ても良いですか?」
「ええ。お願いします。」
「その必要は無いぞ、老人。」
そこで口を出すサラ。
「この魔法は、従属魔法だ。知らないのも無理はない。本来ならとうに忘れられたはずの禁術なのだからな。」
「禁術……ですか?」
「ああ。私も、実物を見るのは初めてだ。……この執事は何者なんだ?」
「元勇者です。今は私と同じ主の執事をしております。」
「それは、勇者ではないのか?」
「魔王を倒すために動くのが勇者であるならば、彼は勇者ではありませんよ。」
「で、従属魔法って何なんだ?結局。」
そこで口を挟む春輝。
「それはだな、執事……。いや、もうこの際、主殿と呼ばせてもらおう。簡単に説明すれば、下僕を作る魔法だ。」
「し、下僕?」
「ああ。このアザのせいで、主殿は私に対する絶対命令権を得たというわけだ。これに抗うのは魔王である私ですら、不可能だ。」
「へー。命令権を得る魔法か。禁術としてはしょぼいな。」
「……それだけじゃない。この魔法の一番恐ろしいところ、それは、[主が死ねば従者も死ぬ]という所だ。」
「……は?」
呆然となる春輝。
ジルは黙って目を瞑って聞いている。
「え?じゃあ俺が死ねばお前まで巻き込まれるのか?」
「そういう事だ。無論、メリットもあるのだぞ。
この魔法のメリット、それは命令権と経験値の共有化、そして位置特定ができる点だ。」
「……なあ、それさ、術者にデメリットがないよな?」
「ああ。だからこそ禁術なのだよ……。それと、これはあまり言いたくないのだが……、主殿と私の絆が深まれば深まるほど、双方の力が上がっていく。」
「……絆が深まるっていうのは、その、あれか?エロいことしないといけないとかそんなのか?」
「ば!バカをいうな!確かに、エッチなことをすれば絆は深まるかもしれないが、絶対に必須という訳では無い!勘違いするな!」
「あ、はい。すいません。」
そう言って、サラに平謝りする春輝。
「しかし、妙なことになったな……。」
「これで私と主殿は一生離れられなくなったわけだな……。はあ……。こんな事であたしの運命の人が決まるなんて……。もう、最悪……。」
「うっ……、その、すまん。」
そう言ってさらに頭を下げる春輝。
諦めたように、サラはため息を吐くのだった。




