第1訓練場にて
リオネスが着替えるというので、ジルと春輝は外に出て待つことにした。
そこで、ジルは春輝に話かける。
「ハルキ殿。ミーシャはどうでしたか?」
「どうもこうもないですよ!何ですかあの態度!あ〜、ムカつくムカつく!」
「そう言ってやらないでください。あの子もしゃべる同年代の友達がいなかったもので、あんな事を言ったのでしょう。とても楽しそうでしたよ?」
「……あれで楽しそうなんですか?もしかして、ジルさんも看破の魔眼持ってるんですか?」
「そんなわけないでしょう?……ハルキ殿、少し第1訓練場に行く前に、話しておきたいことがございます。」
「……何でしょう。」
「お嬢様は、タダでさえ身分が高い上に女性であり、さらには呪いのせいで周りの騎士からよく思われてはいません。お嬢様の事を認めているのは、騎士団長であるオリガ様くらいです。ですので、騎士たちが貶すような態度をとっても、絶対に怒らないようにしてください。」
「……なぜです?」
「彼らはいくら言葉でひどいことを言ったとしても、手は出してきません。ですが、もしやり返せばきっと、それを盾に暴力を振るい出すかも知れません。我々の目がつかない所でお嬢様が暴力を受ける可能性も出てきます。ですから……」
「わかりました……。ですが、抑えられなくなったら止めてください。」
「えぇ。もちろんです。手刀で一撃で沈めてあげますよ。」
「ははは……。ジルさんが言うと本当にやりそうにしかきこえないなぁ……。」
そこで、リオネスが着替え終わったようで、ミーシャが出てきた。
「覚悟を決めましたか?男女さん。」
「あぁ、お前を殴り飛ばす覚悟ならもう決まってるよ。」
やっぱりミーシャが楽しがっているようには見えない春輝であった。
リオネスに引き連れられること10分、第1訓練場に着いた。
第1訓練場では、見知った顔がオリガに怒声を飛ばされながら訓練していた。
騎士達はリオネスを見かけると、心底嫌そうな顔をした後、一応頭を下げていた。
すると、部下の叱咤激励に夢中になっていた騎士団長もようやく気づいたようで、近づいてきた。
「よう、リオネス。今日は従者を三人も引き連れてきたのか。保護者参観か?」
「冗談はよせ、オリガ殿。今日はこの2人が喧嘩をすると言い出して聞かないのでな。仕方なく、ここで戦わせることにしたのだ。構わんだろう?」
「おお、ミーシャが戦うところが見れるのか。それはとても楽しみだ。そっちの坊主は勇者か。これは面白い対決になりそうだ。おいみんな!ちゅうも〜く!!」
大声を上げて騎士たちの視線を集めるオリガ。
「副団長殿の従者のふたりが決闘をするらしい!そこで賭けをしようじゃないか!勝った方には負けた方の昼食が一品追加だ!どうだ!面白そうだろう?」
そこで騎士団の方から「お〜!」と声が上がる。
勇者達は少しついていけてない感じだ。
「30分後から決闘を始める。二人もそれでいいか?」
騎士団長がそうふたりに問いかける。
「ああ、それでいい。この女々しい男に現実を分からせるには丁度いい。」
「クソガキが。後悔すんなよ?泣いて謝っても許してやんねぇからな?」
「二人とも、気合は充分だな!では、30分後に試合を始める!それまでにどちらに賭けるか決めるように!」
そういって、楽しそうに笑うオリガであった。