馬車の中で
「えへへ〜♪」
そんな声を上げつつ、表情を緩ませながら自分の左手の人差指にはめている銀色の指輪を見つめ続ける美冬。
そんなことはつゆ知らず、美冬の肩を借りて爆睡している愛歌。
そんな光景を一切気にせずプロト・クーゲルのダークグレーの銃身を撫でて微笑み続ける真人。
そして、その光景をみて苦笑いする千秋と他の勇者達。
「美冬さん、指輪、もらえて良かったね。」
千秋がそんなことを言う。
「はい!メイド服も着てもらえたし……。はっ!?私、今日死ぬんでしょうか!?運があまりに凄すぎて怖いんですけど……!」
「それは……ないんじゃないかな?
にしても、ハル兄が大人しく女装を受け入れるなんて……。
ハル兄の女装を見たの、何年ぶりだろ。」
「昔もしてたんですか?」
「うーん、してたというよりさせられてただね。昔、引っ越す前の頃の隣のおばさんが、ハル兄のこと凄く気に入っちゃって、ずっと着せ替え人形にされてたし。」
「……ちっちゃい頃の……春輝君……!見たい!見たいです!」
「うーん、向こうの方の世界に置いてきちゃったからな……。今からスマホの画像フォルダ探してみるけど、期待しないでね?」
そう言って、スマホを起動する千秋。
「んー、あ、あった。……なんかノリノリでスカート履いてるように見える……。」
「か、かかかか、可愛いぃぃぃ!何この子可愛すぎですよ!」
「ハル兄、昔は心底嫌がってたはずなのにな〜?なんでこんなピースしてるんだろ?」
「え?嫌がってると思いますよ?目が笑ってませんもん。」
「え?全然そうには見えないけど……。」
「え?分かりませんか?ピースもちょっとぎこちないし。でもそこが可愛い!この画像、後でください!」
「う、うん。……美冬さんって、ハル兄のことよく見てるよね。」
「当然です!春輝君の事なら、右に出る人はいないと自負しています!」
「え!?肉親である俺すらも!?」
「えーと、じゃあ問題です!春輝君のホクロは合計何個あるでしょう?」
「え……、逆に把握してるの?」
「もちろんですよ!答えは3個です。右足首と左手の甲と左足の太ももにあります。」
「なんで知ってるの!?美冬さん、どうやってそこまで調べあげたの……?」
「女の子には秘密がいっぱいあるんですよ♪」
「今聞きたくなかったよ……、そのセリフ……。」
そう言って呆れたようにため息を吐く千秋と上機嫌になる美冬。
そうして、馬車は迷宮都市に近づく……。
恋する乙女は盲目とよく聞きます。本当なんでしょうか?
どうにもそこら辺の知識は恋愛経験のない作者にはきつい所です……。
ちなみに、今回のお話はHoneyWorksさんの「世界は恋に落ちている」という曲を聴きながら書きました。こんな感じで、作者の書いてる時に聞く曲をあとがきで書こうかな?と思ったりしてます。
あ、あと、オススメの曲があれば教えて欲しいです♪
ではでは、今回はここら辺で。