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神様の居酒屋  作者: 所長
15/15

 全天界の店を閉め、店長が人界の居酒屋に戻って来ると、暖簾を引き上げた店内でマサヒコが一人、すっかり氷が解けたグラスを傾けていた。

「ミカエル、来てたぞ」

 マサヒコはちらりと店長を見て、手元のグラスに目をやった。

「なんか飲むか?」

 店長の問いに、マサヒコは黙ってグラスを持ち上げて答えた。

「リクエストは有るか?」

「シンデレラ」

 店長は顔をしかめて、マサヒコに空のグラスを返した。

「カクテルはサツキの仕事だ」

 マサヒコは小さく笑うと、空のグラスの縁を指先で鳴らした。

「ささやかな反抗だろ?」

「くだらん」

 憮然としながら、店長はマサヒコの前にハイボールを置き、空のグラスを引き上げた。

「アイツの依頼は」

「ミナミちゃんとヨウコも一緒だぞ?どうせソウタとサツキも動くだろうが」

 マサヒコの言葉を途中で遮り、店長は言った。

「お前が心配したところで、今度の依頼じゃ俺らは出る幕ねぇさ」

 店長の言葉にマサヒコが顔を上げた。

「何も絡んでないってことか?」

 店長は両手を組め、しばらく考えた後に、首を横に振った。

「絶対ではないが、今は気配はないな。お前はどうなんだ?」

「五分五分だねぇ」

 曖昧な表情でマサヒコが答えた。

「俺じゃあんたほど分からねえ。格が違うさ」

「まあ……確かにな」

 あっさりと店長はマサヒコと自身の格の違いは認めた。

 マサヒコは短く息を吐いた。

「アイツに危険が及ばないなら良いさ。アイツが頼ったのはあんただしな」

 マサヒコの言葉に、店長は首を傾げた。

「お前、もしかして妬いてる?」

 マサヒコは返事の代わりに、そっぽを向いた。

「そりゃお前、日頃の行いだろ?」

「どういう意味だよ」

 拗ねた口調でマサヒコが訊ねた。

「普段からナナコに怒られてんだろ、人をからかうな〜とかさ」

 店長がカウンターに身を乗り出し、マサヒコの顔を覗き込んだ。

「今もだけどな、子供っぽ過ぎるから、この手の繊細な案件はお前に相談しづらかったんじゃねぇの?多分だけどさ」

「分かってるさ」

 マサヒコが小さく呟いた。

「破壊の天使カマエル様も、恋すりゃ只の男だな」

 店長はにこやかに言うと、指でマサヒコの額を突っついた。

「いってぇ……あぁ……ヤダヤダ。全知全能の神様には敵いませんわぁ」

 マサヒコはぼやきながら大きく伸びをすると、ガタンと音を立てて立ち上がり、僅かに残っていたハイボールを、一気に喉に流し込んだ。

「帰るわ」

「おう」

店長は短く答えると、扉を開けて出ていくマサヒコにちらりと視線を送り、洗い物を始めた。

「あ、そうだ。明日マサに、ムニン見てもらわねぇとなぁ」


               -完-


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