お仕置き
ああ、この撫で方。この声。そしてこの微笑み。春輝君だぁ……。
そんなことを思いながら、撫でられた美冬は恍惚そうな表情を浮かべる。
その表情を見て、春輝は少し眉をひそめ、撫でている手に魔力を込める。
すると、美冬の体の熱は、途端に退いて、酔いから醒めたような感覚を美冬は覚える。
そして、自分のしようとしていた事に対して、春輝に後ろめたい気持ちを覚え、涙を浮かべながら謝罪をしようとして、顔を見るが……、
既に、彼の顔は彼の普段浮かべている笑みからは想像もつかないほど、憤怒の表情に染まっていた。
「美冬。後でお仕置き、な。」
それに背筋をゾクッとさせるも、どうしてか少し気持ちよくなってしまう美冬。
春輝は、目の前で起き上がってきているフェデルクを見据える。
その目はまるで、この世にあってはいけないものを見ているように感じさせる、そんな、死神すらも縮こまるような冷ややかな視線だった。
「さて、美冬に触れようとしたという事実だけで重罪だが、お前にはおそらくだけれど、もう一つの罪がある。」
「ああ!?てめぇこそ俺が目をつけた女に手を出してんじゃねぇよ!」
「は?お前、状況がわからないのか?」
そう言って、魔力手刀と光線、そして無限収納からギ○ガメッシュのように大量の剣を覗かせる春輝。
それに恐怖するフェデルク。
「さて、質問だ。というよりも確認だな。お嬢様に、呪いを仕込んだのはお前だな?」
「お、お嬢様ってのはリオネスのことか?な、なら俺を殺せば、リオネスが悲しむぞ!」
「はは。面白い冗談を言うな、お前。まさか、殺すわけが無いだろう?」
「そ、そうか。ならその剣を閉まえ!不敬だぞ!」
「……お前、本当に面白いな。ピエロの素質があるぞ。
殺すなんて……勿体ないだろう?」
そうやって笑う春輝。
しかし、その目には怒り以外の感情が感じられず、よりいっそう震え上がるフェデルク。
そこで、主の危機を感じた黒魔術師である直也のデバフ魔法が飛ぶ。
春輝はそれを無限収納に収納しつつ、直也の顔の前に手をかざし、暗示状態を解除する。
「ふーん、暗示の魔眼と魅了の魔眼か。……そうだ!いいこと思いついた!」
そういって子供のように笑う春輝。
それを見て、何故か背筋をふるわせたフェデルク。
「まずは、魔眼を回収してっと。」
そう言って、フェデルクの前に手をかざす春輝。
フェデルクは身動きすら取れないまま、されるがままである。
「さて、じゃあ、面白いこと、しよっか!」
そう言って、無限収納をもう一度起動する春輝。
そして、一連の作業が終わると、フェデルクは精神的な疲労のせいか倒れ込み、春輝はフェデルクと直也を両脇に挟んで、美冬の部屋の前にぺいっと放り出す。
「さて、美冬。お仕置きの時間だ。」
「春輝君、その、本当にごめんなさい!私は……。」
「分かってる分かってる。美冬は操られてたんだから仕方が無いってことも分かってる。それに、それを美冬は辛く思う子だってことも分かってるさ。」
「そ、そうですか。……その、春輝君、お仕置きって……?」
「何もして上げない。」
「……え?」
そう言っていたずらっぽく笑う春輝。
「どうせ、今の美冬は魅了の魔眼のせいで体が火照って下着の中とかも大変なことになってるんだろ?」
「……それは……、そうですけど……。」
そう言って顔を赤くする美冬。
「だから、何もして上げない。それが俺のお仕置きだ。もちろん、言葉責めはするけどな。」
「……え?」
「さて、美冬。お前は、俺というものがありながらほかの男に抱かれようとしてたよな?」
「は、はい。それはその、申し訳ないというか……、なんというか……、ひうっ!?は、春輝君!?何を……ひゃっ!?」
美冬の、少し湿った下着を服の上からなでつつ、耳元で声をかけ続ける春輝。
「いけない子だな?美冬は。こんなに感じちゃって……。」
「ひゃっ!……ご、ごめんなしゃっ!?」
突然、美冬が言い終わらないうちに、美冬に抱きつく春輝。
その体は震えていて、美冬は少し驚く。
「寂しかった……!つらかったんだよ!こんなにも簡単に美冬がほかの男のものになってしまったことが!すこしだけとはいえ、美冬があいつに触れられたことが!」
「春輝……君。ごめんな……さい。ごめんなさい!ごめんなさい〜!!」
そう言って二人で泣きあう夜。
優しく、満月になりかけている月がふたりを照らしていた。




