春輝VS少年 決着
「……な……んで……」
地に伏せ、突如攻撃を始めた「敵」を睨む真人。
その周りには、同じように倒され気絶させられた勇者達。
薄れゆく意識の中、真人は必死に叫ぶ。
「何故だ……!……オリガっ!」
敵はその声に反応することもなく、消え失せた。
同時刻、60階層にて。
刀がぶつかり合う。
双方とも、黒い影を身にまとって。
(……強い!)
レンゲは先程までとは別人のような攻撃を、なんとか捌きながら冷静に考える。
(隙が……無さすぎる……。)
振り下ろされる刀を受け止め、春輝の体に蹴りを入れる。
いつの間にか、少年の顔から笑みが消えていた。
蹴りを入れられ、吹っ飛ばされた春輝が、無言で立ち上がる。
そして刀を構えた。
(……ここで決めなきゃ、負ける!)
レンゲはそう思い、刀を握る手に力を込める。
「……はぁっ!」
刹那、両者は同時に接近し、刃を交えた。
崩れ落ちる少年、宙を舞う折れた刃、飛び散る血。
(……負けたか。)
レンゲは冷たい床の感触を味わいつつ、意識を手放した。
(……なんとか、勝てた……。)
刀を杖のように地面に突き立てて、崩れ落ちそうになる体を支える。
春輝の周囲の黒い魔力はいつの間にか消えていた。
(……あ、約束、破っちゃった……。)
春輝はふと、自称神様との約束を思い出した。
しかし、少年は内心首を振り、心の中で思う。
(あの子達を守れたなら、それでいいか。)
目の前で自分のことのように喜び合う三人の少女を見て、春輝は柔らかく微笑んだ。