まだ始まらない物語
2016年 6月12日 イルセ王国の王城にて
(どうして俺がこんな目に……)
少年、東雲春輝は自分の不運を嘆きつつ、目の前の紅色の髪の小柄な少女を睨んでいる。
春輝の手には一切の武器もなく、『魔王』を名乗るその少女の手には、その体躯に見合わないとても大きな斧が握られている。
「貴様、勇者であろう?なぜ、魔王である私にかかって来ない?」
「だから、俺は勇者じゃないって、さっきから言ってるだろ!」
春輝は叫ぶ。しかし、少女は怪訝な表情をして春輝を疑い続ける。
「何を言うか。貴様の魔力、その隙のない構え、どう考えても勇者であろう?だいたい、勇者でない者が、なぜ王城にいるのだ?」
「いや、だから、俺は…っ!」
春輝が最後まで言い終わる前に、少女が接近し、至近距離から斧を振り下ろしてくる。
その斧を『素手で』受け止めつつ、春輝は言葉を紡ぐ。
「俺は……この国の王女様の執事だからだ!」
……春輝が何故こんなハメになっているのかは、少し月日を遡って説明する必要があるだろう……
2016年 5月21日 日本の某所にて
東雲春輝の朝は早い。
午前4時 起床。その後、トレーニングを始め、終わり次第ランニングの準備をする。
午前4時30分 ランニング(町内一周)。そのついでに、コンビニで朝食のために食パンや菓子パンなどを買ってくる。
午前5時30分 帰宅したら朝風呂に入り、さっぱりする。
午前6時 朝食の準備。この家で料理できるのは母親と春輝なのだが、母親はいつも夜遅くまで仕事をしているので、基本的に朝食の用意は春輝が受け持っている。ちなみにこの日の朝食は目玉焼きとベーコン、パンである。
午前6時30分 両親起床。弟の千秋を起こしに行くも「あとちょっと寝かせて!お願いだから!」と言われ、仕方なく両親と3人で朝ごはんを食べる。
午前7時 両親は仕事に。洗い物や学校の準備、洗濯などをし終えたら、つかの間の休息。テレビでは、新たな古代文明の秘宝とやらが見つかったそうで、研究者らしき人が熱弁を奮っている。
午前7時45分 登校。この時刻になって千秋がようやく起きてくる。「なんで起こしてくれなかったの!?」と、涙目で言ってくるので自分が寝かせてと言ったというと、「それでも起こしてよ!」と、文句を言ってくる。理不尽な。
朝ごはんを急いで食べてる弟を横目に見つつ家を出る。
外に出ると青空が広がっており、「今日もいい天気だ~」と春輝はのんきに呟いた。
……この後、どんな出来事が待っているのかも知らないで。
はじめましてです。よく、「いちにい」と呼ばれますが、「かずにい」です。
これが初投稿となります。まだまだ至らないところだらけで、戦闘シーンに関しては目も当てられませんが、どうか温かい目で見守って欲しいです。
アドバイスや、間違ってるところなどがあれば、その都度コメントの方で注意していただければ幸いです。
気に入ってもらえると嬉しいです。