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神様の居酒屋  作者: 所長
2/15

ソウタの夢 壱

 ぼくが一番最初に彼女が会ったのは、子どもの頃だった。

 ぼんやりとした不思議な空間。

 白いのか黒いのか青いのか、ただ、そこには何も無かった。

 何も無いというのは……物理的に無いだけでなく、精神的にも何も無い空間だった。

 そう、そんな空間にも関わらず、何故か寂しさも怖さも感じなかった。

 その妙な空間で周りを見渡していると、一ヶ所、黒い点が見えた。

 何だろうと目を凝らすと、点が人で、どうやら女の人だと分かった。

 不思議な空間には距離が存在していなかったのか、点だった人は気がつけば近くに居た。

 ぼくには見えないイスでもあるのか、彼女は座って上を向いていた。

 その姿は子どもの目であっても、只ならぬ美しさで、ぼくは彼女から目が離せなくなった。

「キレイ……」

彼女はゆっくりとぼくの方を向いた。

 ぼくを見た途端、彼女は泣きだしそうな顔をした。

 それから、首をかしげると笑顔を見せた。

「綺麗?」

 彼女のその言葉に、ぼくは自分がキレイと声に出していたことに気付いた。

 恥ずかしかったのか、彼女の余りの美しさに緊張したのか、ぼくは真っ赤になった。

「ふふ、可愛い。貴方、名前は?」

 彼女はぼくのすぐそばに立って、ぼくの頬に手を添えて言った。

「ソウタ」

 ぼくは緊張で名乗るのが精一杯だった。

 彼女はぼくの額に彼女の額を付けて、静かに言った。

「ソウタ、貴方が大人になった頃、また会いましょう」

 それだけ言って彼女は音もなく消えた。

 ぼくは、彼女が居た辺りに手を伸ばしたけど、手に何かが触れることはなく、やがて周囲は暗くなり、気が付くと自分のベッドの中で、天井に向かって手を伸ばしていた。

 「ゆめ……?」

 ぼくは上体だけ起こして、自分のおでこを触った。

 何となく、そこには彼女が触れた気配が残っているような気がした。

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