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ヤクザと召喚師  作者: 緑一色
片桐組誕生編
18/38

ゼブラスの意地

「んじゃ、見分役よろしくキリコ」

「ええ。良いですか~?3分の1破壊したらそれで任務終了ですよ」

「くどいねー、キキッ。俺だって仕事はちゃんとするよ」

「それなら構いませんよ~。じゃあ御武運を・・・・・・ジン」

「はいはーい」

















エレナとゼブラスは一緒に店を出た。



余談だが店に入ってからエレナとゼブラスはほとんど会話をしなかった。


気まずい空気に耐えきれずにエレナは口を開いた。


「あの、ゼブラスさん」

「どうした?」

「いや、何か喋りません?」

「特に話す事は無いな」


「そ、そうですか・・・・・・」



エレナはしょんぼりと俯きながらゼブラスと共に歩き出した。





気まずい空気を断ち切ったのは悲鳴を上げながら走ってくる1人の女性だった。


すかさずエレナは呼びとめる。

「どうしました?」

「あ・・・・・・あ・・・・・・あく・・・・・・悪魔が!!」



悪魔という単語に民衆は一瞬、動きを止めパニックに陥った。


民衆は女性が走ってきた方向とは逆の方向に逃げて行こうとした。



だが、一斉に走り出したため皆上手く走れずに何人か転んでしまっている。


「悪魔!?・・・・・・エレナ、行くぞ。恐らく向こうにあった広場にいるはずだ」

「まさか止める気ですか!?」

「そうだ。悪魔って言っても俺の魔法の前じゃ雑魚だ」

「危険ですよやめましょう!!せめてガードの人達や狂助さんを」



ゼブラスは声を荒げて返した。


「大人なんかに頼らなくていい!!それもあんな屑に・・・・・・」

「ゼブラス・・・・・・さん?」



ゼブラスの迫力に押されてエレナはそのまま従ってしまった。


彼は少し戸惑いながらも走り出した。


ゼブラスの後を追ってエレナも走り出した。


















ーーーセントラル・レイ広場ーーー




そこには生物がいた。姿形は人に似ている。

だが皮膚は黒く尾の様なものが生えており翼も生えている。

赤く光る2つの眼はまるでルビーの様に輝いており、顔だけ見ると蝙蝠を髣髴させる。



そして、その生物の脇には干からびた体で転がっている衛兵が数人。


その姿は正に悪魔。ジンと呼ばれている悪魔である。


「おっ、新顔の登場だね。キキキッ」



ジンはエレナとゼブラスを見てそう呟く。


「あっ、あれって・・・・・・」

「悪魔だな完全に。エレナ、とりあえず下がっていろ」



ゼブラスは何故か一人でこの悪魔を殺そうと考えており、エレナを強引に後ろに押し退けた。


そして、早口で呪文を詠唱する。



白視はくし


パッと辺りが光に包まれる。

エレナとジンの視界はホワイトアウトした。



「目くらましかい?そんなことをしても」

氷刃ひょうじん


声のした方向に氷の刃が飛ぶ。



ゼブラスは間髪入れずに魔法を連続で使う。


土牢どろう聖炎柱せいえんちゅう雷矢らいし!」



土の牢が出来たかと思えばそれを炎の柱が破壊してその場所に数百の雷が落ちる。



轟音と砂埃でゼブラスとエレナの視覚、聴覚は完全にシャットアウトされた。


しばらくしてゼブラスの視界が開けてくる。



目の前には抉れた地面が広がっていた。


「やったか?」

「残念」


ゼブラスの真後ろに傷一つ無い姿でジンは立っていた。



ゼブラスは振り返り、すぐに距離を取った。


「何で無傷なんだ!?」

「教えてほしいかい?簡潔に言うと俺の体はこんなことが出来ちゃうんだ~」


そう言ってジンは自分の右腕を消してみせた。



いや、消したというより大量の蝙蝠に変えてみせた。


「くそっ、炎球えんきゅう!」


いつもよりも小さめの火の玉がジンに向かって飛ぶ。


だがジンは体を蝙蝠に変化させてそれをかわす。



そして、まるでジグソーパズルを組み立てるかのようにまた元の体に戻った。


「無駄だよ無駄。魔力のね」


そうジンが言うのと同時にゼブラスはがくっと膝をついた。


呼吸が激しい。



「見たところ君の魔力はもう0。そして、俺はノーダメージ。この意味分かるかな?」

「うるせえ!!」


叫びながらゼブラスはジンに体当たり。

だが、さっきと同じ要領でかわされてしまった。



ゼブラスは地面に顔を打ちつけた。

鼻と口から血が出ている。


ジンはゼブラスの続けて放たれる体当たりをかわしながら話し始めた。



「つまり君の負けってことだよ。君の相棒の女の子は音と光の衝撃に耐えられなかったのか目回しちゃってるし。

そこで取引。今から俺がする事を黙って見逃してくれるなら君には勿論君の家族、友人には危害は加えない。元々、人を殺すんじゃなくてセントラルの機能を麻痺させるのが目的だから。どうだい?」


「あああっ!!」



ほとんど半狂乱でゼブラスは尚も体当たり。そして、かわされて地面に顔を打ちつける。


ゼブラスの大人びた顔は無残に腫れあがっていた。


それでもゼブラスは体当たりをやめようとはしない。



ジンは何度もゼブラスに交渉したが、彼は体当たりをやめようとしない。



ジンもいい加減腹が立ってきた。



ついにジンはしびれを切らしてゼブラスを殴り倒した。

さらにゼブラスに馬乗りになって追撃をする。


「何度も同じ事言わせんなよ!!命乞いしたら助けてやるって言ってんだからさ!!ガキのくせによ、もっと泣き叫べや!!」



ジンはゼブラスを更に殴り続けた。


しかし、ゼブラスの頭には助かりたいということなど微塵も考えていなかった。






俺が戦わないと・・・・・・。

大人は当てにならない。

自分を誰も認めてくれない。

そればかりかすぐに裏切る。

何で母さんを守ってくれなかったんだ?あの時だってそうだった。何で大人は・・・・・・。


母さんを見捨てたんだ?





ふとゼブラスの脳裏に優しい母の顔が浮かんだ。

















ゼブラスはもう悲鳴を発する程の気力すら残っていなかった。


体をぴくぴくと痙攣させている。



「ああもう怒った。君は俺の昼飯だ。もう怒ったぞ。こんなに怒ったのは久しぶりだ」


そう言ってジンはゼブラスの頭を掴み持ちあげた。



ゼブラスの肢体は糸の切れたマリオネットのようにだらしなくだらりと垂れ下がっている。


それを見てジンははしたなく涎を垂らした。


「そそるねー・・・・・・じゃあ、いただきまーす」




ジンがゼブラスの首筋にかぶりつく直前。




ジンの体が宙を舞った。



「あっ、えっ、うっ!?」



ジンは体を蝙蝠に変えて回避する前に体を地面に叩きつけられた。


ジンは誰かに自分の右翼を掴まれた感触を覚えた。




ゼブラスの耳に聞き覚えのある低い声が響いた。



「どこの誰だか知らないがうちの組員にここまでするとはな・・・・・・悪いが」


少しの間を置き、怒気を含んだ口調で続いた。


「社会復帰不可能くらいは覚悟しろや」





主人公片桐狂助参戦。

その目に宿る物は自責の念と怒りのみである。

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