王女のメイド
「お嬢様、お食事をお持ちしました。」
背後からそんな声が聞こえ、春輝が振り向くと、そこには赤色の髪に、右目に黒い眼帯を付けた少女が朝食をのせた台車を押してきていた。
彼女は春輝に気がつくと、左目を少し細め、ジルに話しかけた。
「彼が新しい従者ですか?ジル。」
「えぇ。ハルキ殿です。どうです?無害そうな方でしょう?」
「えぇ、最初に見た時は本当に男なのかと疑いそうになりましたっ!?」
ミーシャは、春輝の出した殺気に気づき、言葉を詰まらせ、スカートの中にあるナイフを取り出そうとした。
そこで春輝は口を開いた。
「別に自分が男らしい顔立ちをしているという自覚はありませんが、女性のような顔立ちをしていると俺のことを言った方には、男女問わず半殺しにすると決めていましてね。
……表に出ろ。眼帯女。本気で殴り飛ばしてやる。」
「……無害そうなのは外見だけか。いいだろう。新人を虐めるのは気持ちがいいからな。その高くなった鼻っ柱をへし折ってやろうじゃないか。」
「お待ちください、お二人共。」
そこでジルから脳天チョップが入った。
2人は同じように頭を抑えて涙ぐみながらジルを睨む。
「「なんで止めるんですか!」」
「逆に聞きますが、なんで止めずにほうっておくという選択肢があるんですか……?」
「でも、後輩の鼻っ柱を居るのは先輩の役目でしょう?」
「女々しいと言われて引き下がっては、男じゃありません。」
「顔が女っぽいんだから仕方ねぇだろうが。」
「先輩ヅラしないでもらえますか?おチビさん。」
「テメェぶっ飛ばされてぇのか?」
「吹っ飛ぶのは見るからに小さいあなただと思いますよ?」
「あ?」
「あ?」
「ふふっ!ふふふふふっ!いいではないか!思う存分殺り合えば良い!」
そこで、リオネスの声が入った。
「お嬢様!?」
ジルが悲痛そうな叫び声を上げる
「いいではないか、ジル。ここでハルキの実力を見て置くのも。それに、こういう事は拳を交えて解決するのが一番手っ取り早い。」
「……はぁ。わかりました。ではお二人共、お嬢様が朝食を召し上がられたら第1訓練場に行きましょう。どうせお嬢様も第1訓練場に行くのですから丁度いいでしょう。」
「可哀想に……。騎士たちの前で私にフルボッコにされるなんて……。」
「は?この高飛車女が。現実を分からせてやるよ。」
「言ってろ男女。その綺麗な顔をぶっ飛ばして歪めてやるよ。」
「あ?」
「ああ?」
「お二人共実は仲いいんじゃないですか?」
ジルは疲れたようにため息をつくのであった。
ちなみに、ふたりがディスり合いしている間ずっとリオネスはアホ毛を揺らしながらモグモグと朝食を食べていた。