迷宮都市到着
迷宮組の勇者達の馬車がついに迷宮都市にたどり着いた。
勇者達一行が馬車から降りると、見るからにモテそうな爽やかなイケメンが近づいてきて挨拶を始めた。
「これはこれは勇者様方。私はイルセ王国第一王子のフェデルク=リーデルと申します。2週間、よろしくお願いします。」
そういって頭を下げる王子。
それに会釈を返す勇者達。
ただ1人、美冬だけは会釈すらせずに顔をしかめていた。
「長旅でお疲れでしょう。宿へ案内します。」
そう言って歩き出す王子の後ろを歩く勇者達。
美冬が顔をしかめていたのに気づいていた千秋が、小さな声で美冬に声をかける。
「美冬さん、どうしたの?嫌そうな顔をして。」
「なんか、あの人、気持ち悪いです。」
「え?そう?気持ち悪い?」
「はい。なんというか……あんな感じの雰囲気、嫌いです。」
「そんなに?うーん、分かんないな……。」
ぼそぼそと喋り続ける2人。
その様子を見ていたのか、フェデルクが千秋たちに質問した。
「随分仲がよろしいんですね。お付き合いをされてるんですか?」
「いえ、そういうのではありません。ね?美冬さん。」
「はい。そうですね。千秋君。」
「そうですか。ミフユというんですか。あなたの名前。良い名前ですね。」
そう言ってにこやかに笑うフェデルク。
その顔を見て顔を逸らした美冬。
フェデルクは自分が見つめたのだから恥ずかしがるのは当たり前かと思った。
美冬も、確かに見つめられたから目を逸らしたというのはあっていた。
しかし、その理由は……強烈な嫌悪感からだった。
「この後、時間はありますか?時間があるならお茶をしませんか?ミフユ。」
「……名前で呼ばないでください。」
「はい?」
「名前で呼ぶなと言ったんです。」
そう言って、嫌悪感をあらわにする美冬。
その態度にムッとしたフェデルクは、語気を少し強くする。
「なんでそんな言い方をするんです?ミフユ。良いではありませんか。」
「はいはい、そこまでです。美冬さんは俺と後で迷宮都市を回る約束がありますから。フェデルクさん。すいませんね。」
「そうでしたか。それなら仕方ありませんね。なら、案内を……。」
そう言い終わられる前に、左の手の指輪を見せつける美冬。
それで全てを察したフェデルクは、少し悔しそうな表情を見せた後、にこやかに笑って頭を下げる
「そうでしたか。そういう関係なら仕方がありません。差し出がましい真似をして申し訳ありませんでした。」
「いえ……。」
そこで、会話は終わった。
フェデルクは誰にも見られないように黒い笑みを浮かべながら。
美冬は少し嫌な気分になりながら。
美冬は意外と、嫌いなものは嫌いとはっきりいう性格です。
なぜ嫌悪感を覚えたかは、のちのち分かるでしょう……。
今回、この話を書く時に聞いていた曲は、真山りかさんの「Liar mask」です。
アカメが斬る!の2番目のオープニングです。内容にも即した歌詞で結構好きです。
ちなみに、作者はアカメが斬る!大好きです。クロメさんとウェイブ君のやりとり、とても好きだったりします。