中学校3年生<その1>。
中2の頃は、恋という恋をしていなかった気がする。紹介されてなんとなく付き合っていた大学生とか、ナンパされたけど恋には発展しなかったりとか・・・。学校内でも憧れている一つ年上の先輩もいたが、完全なる片思いで恋愛に発展しなかった。
そんな状態だった私が、初めて「これが恋!?」という出会いをしたのが、中3になってすぐの4月29日だった。この日は昭和天皇の誕生日で、学校が休みだった。
いつものメンバーとローラースケートに行った時のことだった。この頃は私も仲間も、ナンパ目的で、場内に入った途端に、
「かっこいい人いないかな~」
という感じになっていた。
祝日なので、結構な人で賑わう場内。滑っている人、座っている人、食べ物を買っている人など、ぐるりと見渡して・・・
「今日はいい人いなさそう」
と、出会いをあきらめて、滑ることを楽しみに、私はリンクへ立った。
ここのローラースケート場は、DJブースが設けられていて、曲目をリクエストすれば、自分の好きな曲もかけてくれる。私は、通いだしてから、自分の気に入った曲を家で曲名を調べたりして、度々リクエストしていた。「パーフェクトビート」や「コール・ミー」「ハッチ大作戦」などの洋楽が大好きだった。
そして、誰かがリクエストした「君の瞳に恋してる」がかかっている時だった。この曲も好きだな~とか思いながら、スイスイと滑っている私の横を通り過ぎた、青い服の男の子。横を通った時に目が一瞬合ったのだが、息が止まるほどハッとしたのを覚えている。
「いた・・・かっこいい人・・・」
彼を見つけてからの私の視線はずっと彼を追いかけていた。
そのあと、仲間の元へ戻ってみんなと話していると、キノという女の子が言ったのだ。
「あの、あそこにいる人かっこいい」
キノが指をさしたのは、あの青い服の男の子だった。キノは私の数倍、可愛い。こんな子と同じ人を狙うなんて・・・どう考えても私の負け。早くも私の恋は終わってしまった。
「声かけてきたら~?」
「ええ~」
「今日しかチャンスないんだよっ」
周りの友達がはやし立てる。キノはしばらく考えていたが、
「ん~、やっぱりいいや」
と、言ったのだ。
「じゃあ!!!!!!!私、行ってもいい!?私もあの人タイプなんよ!」
と、私はすかさず叫んだ。
「いいよ~がんばって」
キノに言われたので、私は遠慮なしに、彼の元へと近づいて行った。
”今日しかチャンスはないんだ”
”ふられたらふられたで、別にいい。当たって砕けろだ!”
そんな気持ちで青い服の彼のそばへと滑って行き、声をかけた。
「すいません、一緒に滑ってもらえますか?」
彼は一瞬驚いた顔をしたけど、
「いいよ」
と、言ってくれた。
一緒に滑りながら、いろいろと彼のことを聞いた。年は私の一つ上の高校1年生。家は、結構近くでびっくりした。学校が違うので知らなかったという感じだ。
「な、手、つなぐ?」
2周ほど、隣で並んで滑っていた彼が突然に言った。
『マジで???』と思いながらも
「うん!」
と、答え、そこからは仲良く手を繋ぎながら滑っていた。
実家は近いのだが、この春から三重県の全寮制の高校に進学したらしく、たまにしか帰ってこないという話を聞いた。
「友達、ほっといていいの?」
と、彼に聞かれた私は、
「まぁ、いいかな。今日しかこんなチャンスないし」
と、答えたら、彼も笑って
「そっちは5~6人で来てるからいいやん。俺なんかツレと2人やで」
「わっ、じゃあ友達は今一人ってこと?」
「そそ。でもええやん。今日だけ、な。・・・そや」
「ん?」
「このまま、どっか抜け出してデートしよか」
なんとも大胆な彼からの誘いだった。
「おもしろそう!行っちゃおうか」
こうして、私と彼は二人でこっそりとローラースケート場から抜け出した。一人置き去りにされた、彼の友達は・・・どうしたのだろうか。その後のことはどうでも良かった。
ローラースケート場を抜け出した私と彼は、そのまま電車に乗り、繁華街へと向かった。時刻は夕方になろうとしていた。手を繋いでいたのが、今度は腕を組み、肩を組み、結構なベッタリ感で喋りながら街をうろうろ歩いていた。
「また学校始まるし、三重に行かなきゃ」
と、いう彼に、
「また会える?」
と、聞いてみる。
「そやな、連絡先教えておくわ。5月の連休にもっかい帰ってくるよ」
学校はカレンダー通り。連休もとびとびなのだ。
「じゃあ、連休に一回でもいいから会える?」
「3日に会おうか」
「ほんと!?じゃあ3日に・・・」
私と彼は、5月3日に彼の実家の最寄り駅で待ち合わせすることにしたのだった。思いがけず、始まった恋。今日だけで終わる恋じゃないみたいだ!今日は29日だから、後4日ほどしたら、彼とデート出来る!帰ったら、お姉ちゃんにデートの服装とか相談しよう。私の心は新しい恋と出会えてウキウキしていた。
◆中学校3年生のちょっとした恋の記録・<その2につづく>