魔眼について
午前7時、ようやくジルとの訓練が終わり、肉体的にはダメージはないが、精神的にダメージをくらいまくった春輝は、芝生の上で大の字になって寝転んでいた。
そこにジルがにこやかに微笑みながら喋りかけてきた。
「ハルキ様、看破の魔眼の調子はいかがですか?」
「……なんで俺の魔眼のこと知ってるんですか…?」
「それは簡単な理由ですよ。執事ですから。」
「理由になってませんよ……?」
「ふふふ、そうでしょうか。案外的を射ているのですよ?これが。」
「それはどういう……」
「私も魔眼持ちだからです。ハルキ殿とは違い、鑑定の魔眼ですが。」
「鑑定の魔眼って、どこまで分かるんですか?」
「そうですね。Lv.にもよりますが、私ほどのものになると、相手のステータスプレートに書かれていることはすべて分かります。」
「……マジですか?」
「ええ。マジです。ですがハルキ殿。あなたの持つ看破の魔眼は、魔眼の中でも破格の能力なのですよ?」
「え?でもこれ、変な感じに見えるだけですよ?今はおさまってますけど、なんか視界がブレたり人から出てる魔力が見えたり……。」
「ですから、その魔眼の最大の効用は、いかなる視覚に訴えかける魔法も寄せ付けないのです。たとえば、魅了や偽装、呪いなども、あなたの目は打ち破ります。そういう系統の魔法を本職にしている魔術師には天敵になったりするんですよ?
そして、看破の魔眼は索敵スキルが異常に高い。私の気配遮断は、今まで一度たりとも敗れたことは無かったんですよ?あと、あなたももうお気づきかも知れませんが、その魔眼は……嘘を見抜きます。ですが、その能力はできる限り信用しない方がいい。」
「え?何でですか?」
「今からあなたが会うお嬢様は、体重が重い。今からあなたが会うお嬢様は、体重が軽い。どうです?どちらも嘘には見えなかったでしょう?」
「ええ……。もしかして、価値観によって変わる事象に関しては、見抜けないという事ですか?」
「えぇ、私は今、頭の中で、ネズミと比べて体重が重い。私と比べて体重が軽い。と考えました。すると、嘘という判定は出なかったでしょう?」
「……なるほど。ありがとうございます。
それで、この[魔眼]はどうやって使うのですか?」
「基本的には魔力制御が完璧にできるようになってからです。そこまではこの3日間で持っていきますよ。覚悟をしておいてください。」
そう言って微笑むジルに、春輝は苦笑いで返すのであった。
「良いことを思いつきました。ハルキ殿、全身にくまなく魔力を行き渡らせる感じで魔力制御ができますか?」
「全身にくまなく……ですか?」
「えぇ。骨に筋肉、細胞の一つ一つを魔力で覆うのです。」
「……こうですかね。」
「それではまだ甘いです。自分の体すべてを魔力で守るようなイメージです。」
「……こう…ですか?」
すると、春輝の黒いのだった目が、水色に輝き出す。
「うわっ!?なんだこれ!?」
「どうされました?」
「なんか、体がすごい軽い上に、空気中にあふれでてる霧っぽいのが見えます。なんです?これ?」
「体がすごく軽く感じるなら、それは身体強化魔法が成功したということです。そして、その霧っぽいものとは、おそらく魔力のことかと。」
「……なるほど。じゃあ今俺は、看破の魔眼を発動しているわけですか?」
「えぇ。看破の魔眼は魔力の流れを視認することが出来ます。魔力視の魔眼ほど便利ではないですが、ある程度ならその流れで、魔法を打たれる前に割り出して、対処することができるそうです。」
「なるほど……。」
「ステータスプレートをご確認ください。少し変わられていると思います。」
そう言われて、春輝はポケットの中のステータスプレートを出す。
そして、「開け、ステータス」と唱えると、眩い光が第三訓練場を包む。
光が収まると、明らかに情報量の増えたステータスプレートが出来上がっていた。




