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あのときの、きもち。 ~恋愛編~  作者: 桃色 ぴんく。
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中学校3年生<その2>。

 中学校3年生になったばかりの4月の終わり、ローラースケート場で素敵な出会いをした。

彼の名前はたかひろくん。実家は近いのだが、国立の高校に通っていて三重県で寮生活を送っていた。次に会えるのは5月3日、あと4日後だった。


 そして、3日。待ち合わせの場所に立っている私は、4歳上のお姉ちゃんから借りたピンク色のトップスにデニムのスカートという中学生らしい恰好でたかひろくんを待っていた。

 が、約束の時間を過ぎても、彼が来ない。私は彼に教えてもらった実家の番号に電話をかけてみた。

「たかひろは、三重に帰りましたけど」

と、冷たい声で彼の母親に言われてしまった。急に帰る用事が出来てしまったのかな・・・私は、この日は寂しい思いで家に帰っていった。


 このまま会えないとか、嫌だな・・・そう思った私は、今度は彼に聞いた寮の住所あてに手紙を書くことにした。私の連絡先は一応教えているが、念のため、手紙にも書いておいた。

 その数日後、彼から電話がかかってきた。時間は夜の10時だった。

「手紙届いたよ。こないだはごめんな。急に帰ることになってしまってん」

「ううん、仕方ないよ」

「今度、夏にそっち帰ったら遊びに行こう」

「うん」

「このぐらいの時間になら、毎日でも電話できるで」

この日から私は、夜の10時に電話の前で待つようになってしまった。兵庫と三重でちょっと遠いけど、ほぼ毎日、たかひろくんは電話をかけてきてくれた。話す時間は5~10分ほどだが、毎日たかひろくんの声を聴けて私はとても嬉しかった。


 次にたかひろくんと会えるのは夏休みかな。あと2か月近くもあるなぁ・・・。

そんなある日、友達のナオコが私に言った。

「なぁ、今度お見合いせえへん?」

「え???」

 聞けば、ナオコのいとこの男の子が隣の中学校に通っていて、その子の友達数人がうちの学校の女子を紹介してくれと言っているらしいのだ。中学生でお見合いって・・・。

「友達としてでいいから、人数合わせなあかんし、頼むわ~」

と、ナオコが言うので、私はとりあえずOKしたのだった。


 隣の中学校とのお見合いはその週末にすぐに開催された。隣町の古びた喫茶店で、顔合わせ。男の子3人、女の子3人の、今で言うコンパのような感じだった。でも、紹介が済んで、話をしている間に気が付いたのだが、私以外の女の子2人は、相手の男の子の中の2人とすでに意気投合していて、私の目の前にいる男の子と私が必然的に仲良くならないといけない?ような雰囲気になってしまっていた。

 その子の名前は「だいちゃん」。大柄で一見恐そうだけど、優しい目をしている。私はだいちゃんと連絡先を交換して、その日は何もなく家に帰った。だいちゃんから私に連絡が入ることも特になく、またいつもの夜10時にたかひろくんからの電話を待つ日々を送っていた。が、さすがに毎晩電話がかかることはなくなってきた。2日に一回、3日に一回、だんだんと日数が空くようになってきていたが、たかひろくんもいろいろ忙しいのだろう、と、合間に手紙でやりとりをしたりしていたし、電話が少なくなったことに関しては特になんとも思わなかった。


 そして、7月に入ってすぐの土曜日。お昼前に、たかひろくんからいきなり電話がかかってきて

「俺、今実家に帰ってきてるけど、会えるか?」

と、誘われて、心の準備が出来ていないまま、久しぶりにたかひろくんと会うことになった。二人でバスに乗り、少し離れたボウリング場まで出かけた。

 帰りに、たかひろくんの実家の最寄り駅のすぐ横の公園で少し話をした。

「次に会えるのは、11月ぐらいかな」

まだ夏休みも始まってないのに、夏休み中は会えないんだ・・・と、不安に感じたが、彼が「11月」と言うので、私もそれ以上は「会いたい」とも言わなかった。

「わかった。また会えるってわかったら連絡して。電話や手紙もしようね」

それだけ言うのが精一杯だった。


 たかひろくんは、出会った頃はまだ高校生になりたてで、中学生の頃は坊主頭だったんだな、という短髪だったが、夏に再会した時には、少し髪も伸び、また違った印象になっていた。

「あ、この人、たかひろくんにちょっと似てる・・・」

お姉ちゃんが部屋に置いていた雑誌を見て、たかひろくんに似たモデルの男の人を見つけた。

「風間トオルっていうんだ」

メンズノンノで売れっ子モデルとして活躍していた若き日の風間トオルさんだった。私は、たかひろくんに会えない日々はずっと風間さんの顔を見て過ごしていたのだった。携帯電話なんかない時代。たかひろくんの写真も持っていない。顔を思い浮かべながら、似顔絵を描いてみたり、フェルトでたかひろくんの人形を作ってみたり、そんなことをしながら会えない日々を寂しくないように過ごしていた。


◆中学校3年生のちょっとした恋の記録・<その3につづく>

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