日常編 part1
「あ、この紅茶美味しいです。」
「ジルさんに美味しい紅茶の淹れ方を教えてもらったんだ。口に合えばいいけど。」
「春輝君の作るものなら何でも美味しいですよ。」
「そう言ってもらえるなら、嬉しいよ。ありがとな、美冬。」
「はい。こちらこそ、ありがとうございます。春輝君。」
いつも通りのやり取りをする美冬と春輝。
それをニヤニヤしながら見守る真人と千秋とリオネスとミーシャ。
愛歌は、春輝の作ったクッキーを頬張っている。
勇者達は、あの後すぐにオリガに、「今日はゆっくり休め!」と言われて、みんな部屋に戻るなり城内を散歩するなりしている。
そして、真人たちは、リオネスたちと共にお茶会をしているというわけである。
「しかし、随分と大変だったみたいだな。」
「そうですね。30階層の時なんて、本当にギリギリでした。でも、結構楽しかったです!」
「俺の彼女はいつから戦闘狂になったんだろう。まあ、別にいいんだけども。」
そう言って苦笑する春輝。
美冬はその言葉に頬を少しふくらませながら、
「あ、春輝君、その言い方はひどいですよ。戦闘狂な訳ではありません。ただ、みんなでああやって力を合わせて戦ったり、自分の全力をぶつけられるのが楽しかっただけですよ。」
「そうかそうか、楽しかったようで何よりだ。」
膨れっ面の美冬の頭を優しく撫でる春輝。
美冬も、撫でられて嬉しそうに目を細める。
「ねぇねぇ、真人さん。今、俺と真人さんの考えている気持ちが同じだと思うんだ。」
「奇遇だな、千秋。俺もちょうどそう思っていたところだ。」
「「なんで、爆発しないかなぁ……。」」
「お前ら、不吉なことを言うな。そのネタはこの世界ではシャレにならんぞ。」
「いやだってさ、こんなに見せつけられたら、ハル兄とはいえイラッとくるよ?」
「……そうか。美冬、2人っきりの時に思いっきりいちゃつくことにしようか。」
「今度は気絶しないでくださいね?」
「善処します……。」
そんなやり取りをしつつ、ゆっくりと時間は流れていった。
直也が王城を散歩していると、植物園の中に美しい少女とメイドが2人でお茶を飲んでいた。
そして、直也に気づいた少女がジッと直也のことを見つめる。
「あの……、俺の顔になにかついてる?」
見つめられていた直也が少女に問いかける。
「あ、す、すいません。」
言葉をかけられた少女が顔を赤くし、俯く。
「そ、そのですね。あなたから、辛そうな感情が見えたのでどうしたのかな?って思って……。」
そんなことを言い出す少女。
「辛そう……か?」
そう言って苦笑いする直也。
「あ、あの、私で良ければ、お話を聞かせてもらえませんか?何だか、気になってしまって……。」
「……あまり聞いてて面白い話なんかじゃないぞ?それでも聞きたい?」
直也がそう言うと、少女は顔を上げ、直也の目をジッと見て、
「はい。」
と答えた。
「分かった。じゃあ、どこから話そうか……。」
そうして、直也が話を始める。
少女は、ずっと興味深げに話を聞いていた。
その態度に、直也もするすると、自分の感情や、辛かった話を吐露したのであった。
「と、いうわけさ。な?俺なんて最低な奴だろ?自分の意思で裏切った挙句、まだ仲間で痛いと思ってるのさ。」
「……別にいいんじゃないですか?」
そう返す少女。
その言葉に驚き、少女に目を合わせる直也。
「誰しもが、仲間に後ろめたい感情を抱くものだと思います。でも、それを後ろめたいと思う時点で、あなたはちゃんと、自分の犯した罪の重さを自覚できています。本当に最低な人は、犯した罪の重さを感じられませんから。大丈夫ですよ。あなたは悪い人なんかじゃありません。」
そう言って言葉を区切り、少し時間をおいて口を開く少女。
「私が、保証しますよ。あなたは悪い人なんかじゃないって。」
その言葉に、直也は心の底から、救われた気分になった。
少女はその後、ハッとした様な表情になって、赤くなりうつむきながらぼそぼそと口を開く。
「すいません、私なんかがこんな事言って……。」
すると直也は慌てたように返事をする。
「い、いや、その……、ありがとう。」
その言葉に、顔を上げて、満面の笑みで笑う少女。
「そういえば、君、名前は?」
「あ、名乗り忘れていましたね……。すいません。私の名前は、アイリ=リーデル。この国の第二王女です。」
その言葉に、直也は目を丸くして、
「えぇぇぇぇぇ!?」
と叫んだのだった。
その様子をくすくすと笑うアイリであった。
夜になり、いつも通り春輝の部屋に美冬は来たのだが、その目は怪しく輝いていた。
「さて、春輝君。この前の続きですよ!」
「美冬、なんでそんなにノリノリなの!?」
「春輝君がずっと相手をしてくれないからですよ!最近キスもしてませんし!」
「それに関してはごめ、ンッ!?」
春輝が言い終わる前に濃厚なキスを交わす美冬。
口を離すと、ふたりの混ざった唾液が糸を引く。
「……春輝君。いいですよね……?」
「ちょっと、待って!美冬!あっ!やめっ!ダメぇぇぇぇ!」
美冬が春輝の服に手をかける。
春輝の叫び声が虚しくも部屋の中に響くのだった。




