貶し合い
ミーシャと睨み合っていた春輝が、ふと思い出したかのようにジルに質問する。
「あれ?そういえばジルさん、お嬢様が第1訓練場に用があるというのは?」
「そんなことも知らないでお嬢様に仕えようと思っているとは、お前、道化師の素質があるんじゃないか?」
「テメェには聞いてねぇよチビ。というか、知ってる方がおかしいだろ。昨日ここに来て今日お嬢様にあったばかりなんだから。」
「昨日ここに来た……?まさかお前、勇者なのか?お前が?」
「名前で気づくだろ、普通……。ハルキなんて名前はこの世界にはいないだろうし……。お前、やっぱり頭悪いんだな。」
「お前の見た目があんまりに可愛いもんだから勇者に見えないんだよ。悪いのはお前の顔だ。私の頭は悪くない。」
「ぶっ飛ばすぞクソガキ。」
「やれるもんならやってみな?可愛い勇者様?」
「あ?誰が可愛いだ?悪いのは頭だけじゃなく目もか?」
「テメェこそ目が悪いのか?あたしはこう見えて18だ。」
「え、マジかよ……。可哀想に……。もう成長の余地が無いなんて……。」
「お前は本気で私を怒らせた。泣いて謝るまで殴り続けてやるよ、勇者(笑)」
一触即発のその空気で、リオネスが声を上げた。
「ご馳走様でした。では、そろそろ行こうか。
ハルキ、質問に答えよう。私は王女だが同時に宮廷騎士団の副団長を務めているのだ。これでも少しはやるのだぞ?」
「お嬢様の才能は私以上です。私もいつ抜かれるかわからず、ひやひやする日々です。」
「謙遜するな、爺や。お前には私ではまだ敵わんよ。いつか絶対抜いてやるがな!」
そう言って笑い合う、ジルとリオネス。
「ジルさんの実力ってこの宮廷内でどのくらいなんです?」
「一応、使用人の中では最強だぞ。彼に勝てると言われているのは宮廷魔術師長のラルトクス殿と宮廷騎士団長のオリガ殿の2人だけと言われている。
実際勝負したわけではないので真相はわからんがな。
まぁ、貴様では永遠に届かんよ。女顔の勇者(苦笑)殿。」
「お前は俺に本気で殴られないとわからないみたいだな。女だからって手加減しないから覚悟しておけよ?」
そういってまた睨み合うミーシャと春輝なのであった。